夢の世界ニ日目 海
聞こえてくるのは波の音。
感じるのは浜の風。
足元には砂の感触。
鼻腔を擽る潮の香り。
目の前の光景が想像を絶する世界であったとしても脳裏に浮かぶ一つの言葉。まず間違いないだろう。
「これが海……」
私に残る海の記憶。
その全てを凌駕する新しい記憶が形成されていく。
抗うことなどできようはずもない。圧倒的破壊力を持つ視覚の恐ろしさ。疑う余裕すら与えてはくれない。
「こんばんは。どうだい、海に来た感想は?」
声のする方に振りかえる。
昨日も夢で会った男の人が後方に立っていた。
「海の広さと美しさに驚いているところよ。でも、これも夢なのよね?」
「ああ。これは夢だよ。僕と君が共有する夢の世界。いくら現実を細密に再現しようとしたところで、ここは所詮僕らが創りあげた偽物の世界に過ぎない」
分かっていることだ。既に理解しているのだ。それでも身体が未知の刺激に、刹那の願いを希求して止まないのだ。これは現実。目が覚めて部屋に戻っても、私の眼は生きていると……。
「貴方は残酷な人ですね」
「そうだね……。僕は君のことなんて一切考えていないから。僕は実験さえ成功してくれればそれでいいんだ」
男はこの世界が何かの実験で作られた虚偽の世界だという。
男の夢を私が共有しているのだと……。
「それでも……。僕と君が共有しているこの時空間は現実だよ。この世に存在しなくても、僕らだけが存在できる。それがこの世界」
男と私が同じ世界を共有しているのが本当ならば、確かに私たちにとってはこの世界が現実だと解釈することはできる。
「夢であって現実でもある……」
ただ、それでもこの世界は夢であって、いくら精巧に作られていたとしても偽物であることには変わりない。
「次はどんな世界に行きたいですか」
海を眺めて立ち尽くしている私に対し、男はそう質問した。
「……森」
「了解しました。では明日は、森でお待ちしています」
男がそう言うと、視界は徐々に薄れていき暗やみへと戻っていった。
ホント、久しぶりの更新です。
この作品は、なんとなく自己満足のために書いてるんでここでしか公開していません。サイトでは恐れ多くて公開なんてできない……。
まぁ、楽しんで読んでいただけたら幸いです。
この時点では、楽しもうにも話が全く見えないと思いますがww