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第11話:平和すぎる魔王城

「おおー」


俺は目の前の巨大な城を見上げた。


「これが魔王城か」


黒い石でできた、やたらデカい建物。


いかにもラスボスの住処って感じだ。


「はい……」


隣で魔王がうなずく。


「我が居城である」


「いいじゃん」


普通にテンション上がる。


「中、入っていい?」


「もちろんだ……!」


なぜかめっちゃ嬉しそうだ。


「歓迎しよう!」



「広っ」


中に入った瞬間、思わず声が出た。


天井が高い。


無駄に広い。


なんか寒い。


「ここで生活してんの?」


「うむ」


魔王が胸を張る。


「魔王としての威厳を保つため――」


「いや無駄じゃね?」


即ツッコむ。


「こんな広いと落ち着かなくない?」


「……」


魔王が黙る。


「……実は」


小さく咳払い。


「少し、寂しい」


「だろうな」


即同意した。


「じゃあさ」


俺は周りを見渡す。


「もっと楽にしようぜ」


「楽に……?」


「うん」


そのへんのソファっぽいのにドカッと座る。


「こうやってダラダラできる場所にすればいいじゃん」


「ダラダラ……」


魔王が困惑している。


「ほら、お前も座れよ」


「お前……」


一瞬ショックを受けた顔をするが。


「……はい」


素直に座る。


「よし」


なんかペットみたいだな。


「いい子いい子」


軽く頭を撫でる。


「……」


魔王が固まる。


「どうした?」


「……いや」


顔を逸らす。


「悪くない……」


「だろ?」


やっぱ犬っぽい。


「懐っこい大型犬って感じだな」


「いぬ……?」


まあいいか。



しばらくして。


「……暇だな」


俺はソファに寝転がる。


「何か娯楽はないのか?」


「娯楽……」


魔王が考え込む。


「闘技場ならあるが」


「疲れるのはいいや」


もっとこう、楽なやつ。


「スマホとかあればなー」


「すまほ?」


「いや、なんでもない」


さすがにこの世界にはないか。


「……あー」


天井を見上げる。


「Wi-Fi飛んでねーの?」


「わいふぁい?」


魔王が首をかしげる。


「まあ、通信みたいなもん」


「通信なら、魔導通信があるが……」


「遅そう」


「遅い」


即答だった。


「だろうな」


「ではどうすれば……」


「うーん」


俺は手をひらひらさせる。


「なんかこう、ビビッて飛ばせばいいんじゃね?」


「ビビッ……?」


「ほら、電波的な」


適当に説明する。


「広範囲にこう……ブワーって」


「……」


魔王が真剣な顔になる。


「なるほど」


「分かった?」


「分からぬ」


「だよな」


まあいいや。


「とりあえずやってみるか」


俺は手を軽く上げる。


「え?」


「なんかこう……」


イメージする。


ビビッと。


広く。


速く。


「おりゃ」


軽く振る。


――ブワァァァァァァ……。


「……ん?」


空気が変わる。


ピリピリとした感覚が、城全体に広がる。


「何かが……満ちている……」


魔王が呟く。


その瞬間。


城の奥から、部下らしき魔族が走ってくる。


「魔王様!」


「どうした」


「先ほどから、謎の通信が……!」


「通信?」


「はい! 魔界全土で、瞬時に情報が共有されています!」


「は?」


俺も思わず起き上がる。


「何それ」


「しかも速度が異常です!」


魔族が叫ぶ。


「従来の魔導通信の何千倍も速い……!」


「えぇ……」


そんなことある?


「これなら、映像すらリアルタイムで……!」


「映像?」


「はい! 各地の様子が、まるでその場にいるかのように……!」


「……」


俺と魔王が顔を見合わせる。


「……できたな」


「……できましたね」


なんか知らんけど。



その頃、魔界全土。


「なんだこの通信は!?」


「一瞬で繋がったぞ!」


「情報が止まらない!」


「これは革命だ……!」


魔族たちが騒然としていた。



「すごくね?」


俺は素直に感心する。


「ちょっとやってみただけなのに」


「ちょっとではない……!」


魔王が頭を抱える。


「魔界の常識が変わったぞ……!」


「大げさだなあ」


俺は笑う。


「便利になっただけじゃん」


「その“だけ”が問題なのだ!」


また怒られた。


「……まあ、いっか!」


俺は再びソファに寝転がる。


「これで暇つぶしできるし」


「……」


魔王が深いため息をつく。


「貴方は、本当に……」


「ん?」


「いや、何でもない」


言いかけてやめる。


「……好きにするといい」


「おう」


俺は手をひらひらさせる。


「じゃあなんか面白いの流してくれ」


「流す……?」


「動画的なやつ」


「ど、努力しよう……!」


魔王が慌てて動き出す。


「……ほんと便利な犬だな」


「犬ではない!!」


魔王の叫びが響く。


でもなんだかんだ、楽しそうだ。


「今日も平和だなー」


俺は目を閉じる。


――このとき俺は、まだ気づいていなかった。


自分が魔界に「超高速魔法通信網」を構築し、文明レベルを一気に引き上げてしまったことに。

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