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普通=怪しいってなに!?

これは、私が書いた短編小説が連載小説版になったものです。第一話は短編小説にあるのでそちらから読んでくださると助かります。作品タイトルは同じです。けど、読まなくてもなんとなくわかります。

ざっくりあらすじ言うと、普通の子が厨二病の人たちに巻き込まれる話です。

「……まだかなぁ…」


暖かい風が吹く春の朝。

麻村は商店街の端にある自販機の近くで周りを見渡していた。

まだ朝なのにお店のシャッターが開き始めている。


ダッダッダッ…と、麻村に向かってくる一つの足音。


「わりぃ!遅くなった!」


片目を前髪で隠し、右腕に包帯を巻いた学生が僕の方にやってきた。


「あ、滴流さん。おはよう」

「おう、はよ」


彼は滴流希、同学年で同じクラス。隣の席の人だ。

黒紫色の髪に赤い瞳をしていて怪しさ満点だが一応、僕の同級生だ。


「いや、悪い…朝、俺の邪眼が疼いてしまって…!もう収まったから大丈夫なんだが…制御できるようにならねぇとな…」

「ははは…それは大変だったね…」

そう言って隠している片目に手をやる。


疼くガチバージョンのことってあるのかな…

麻村は自然と苦笑いをしてしまう。


滴流さんは、厨二病ガチの人だ。

いや、何言ってるかわからないが…ちゃんと能力を持っている人…らしい…

にわかに信じがたいけど、僕はこの目で見てしまったので信じざるえない…

彼は邪神?の力を使うことができる。


「ところで麻村、腕大丈夫か?」


滴流さんが心配気に僕の腕を見てくる。

たぶん昨日のことだろう。


「腕なら大丈夫だよ、ちょっと痣残ってるけどすぐに消えると思う」

「そっか、まさか忌に気に入られるとは思ってなかったからな…危ない目に合わせてごめん。酷くなるようなら言ってくれ、邪神の力で治すから」


忌、それはこの世界にはびこる良くないものらしい。例えるなら油と言っていた。

入学初日、僕はそれに狙われていたらしい。


「いやいや、助けられたから大丈夫だよ!ほら、急がないと学校遅れるから行こう」


いや、邪神の力で治すってなに??

……怖いから聞かないでおこう…


麻村は少しペースを上げて歩く。

それに合わせて滴流さんも歩いてくれた。

登校のとき、滴流さんが後ろをちょくちょく振り返っていたのは何だったのだろうか?


︙︙



「よ〜し!全員いるな!これから中学校生活が始まる!まずはクラスの人たちと慣れるために、班になってインタビューをするぞ!」


「えぇ〜、それってやらないとですか〜?」

「ふん、つまらない戯言だな」

「そうですか?私は面白いと感じますよ?」


先生の言葉に三者三様だ。

初めての班活動…一応、隣に滴流さんがいるから少し安心でき「麻村、ちょっとこっち向け」


「うぇっ、なに?滴流さん」


急に隣から声をかけられて小さな悲鳴をあげてしまう。


言われたとおりに顔を向ける。


「……我が邪眼よ、彼を監視し呪い給え。…やばくなったら呼べ」


「えっ…?」


顔を向けさせたと思えば、急に手のひらを僕に向けて小さい声で詠唱してくる。

いや、なにぃぃ!?


「ちょっ、滴流さん?今のって…「席、くっつけてもいいですか?」あっ、はい…」


何をしたのか聞こうとしたが、前の人に遮られてしまった。滴流さんも何事もなかったように机を班の形にした。


「じゃあスタートだ!仲良くやれよな!」


そんな先生の合図とともにクラスが騒がしくなる。


「あなた名前は?何が得意ですか?僕は…」

「えっ!君なんで太陽避けてるの??」

「君のスキルはなんだい?」

「君ッどこの部署なんだいッ?俺は……」



うわぁ……ほんとに十人十色だな…


僕は、後ろから聞こえてくる会話に少しばかり引いてしまう。


「おし!俺たちも自己紹介しようぜ!!」

ダンッ!


後ろを気にしていたら、前からの大きな声に驚かされた。


満面の笑みを浮かべて話してきたのは、赤髪に大きな目をした人。

まるで少年漫画の主人公だ。


「俺は、天田撃!よろしくな!!」


天田さん…

えっと確か自己紹介の時は…

僕は最初の自己紹介を思い出す。


『俺は気術師の天田!家系が気術師だ。最強になるためにここに来た!!やり合いたいやつがいたら来てくれよな!よろしく!!!』


うん!全然ヤバい人だったぁー!!

声量に押されてたけど自己紹介まともじゃない〜!

気術師ってなに〜〜??


そんなこと考えるが、その人から溢れる陽キャオーラに目をくらます。


「なあなあ!!お前!なんの"気"を持ってんだよ!!まったく感じられねぇ!お前隠すのうまいな!!今度俺とやり合おうぜ!!!」

「えぇっ!えっ…あの…」


急に距離を物理的に詰めてきて、麻村は若干押され気味になる。


近い…!明るい人特有の距離の詰め方!

ひぃぃぃ…!てか気ってなんですかぁ…!!知らない用語使わないでください…!!


僕は心のなかで悲鳴をあげる。


「おい天田、麻村が怖がってるからやめろ。呪われてぇのか?」

「滴流さん…!……え?呪う…?」


僕の姿を見かねてか、滴流さんが助け舟を出してくれた。


ありがとう…!!

このとき、滴流さんが邪神ではなく仏様に見えた。

けどまって?呪うってなに??


「おお!滴流!!相変わらず闇っぽい気を持ってんなぁ!またやり合うか!?」

「邪神による干渉によってだ。あと、俺は今日やり合う気無いからな。やるなら今度にしてくれ」

「おぉ!!約束だからな!!」


仲が悪そうに見えて、なんだかんだ会話を弾ましている。

あれ…?二人って知り合い…?


「お二人は、昔からの知り合い同士ですからね」

「あっ…そうなんだ…ッッ!?」


急に話しかけられたことに、少しオーバーリアクションで驚いてしまった。


疑問が消えたと思ったら、初めましての人に声をかけられていた。

僕…声に出してたっけ…?


「おや?驚かせてごめんね。私は沢田時渡(ときと)と言います。これからよろしくね麻村くん。」

「あっ…よろしく…沢田さん」


天田さんとは打って変わって、丁寧で物腰柔らかな話し方。

空色の長髪に、金色の瞳…異世界人かな…?

漫画の世界にいても違和感ないなと思う。

大人っぽい性格で僕は自然と気を緩める。


よかったぁ…普通そ…「君は恥ずかしがり屋さんなのかな?それとも秘密主義の嘘つきくんなのかな?」


え……??


人付き合い良さそうな笑顔から出たのは苦い毒だった。


どゆこと…?急になに言ってるんですか…?

嘘はついてないはずだけど………

なんで…?急な罵倒…??

まてまて…この人の自己紹介って……


『魔導士レルー…おっとこれは別でしたね…そうですねぇ…ここでは沢田と呼んでください。』


すぅぅぅ〜〜〜…


麻村はゆっくりと、ゆっくりと深呼吸をした。



だっ…だめだぁー!全然厨二病セリフ吐いてた人だぁー!

ニコニコしながら言ってた人だぁぁー!

まともの皮を被った厨二病だぁぁー!!!

魔導士ってなんですか!?

いやてか、見た目からアウトだよ!染めてるの?染めてるの!?

なんで僕、一瞬でも普通な人だと思っちゃったんだろ…


「……なぁ〜んてね!ごめんね、驚かせちゃったかな?」

「ふぇ…??」


怖いオーラ出してたと思ったら、にこーと効果音がつきそうなほどの笑顔を浮かべてきた。


「ごめんごめん、君の反応が見たくて意地悪しちゃった」

「あっ…そうですか…」


僕はまたも頭を抱える。

もうやだ…滴流さんと話せるようになったから大丈夫だと思ってたのに……

虚しさでいっぱいである。


「麻村くんは最近ここにきたのかい?」

「あっ、はい。そうです…」

「そうなんだぁ〜、じゃあまだ生活慣れなくて大変そうだね」

「そうですねぇ…ははは…」


主に君たちによってなんですけどねッッ!!

僕は心のなかで副音声を大きな音で流す。


「そっか。まあ気楽にいなよ、ねっ?」


あれ…?意外とまともな人かも…?

さっきのは抜きとして、案外話せてるのでは…!?

まだ希望を捨てちゃだめだ…!きっと…!おそらく…!


僕はほんの少しの希望が見えた気がした。

一方、滴流さんは何度も僕たちを見てきた。


︙︙


「よし…帰ろう…」


やっと下校時間になった。

まだ初日で短いが、クラスがクラスなため体感長く感じた…


僕はバックを持って、クラスから出ようとした…

が強制キャンセルされてしまう。


「麻村くん、ちょっといいかな?」

「あっ、はい…なんでしょうか…?」


話しかけてきたのは沢田さんだった。


「ごめんだけど、荷物持って行くの手伝ってくれないかな?一人じゃ大変で」


「あっ…えっと……」


いや待ってください。頼まれるのはいいんですよ…慣れているから……いいんですよ?けど一つ言わせてください…

なんで僕なんですかぁ……!?

僕じゃなくてもよくないですか…?

力ないですよ……?


「うん…えっと…どこに運べば…?」

「わぁ!ありがとう。助かるよ!力を使うのは疲れるからね、君とは違って」

「えっ……あっ……?」


それってどうゆう意味だろうか…

嫌味なのか、素なのかがわからない。

沢田さんと居るのが少し怖くなったが、もちろん断ることができず運ぶことになる。


あっ、滴流さんにメールしとかないとだな…

遅れるって…


運ぼうとしたとき、待ってくれているであろう人への報告を思い出した。


︙︙


「ふぅ〜〜いや〜ありがとうね、麻村くん」

「いえ……」


荷物をからのクラスに持ってきた。

意外と重くて、確かに一人じゃ大変だと思った。


「…………じゃあ僕はこれで…「麻村くん」はい!?なんでしょうか!」


またも帰宅を強制キャンセルされて、声が裏返ってしまう。


「君は随分人を魅了するのが好きみたいだね?」

「えっ、それってどうゆことですか…?」

僕の問いにただ目を向けるだけ。


「あの、どうy「まぁ、いいや。次はないからね?」


急な厨二病セリフ!?とも思えないくらい

地を這うような、極寒の声が響いた。

笑顔を浮かべているはずなのに、すごく怖いとしか思えなくなっていた。


「あっ…」

ヒュッッ


呼吸音が変な音を立てた気がする。

「えっと…さようなら…!!」


僕は早足で学校を抜けた。

この恐怖はなんなのだろうか?

変人への恐怖なのか、はたまた言葉への恐怖なのか……いや、厨二病による恐怖だな…


僕は一人で自己完結した。


︙︙


「うぅ〜〜ん………」


次の日になっても悩み続ける羽目になっていた。

悩んでも解決しないことは分かっているが、唸ることしかできなかった。


「おい麻村?どうしたんだ?そんなに悩んで…まさか…また忌に取り憑かれたのか!?」

「いや、違うよ…ただ…なんというか……」


どうすれば良いんだろうなぁ……


言葉がずっと反響する。

言ったほうが良いのだろうか…

こんな時どうすれば良いのか分からず、いつも黙ってしまう。


「あっ、麻村ごめん。今日俺天田に呼ばれたから、先帰っていてくれ…」

「あっ…うん。全然いいよ。」


そっかぁ……別に一人は慣れてるんだけど…

ちょっと今は……


僕は沢田さんの方を目線だけ送る。

他の人と楽しげに話しているが…


「……麻村、なんかあったら俺を呼べよ?邪神ですぐ来てやるから」

「いや邪神って便利だね!?」


まあ、そんなすぐやばいことは起こらないでしょ…



︙︙


「本性表したらどうですか?()()()()


はい、嘘です。前言撤回です。

結構早めに起こりました。


時は少し前に戻る

︙︙


人通りの少ない帰り道。

一人で帰っていたが、後ろから声をかけられた。


「やぁ、麻村くん。次はないって言ったもんね?」

「だから…なに…が…?…」


言葉は丁寧で親しみやすいはずなのに、恐怖しか感じられない。

僕の脳は一つの言葉しか出てこなかった。

逃げなきゃ…!!


恐怖なのか、本能なのかはわからないが、気づいたときには背を向けて走っていた。


「はっはっ…はぁはぁ…けほっ…離れ…られた…かn「ウインドブレイク」っっ!!?」


ビュッッン!!! ダンッ!

体に浮遊感が起きたと思えば、壁に打ち付けられ倒れこんだ。


「がはっ…!けほっ…けほっ」


何が起きた?横から僕を突き飛ばすくらいの突風が

急に現れて…僕…飛ばされた…?

何が起きたか理解できなかった。


飛ばされた方は路地裏で、また似たようなところに来てしまった…


身体中が痛い。飛ばされた時身体をそこらかしこ地面に痛めつけられたからだと思う…

おかしくなりそうな呼吸をぐっと抑え込んで、無理やり息を整えさせる。


コツ…コツ…コツ…


ヒュッッ


奥から鳴る、一つの足音。

そこら中に乱反射して僕の耳に嫌でも入ってくる。


ドッ、ドッ、ドッ、と鼓動がうるさくなるような

胸に一つ一つ打撃が与えられる感覚がする。


あれ…?なにこれ…?すごくうるさい…

どうしよう…どうしようどうしようどうしよう

とりあえず…ここを離れ「チェストグラビタス」


ビュッッン!!ダンッッ!!


「げほっ……!」


壁に体を打ちつけられ、痛みで視界が揺らぐ。


へっ…??僕…今どうなってる…?

…動けない…!!

身体をよじろうにも指先までも動かない。


壁に貼り付けになってる…金縛りみたいにびくとも動かない…!!


「随分驚いたフリが上手ですね?そろそろ…本性表したらどうですか?害虫さん」


そう言って僕の首元にシャーペンを向ける。


笑顔を浮かべているはずなのに目は笑っていない。

てか、なんも疑問に思ってなかったけどなんか詠唱したらなんかが起きた!?


『魔導士レルー』


あっ…


この時、沢田さんの自己紹介をまた思い出した。

えっ…?嘘でしょ…魔導士ガチってこと…??


「随分余裕そうですね。まだ人間のふりをするのですか…」


いや、人間のふりもなにも人間ですけどッ!?


「だから……なにがっ…ですか…?」

「はぁ〜〜…入学初日、あなただけです…魔法を使っても、魔導書を使っても中身が見えなかったのは…」

「はぃ…??」


急に何を言い出すんですかぁ!?


「最初はただの一般人だと思ったんですけどね。」


いや、一般人ですよ!!?

君たちに比べたら一般人だと思いますけど!!


僕の悲鳴は誰にも届けられない。

学校生活が始まってから巻き込まれる回数が増えている気がする…!


「けど…嫌な残り香がほのかに残っている…酔いそうなほどの甘ったるい香りが」

「…僕ッ、香水つけてないですけど…!」

「え?」


僕の言葉に次は、魔導士レルーが目を見開いて口を開けた。


「あはっ、あははははははは!」

「!?」


驚いたかと思えば急に笑い出した…

何この人ッッ!!?こっっわ!!

僕は内心涙目である。


「はぁ〜あ、いやぁ〜〜、つまらない戯言を吐くようになったね…害虫さん」

「ッ‐…」


怖い、その一言に尽きる。

下手ないじめよりも怖い気がする。

狂気とはこの時に使う言葉なのだろうか。

いや、狂気とはまた別な気がする…


「さぁ〜て、君は化けてるのかな?それとも…"側を奪ったのかな?"」

「あ……」


この時、走馬灯みたいに昔のことを思い出した。

小学生の時、彼みたいに同じ目をしていた人を…



怒ってる…


怒ってるというより、憎しみや憤怒の言葉のほうがよく似合う。


この怒り…見たことがあるな…と、何処か他人事のように思った。

誰かのために怒る目だなぁ………

いやなんで!?


少し遠い目をしていたが冷静が返ってくる。

なんで僕にキレてるんですか!?


「はぁ…私だけに被害が行くのは良いですが、周りの方たちに被害を加えられるのは…どうしようもなく嫌なのでね…」

動けない僕の体にシャーペンを当てる。


「"消えてもらいます"」


体感温度がマイナスいった瞬間である。

頭の中で警鐘が鳴り響いてうるさい。

やっとここで命の危機というのを実感したのである。





あ……やばい……





どうしようッ……どうしようッ!!


『やばくなったら呼べよ?』


あっ……!


この瞬間、頭に電撃が走ったようにとある言葉が響く。

もうこれしか方法はない…!はず…


こんな時、もし僕がバトル漫画の主人公だったら命を削って力を発揮するとかなんだろうけど、あいにく僕は何の力もない人だ…だから…!


すぅぅぅ〜〜〜…


肺を風船のようにして酸素を入れ込む。


「…滴流さぁぁぁあん!!!ごめんなさい!!助けてくださぁぁあい!」

「ッ!?!?」


あたりに切羽詰まった声が響き渡る。

レルーも急な行動に少し後退りする。


僕が出せる最大限の大きい声で、助けを求める!

それ以外しか方法がなかった。

情けない姿…もし大人がいたら僕のことを情けない人間と指さすであろう。


「はぁ…よく嘆きますね」 ザッ!

「ぅッッ…!」


レルーはゴミを見るかのような目で麻村に魔法をかける。

水の中に溺れさせられるような、酸素がなくなっていく感覚が僕を襲う。



「滴流君も巻き込むなんてね…まあいいや、さような「俺は巻き込まれたんじゃねぇよッ我が闇から解き放たれよッ"闇黒龍"!」


『ギュ゙ァァァ!!!』

「なっ!」


ダンッッ!!


上から小さな龍のようななにかが、レルーめがけて突進してきたのが一瞬見えた。

地響きが鳴った瞬間、体が壁から離れ酸素が入ってきた。


「ヒュッ、ゲホッゲホッ…!けほ…てぎりゅうざん…」

苦しみながらも、うっすら目を開ければ彼の姿が見えた。

「おうおう、無茶して話すな。そこにいろ」

滴流さん…来てくれたんだ…

「ごめ…ん…ゲホッ…」

「……謝んなよ…大丈夫だから」


安心からか、気が一気に抜けて力が入らなくなる。

なんでだろう…非常識なことが起きてるのに…


「なんで害虫なんかを助けたんですか?滴流君?」

「沢田…いや…レルーか…」


服についたほこりを払い、僕たちを見てくる。


「いやぁ〜滴流君、すみません巻き込んでしまい…すぐに終わらせますので…」

「巻き込んだ?むしろ逆だろ?」

「逆?」


レルーの言葉が一層重くなる。


「麻村が無理やり巻き込まれさせられたんだ、お前によってな」

「……」


「麻村がなんかしたか?あんま会ってから日が長いわけじゃねぇけど、悪いことはしねぇやつだと俺は思う」

「滴流さん…」


僕はその言葉に泣きたくなった。

まだ数日しか出会ってから経ってないのに信じてくれてることに。

それが嘘でも忖度でも嬉しかった。厨二病だけど。


「これ以上友達怖がらせるのはやめてくれねぇか?」


重圧感。中学生から出るような言葉の重みをしていなかった。

二人ともいがみ合い、即発一歩手前状態だが…

僕は場違いに一人、目に光を灯していた。


「友達…?思う?はぁぁ〜〜…本当に…君は変わっていますね。まあいいです。すこし…"眠ってもらいます"」


そう言ってペンを滴流さんに向ける。

その瞬間、目の前にマンホールの3倍くらいの大きさをした魔法陣が現れる。


いや、えっ???魔法陣?

蛍光とか…いや…え??


僕は一人困惑するが滴流さんは顔色一つ変えていなかった。


「魔導士レルー…やっぱ強さは本物のようだな…」

「おやおや、僕は嫌なんですよ?戦闘向きの力ではないですから」


えぇ……なに…?なにが始ま ダァァッッンン!!!


「へっ?え…ええええええ!?」


何が起こったのだろうか…

目の前で光線と光線がぶつかり合って爆発したのである。バトル漫画のワンシーンでよくあるやつだと思う。


異世界漫画でしか見なそうな光景なんですけどぉ!?


滴流は今の攻撃で顔をしかめた。

「おいッ!麻村に当たったらどうすんだよ!」

「どうするって…どうもしませんけど?」

息を吸うのと同意義のように変わらない声でレルーは言う。


僕は少し距離を取って見つめることしかできない。


「てめぇ…!……我が身に眠る邪神よ、今こそ我が力となれ!影連斬撃!」

「リフレクション」


ダァん!ドカッん!!キュルッん!!


「わ……わぁ………」


拝啓、お母さんお元気ですか?助けてください。

目の前で怪獣大決戦みたいな戦闘が起きています。どうすればいいですか?


麻村はその場で口を開けるしかなかった。

︙︙

どれくらい経っただらうか。

数分くらいだろうが体感は数時間のように感じた。


「はぁ…面倒くさいですね……もういいですね、

"天の裁き"」

「光魔法の攻撃なんて効くわけ……ッてめぇッ!!」

急に適流さんが血相を変えて麻村の方へ走る。

「え………?」


パンッッ!!!


目が痛くなるほどの光があたりに反射する。


何が起きたのだろうか…眩い光の矢が僕めがけて飛んできたはずだった。

なのに…僕は無傷……


ふと、どたっと鈍い音がした。


「……滴流さん……?」



目が痛い中、ゆっくりと目を開ければ

地面に倒れてこんでいる滴流さんが、僕の視界に映り込んだ。


「ッ!滴流さんッ!!」

レルーのことなど気にせず、麻村はすぐに滴流の元に向かった。


「滴流さんッ……!大丈夫!?え…え……」

何度も肩を揺らすが起きてくれそうにない。


「大丈夫ですよ?少し眠ってもらってるだけですから」



なんで……


「…なんで……ぼくの…せい……巻き込んだから…?」




ドロドロと苦いヘドロのような感情に心が侵されていく。もう、わけがわからなかった。


「……君のせいではあるでしょうね。では、懺悔しながら消えてください。麻村瑠衣君」


目の前に魔法陣が浮かび上がる。

死ぬ直前なのに、走馬灯は流れてこなかった。

代わりに流れてくるのは後悔だけだった。



「リザレクショ…、ッ………………は………?」

バタッ……


「え……?」


急にレルーは貧血が起きたかのようによろけ、地面に膝をついた。

身体は小刻みに震え、呼吸も速くなっているのが目に見える。


え…??貧血…?

それとも低血糖……??


心配になるようなしゃがみ方を目の前でされて、ふと手を差し伸べそうになる。






「麻村のせいじゃねぇよ」



「え………」




地面が擦れる音に響く低音。

麻村の横に立つのは深紅の眼を持った滴流だった。


「滴流さん……ごめん……!僕のせいでッ…!!」

ほんとは色々、言いたいこと、ツッコミたいことがあったが謝罪の言葉しか出せなかった。

「謝るなよ。てか…麻村って謝るの早くないか?トゥトルタでもそんなに早くないぞ?」


よかった…生きてた……よかった…ほんとうに……

けど、トゥトルタってなに…??


安堵と疑問で変な顔をになる。


「ッ……なんで起きてるのかな……??」

「俺に状態異常系は効かない。邪神という猛毒を持ってる時点で俺は毒耐性持ちだ」


レルーはその場で膝をついてうずくまっている。

額には冷や汗を流しているのが見える。


「猛毒………まさかッ……!!」

「勘がいいな、お前の考えている通りだ。お前は邪神の邪気に呪われている」


え………??どゆこと……??

急な話の展開に麻村だけがついていてなかった。


「いつのまに……」

「お前が麻村に攻撃した時だ。麻村には俺の加護を付けている。お前が攻撃した瞬間、ウイルスのように呪が感染している」


あ…あの時の…

急に腕を伸ばして僕になんか言ってきたのって意味あったんだ…


レルーは苦虫を噛み潰したような視線を向けてくる。


「あとはゆっくり…ゆっくりと…身体全体に毒が回るように動いた。それだけだ」

「ッち……ぅぁ…!…」


頭を押さえ、苦しそうにうずくまった。


「じゃあな、魔導士レルー。よく眠れ」

そう言って右手を前にかざした。



あれ…これなんか…まずくない…?


ほぼ直感としか言えないが、そんな気がしてならなかった。


いや……


「待って滴流さんッッ!!」

「うぉあッッ!!」


なぜかわからないが堪らず滴流さんを止めてしまう。


「なんだ麻村!?ただ眠らすだけだから大じょ「今すぐ治してあげて!……ください……」

「……本気で言ってるのか?」


何を言い出すんだと、豆鉄砲食らった鳩のような顔を向けてくる。


「だって…その……こんなにやらなくても……いいんじゃないかな……?」

「…こいつを庇うのか?」

「庇うとかじゃなくて…!……ただ……嫌だなって……思って……ほら…クラスメイト…だし……」


酷く怯えた目と震え声で滴流に訴えかける。

数秒間止まってから、滴流は息を吐いた。


「はぁ…それもそうだな……よかったな魔導士レルー、麻村のおかげで二日酔い程度で済みそうだ」

「………」

「それと、こいつが本当に悪いやつかサーチしとけ」

レルーはないも言わず、しかし眼だけは麻村と滴流に向けていた。


ピュン



「あ…あえ…!?」

一瞬の間。手負いの獣が隙を見て逃げ出すようにその場から瞬間移動した。


「帰るぞ、麻村」

「あっ、うん………」



いや…気まずいぃぃぃ…!!

麻村はまたも頭を抱える。


いつも通りクラスに着くがやはり気まずい。

近くの席のためどうすれば良いのかわからない…

沢田さんは黙って席についてるし…


麻村は息を潜めて、椅子に座り読書を始める。


「………あの……」

「ッッ!?はぃ!?」


突然話しかけられて声が裏返る。

また何かやられるのではと、持っている本に力がこもる。


「………本…好きですか?」

「え……はい、好きです…」


聞かれたのは意外にも身近なことだった。

しかし、会話の始まり方が人間初心者の始まり方である。


「……これ…どうぞ…」

そう言って渡されたのは分厚いヨーロッパにありそうか本である。

「え、あ…ありがとうございます……」

なんの本だろう…


麻村がまじまじと本を見ていると、沢田さんが急に頭を下げた。


「…すみませんでした…昨日のこと…あなたを疑ったこと…すぐに犯人だと思い、攻撃してしまい……本当に…すみませんでした……」

「え?え!?」

「報いなら何でも受けましょう。魔力を奪うなり、実験体にするなり、魔導書を燃やすなり、なんなりと…」

「ちょちょっ!いつの時代ですか!?そんなのいいですよッ!!」


急に罰や罪など重苦しいものを言い始めたため、焦って止める。

重くないですか!?ケジメつけるみたいに言わないでください!!

と心の中で悲鳴を上げる。


「………そう…なの…ですか……?」

「うん…そうだよ…そんなの望んでないから……沢田さん…?あの……この本借りても良いんですか……?」


沢田さんは俯き続けるため、なんとか話題を変えようと下手な言葉を使うが意味がなさそうだ。


「うん?どうした麻村?と……レルー…」

「あ…滴流さん……」


滴流さんはレルーを見た途端、目つきが鷹のように鋭くなる。


「…もう…敵意は無いんだな?」

「えぇ…もちろん…」

二人があった瞬間空気が一気に重くなった気がした。

……やっぱり…二人とも仲悪くなってる…

申し訳ないとしかいえない……


「……では…」

「あ……行っちゃった……」


沢田さんは僕と目を少し合わせてから離れていった。

もう少しだけ話したかったなと心のどこかで思う。


「あぁ~…その…麻村」

「うん?どうしたの?適流さん」


少し気まずそうに適流さんは話してくる。

「レル―…いや、沢田は…悪い奴じゃないんだ…ただ…ちょっと疑い深いっつうか…その…ごめんな…」

「いや…なんで適流さんが謝ってるの!?」


適流さんがしおらしくなっていることに驚かされる。


「全然大丈夫だよ!適流さんこそ…怪我してない…?」

「俺は無事だ。てかあんなの日常茶飯事だから安心しろ」

頼りになる声で安心できた。


よかった…けど日常茶飯事ってどうゆうこと?

えっ…いつもあんな怪獣大決戦みたいなのやってるってこと…??


聞きたいことはあったが触れないでおいた。

僕が入っていい領域じゃない…


「うぅ~ん…、けど僕が怪しい行動したせいかもしれないし…なんで疑われたのかな僕?」

香水のせいかな?けど僕、香水付けてないしな…うぅ~ん…


改めて沢田さんが僕を敵視していた原因を探すが、ピンとくる原因が見つからない。


「あぁ~…多分、お前が普通過ぎたからだと思うぞ?」

「へ????」

適流さんの答えは、僕が思っていた斜め上…いや…斜め下だった。


普通…ふつう…フツウ…?

頭の中で普通という文字がぐるぐる回る。


「お前がさすがに能力も出さないで普通にいるから怪しいと思ったから疑ったんじゃねぇか?」


え…なに…?僕がおかしいの??

普通だと怪しまれるの??


ははは…いやぁ



「普通=怪しいってなに!?」



僕はまだ、厨二病(訳あり)の人たちに振り回されそうです。

読んでくださりありがとうございました。

読みにくい点などがあると思いますが、ご了承ください。すみません。

どうでもいいですが、厨ニ病のセリフって案外思いつかないものですね。

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