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第2話

 フルタイムロッカーはタワマンの地階にありました。

 ナンデモ君の話では、まず29階にある2933室のロッカーを開けなければいけないとのこと。

 タケル君は青いタッチパネルで部屋番号2933を入力しました。

 次にパスワードを入れました。パスワードの番号はナンデモ君がスマホの画面に表示してくれました。

 するとロッカーの一つが開きました。

 中には鍵が入ってました。

「この鍵が2933室の鍵だよ。まずここに行くんだ」

 ナンデモ君が言いました。

 タケル君は鍵を受け取るとフルタイムロッカーを後にしました。


 エレベーターで29階に行き、2933号室をさがしました。

 鍵を使ってドアを開け、中に入りました。

「ここは5LDKだけど、一番奥に和室がある。そこに行くんだ」

 ナンデモ君が言いました。

 タケル君は言われたとおり、奥の和室に行きました。

 和室には床の間があり、大きな岩が飾ってあります。その岩にりっぱな剣が刺さっています。

「この剣が”三種の神器”の一つ、魔法の剣だよ。これをタケル君が岩から引き抜くんだ」

 タケル君は剣を引き抜こうとしますが、びくともしません。

「無理だよ。引き抜けないよ」

「がんばるんだ。タケル君。この剣を引き抜いたら君は英雄になれる」

 タケル君はとうとう剣を引き抜きました。

「おまえはなにものだ」

 振り向くと和室に赤鬼が立っていました。

 赤い肌をした筋肉もりもりの大男で額に角が生え、口から牙がはみ出ています。虎の模様の布で腰を覆う以外、ほとんどはだかです。

「ナンデモ君、こわいよ。どうしらいいの」

「その剣で赤鬼と戦うんだ」

「そんなの無理だよ。勝てないよ」

「勝てないと思うから勝てないだけだよ。タケル君はもう英雄なんだ。君なら赤鬼に勝てる」

 タケル君は思いきって剣を振りかざし、赤鬼に突進しました。

 剣が赤鬼に触れると、不思議なことに赤鬼の全身はけむりのように消えてしまいました。

「あれっ、どうして消えちゃったんだろう」

 タケル君はつぶやきました。

「怪物は人間の恐怖心が生み出した幻なんだ。だから人間が恐怖に打ち勝つと怪物は消えるんだ」

「ところでこの後はどうしらいいの。ナンデモ君」

「まずタワマン共有施設の2階のフィットネスジムに行くんだ。そこに赤いシルクハットをかぶたおじさんがいるから、この魔法の剣と魔法の鏡を交換してもらってね。その後のことはおじさんが説明してくれるよ」


 2階のフィットネスジムに行くと、数人のおとなが運動していました。

 赤いシルクハットをかぶったおじさんはエアロバイクをこいでいました。

「この魔法の剣と魔法の鏡を交換してください」

 タケル君はそう言って剣を差し出しました。

 おじさんは少し驚いた様子でしたが、エアロバイクを降りると、部屋の隅に置いてあるスポーツバッグを持ってきました。

「君がタケル君か。タワマンの神さまから聞いてるよ」

 おじさんはスポーツバックを開き、中から丸い大きな鏡を取り出しました。

「割れないように注意して」

 おじさんは剣をスポーツバッグにしまいました。

「タケル君、すぐに14階の1428号室に行くんだ。そこへ行って、この鏡と勾玉のネックレスを交換してくれ」

 タケル君はおじさんに礼を言って、フィットネスジムを後にしました。


「少し待っててね。今、勾玉のネックレス持ってくるから」

 タケル君が1428号室のドアホンを押し、カメラに鏡を見せながら、この鏡と勾玉のネックレスをほしいと言うと、女性の声が聞こえてきました。

 しばらく待っていましたが、なかなかドアは開きません。

「おまえ、人間のくせに魔法の鏡を持っているとは生意気な」

 振り向くと天狗が立っていました。

 山伏の恰好をして、赤ら顔の真ん中に巨大な鼻が突き出しています。

「鏡を渡さないとおまえの命をもらうぞ。さあ、こっちへよこせ」

 天狗がゆっくりタケル君の方に近づきます。

「ナンデモ君、どうしよう」

 タケル君はスマホに言います。

「だいじょうぶ。その鏡を天狗に向けて呪文を唱えるんだ」

「呪文?」

「今から呪文の文句を表示するから、大声で言うんだよ」

 タケル君は鏡を天狗に向けると、スマホに表示された文字を読み上げました。

「アブラカタブラ、フーランパ」

 すると風が吹いてきて、天狗の全身は鏡の中に吸い込まれ、天狗は消えてしまいました。

「おまたせ」

 ドアが開き、赤いシルクハットをかぶった若いおねえさんが出てきました。

 おねえさんは勾玉のネックレスをタケル君の首にかけると、鏡を受け取りました。

「この後は1階の管理人室の受付に行くのよ。そこでこのネックレスを渡せば、ナンデモポイントをゲットできるはずよ」


 1階の管理人室の受付にはだれもいなかったのでタケル君は呼び鈴を鳴らしました。

 するとタワマン管理会社の制服を着たコンシャルジェのおばさんが出てきました。

「このネックレスをあげるから、ナンデモポイントをください」

 おばさんはタケル君をしばらくしげしげと見ていました。

 そのうちにおばさんの体に変化が起きました。

 おばさんの体が煙に包まれ、みるみるうちにヤマンバになりました。

 白髪の髪は長く伸びて全身を覆い、顔は黒くておそろしい形相になりました。

「おいしそうな子だねえ。おまえを食べちゃうぞ」

 タケル君はスマホを取り出しました。

「ナンデモ君、どうしたらいいんだ」

「勾玉のネックレスをかざして、さっきの呪文を三回唱えるだけでだいじょうぶだよ」

 タケル君はネックレスをかざして「アブラカタブラ、フーランパ」を三回唱えました。

 すると再び煙がヤマンバの全身を包みます。煙が晴れるともとのコンシャルジェのおばさんにもどりました。

 おばさんはわれにかえると、管理人室のバックヤードに入り、しばらくすると赤いシルクハットをかぶってもどって来ました。

 書類をいくつか記入した後、バーコードリーダーを受付の下の棚から出しました。

「スマホいいですか」

 おばさんはタケル君からスマホを借り、しばらく操作していましたが、バーコードが画面に表示されるとバーコードリーダーをかざしました。

 ピッという音が鳴りました。

「これでナンデモポイントがつきました。これを持って屋上に行ってください。この後はタワマンの神様が処理してくれます」

「ありがとう」

「勾玉のネックレスですが、こちらで回収させていただきます」


(つづく)



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