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第1話

 タケル君は小学校1年生。

 都内のタワマンの20階に住んでいます。

 あるときタケル君がリビングダイニングで夕飯を食べているとママがタケル君に言いました。

「エレベーターの『Rのボタン』は押しちゃだめよ」

「どうして」

 タケル君が聞きました。

「どうしても」

 ママはそのまま台所に行ってしまいました。


 タケル君はその日から『Rのボタン』のことが気になりました。

 エレベーターには30階の上に『Rのボタン』があります。

 『Rのボタン』ってなんだろう。タケル君はパパに聞いてみました。

「それは屋上へ行くボタンだよ」

 パパが言いました。

「どうして『Rのボタン』を押しちゃいけないの」

「小さい子供だけで屋上に行くのは危険なんだ。屋上に行くときは、必ず親といっしょじゃないとだめだよ。この前、管理組合で決まったんだ」


 でもタケル君はますます『Rのボタン』に興味をおぼえました。

 あるときタケル君が一人でエレベーターに乗っていると、ジャンプして『Rのボタン』を押してしまいました。

 しばらくするとドアが開きました。屋上でした。

 屋上のベンチには赤いシルクハットをかぶった一人のおじいさんがこしかけていました。

「タケル君かい」

 おじいさんは立ち上がり、タケル君の方にやって来ました。

「おじいさん、だれ?」

「わしの名前はタワマンノミナカヌシノミコト。タワマンの神さまじゃ」

「へえ、タワマンの神さまなんかいるの」

「いるとも、いるとも。それにしてもタケル君は悪い子じゃなあ。親の言いつけをやぶって『Rのボタン』を押すなんて、ばちがあたるよ」

「そんなのうそだあい」

「もし困ったことが起きたら1階まで降りて、タワマンの児童公園に行きなさい。砂場で赤いシルクハットをかぶった男の子を見つけたらこう言うんじゃ。『AIナンデモ君に会わせて』って」

 タケル君はおじいさんを無視してエレベーターに乗り、20階のおうちに戻ることにしました。


「あなただれ? うちの子じゃないわね」

 ママは冷たく言いました。

「ぼくだよ、タケルだよ。ぼくはここのうちの子だよ。ママ、ぼくのこと忘れたの?」

 タケル君が言いました。

 さっき、タケル君は屋上からエレベーターで20階に降りて、おうちの2011号室に行きました。ドアホンを鳴らすとドアが開き、ママが出てきました。でも、なんだかいつもと様子がちがうのです。

「とにかく早くおうちに帰った方がいいわよ。君のおかあさんが心配してるわ」

 ママが言いました。

「ここがぼくのうちだよ。ママ、思い出してよ。ぼく、タケルだよ」

 タケル君は玄関の中に入ろうとしましたが、ママがそれを制しました。

「人の家にかってに入ってはいけないわ」

「ここがぼくのうちだって言ってるでしょう」

 すると見知らぬ男の子がママの後ろに現れました。タケル君と同じくらいの年の子です。

「ママ、どうしたの」

 見知らぬ男の子が言いました。

 タケル君と見知らむ男の子はしばらく目を合わせました。

「君はだれなの」

 タケル君が聞きました。

「ぼくはトシオ。ここのうちの子だよ」

「うそだい。ぼくがここのうちの子だよ」

 タケル君は玄関のドアのそばに立てかけてある青い傘を取り上げました。

「ここにぼくの名前が書いてあるはず」

 ところが傘にはマジックで『トシオ」と書いてあります。

「これ、ぼくの傘だよ」

 トシオ君がタケル君から傘を取り上げました。

「どうしたんだ。さわがしいねえ」

 奥からパパがやって来ました。

「パパ」

 タケル君が言いました。

「君はだれかな? 」

「ぼく、タケルだよ」

「君はうちの子じゃない。うちの子の名前はトシオ。君は部屋をまちがえたんだ。ここのタワマンは広いから迷子になったんだね」

 パパはそう言ってドアをしめました。

 タケル君は泣きそうになりました。

 タケル君はエレベーターに乗って屋上に行こうと思いつきました。あのタワマンの神さまなら、助けてくれるかもしれません。

 ところがエレベーターに乗ってみると『Rのボタン』がありません。どうしよう。

 タケル君はタワマンの神さまの言葉を思い出しました。まずは児童公園に行ってみよう。

 タケル君は1階のボタンを押しました。


 児童公園の砂場では赤いシルクハットをかぶった男の子がすぐ見つかりました。男の子はミニカーで遊んでいました。

「AIナンデモ君に会わせて」

 タケル君がそう言うと、男の子は立ち上がり、公園のベンチに走って行きます。

 ベンチでは男の子のママがすわっていて、男の子にスマホを手渡しました。

 男の子はタケル君のそばまで走ってくると、なにも言わずにスマホを手渡します。

 タケル君がスマホをのぞいてみると、”AIナンデモ君”というアプリアイコンがありました。

 タケル君はそれをタップしてみました。スマホの使い方はパパから教わっていました。

 するとスマホの画面にはアニメの少年が現れました。

「こんにちは、タケル君。ぼくのことはナンデモ君と呼んでくれたまえ」

 アニメの少年が言いました。

「ぼくのこと知ってるの?」

 タケル君はびっくりしました。

「君のことはなんでも知ってるよ。君は『Rのボタン』を押したんで、パラレルワールドの別の世界線に来てしまったんだ。ここの世界線では君のおうちにはトシオ君がいる。君のおうちはないんだ」

「ナンデモ君、ぼくはどうしたらいいの」

「もとの世界線にもどるには、”三種の神器”を使って、ナンデモポイントをためないといけない。ポイントがたまればタワマンの神さまが君をもとの世界に帰してくれるよ」

「なんだか、よくわからないよ」

「まずはタワマンのフルタイムロッカーに行こう」


(つづく)


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