7. 厨二病(表)
5歳になった
最近、お兄さまがよく絡んでくる。そう、生まれて数年、ほとんど絡みむことがなかったが、私には、クラウザーという7つ違いの兄がいるのだ。この数日でよくわかったが、身内のひいき目を抜きにしても、良くできた御仁ある。ルックスの良さもさることながら、剣も魔法も優秀らしい。そして優しく博識で面倒見も良い。やだ、わたくしのお兄さまったらスパダリすぎる……
そんなお兄さまは、あれは何かわかるかい、これはどうだいと色々話しかけてくる。はじめは素直に答えていたが、答えられない質問があったときのほうが喜んでいたので、最近はわからないふりをして教えを乞うている。きっと教えたがりなんだろう、ほほえましいことだね。
ただ、一つ難癖をつけるとしたら、素直すぎて、人が良すぎるところがあるとお母様が言っていた。それもチャームポイントと言えそうなんだけど、「あなたの家には悪霊がいますよ」とかいった類の詐欺に引っ掛かりそうになったこともあるらしい。確かにそれは、権謀術数の中を生きないといけない貴族の息子としては、少々心配になるわよね。
そんなお兄さまだが、今日は少々様子が違う。
普段柔和な笑みは真剣そのものであり、手には十字架を持ちっている。いったいどうしちゃったのとおもっていると、声をかけてきた。
「娘の中に巣食う汝は何者ぞ、正体をあらわせ」
え?急にどうしたのお兄様……とおもったが、ピンときた。このお兄様、趣味は演劇鑑賞と英雄譚の読書らしい。で今御年12歳。そこから導き出される答えは一つだ
中二病、突如罹患する恐ろしい病である
前世の施設にも、同じくらいの年で罹患している奴がいたよ。私のことだ、経験が生きたな。しっかりしたお兄様だが年相応の遊び心もあるらしい。なら、やることは一つだね。
「ほう、小僧め気づいたか。我輩は残虐の悪魔なり」
全力で乗っかる一択だ。心の中の大百科を駆使して、我輩とか、なりとか、キテレツな事いっちゃったよ。でもちょっと楽しい自分もいる。こんな冷静な対応してを水を差すのは無粋の極みよ。将来思い出して恥ずかしい思いするのも、妹とごっこ遊びしていたと言い訳できるようにしてあげるからね!
「貴様の妹の身体を乗っ取っておる。この国の人民が我が策により阿鼻叫喚となるのが楽しみでたまらぬよ」
「・・・・・・」
いかん、お兄さまが啞然としている。あわわー、違うんじゃよ。ちょっと興が乗りすぎただけで。
「な、なぜ、おまえはそんなことを企んでいるんだ」
あ、続けるんですねお兄様。それじゃあ、前に歴史書で読んだ大悪魔の逸話を参考にっと
「我は力は現在不完全だ。身体を乗っ取り続けるには魔力を消費し、枯渇すれば我は地獄に帰らねばならぬ。しかし一方で、混沌と暴虐により生まれる憎悪にて我が力は増してゆくのだ。まあ逆に幸福の気が満ちると我が力は弱まるのだが……人の本性は悪で利己的。よほどの善人でもいなければあり得ぬことさ。おっと、この娘を殺しても無駄だぞ、新しい宿主を見つけるだけだからな」
翻訳すると、”人様に迷惑かけるようなことはせず、いい事して過ごしましょう”ってこと。
「悪魔め、そうはさせない、父上たちと協力して、貴様の企みを食い止めて見せる!」
わー!だめだめ。黒歴史にならないように、2人だけの秘密の遊びにしようね。
「小僧よ、今から貴様に高度な呪いをかける、今言った秘密を他言すれば、貴様だけでなく血縁者全てが死ぬ呪いをな……小さきものよ、せいぜいあがくがよい、我が力が完全にまでの暇つぶしにとなれ!」