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番外編:帰ってきた大悪魔(裏)

 シンデレラ・メダル・デトロイト

 それは200年前に出現し世界中を恐怖に陥れた大悪魔の名前だ。


 かの悪魔は、貴族令嬢の身体を乗っ取り大国の外務大臣にまで上り詰めただけでなく、王女の洗脳まで行っていたという。


 幸いにも当時の英雄達がこれを看破し、他国とも協力してこれを撃退することに成功。しかし、滅することは叶わずかの悪魔は「帰ってくる」と言い残し飛び立って行ったという逸話が残っている。


 その後、世界各国は人類種で争っている場合ではないと強固な協力関係を構築し平和な時代が続いていた。


 しかし、平和な時代が長く続いた弊害か、シンデレラの脅威を重くみるものは徐々に減りつつあり、自己利益のために争いを起こそうと考える者すら現れ初めていた。





 ザッザッザッザッ


 ザッザッザッザッ


 月明かりの下、虚な目をした騎士達が規則正しい軍足の音を響かせる。不自然な程に整った白鎧集団の行軍の様子をみて、大隊長のヤーネン・デンナはニンマリと口の端を持ち上げた


 (よしよし上手く催眠状態にできているようだな)


 野心家のヤーネンには、クーデターを起こして国の権力を奪うという陰謀があった。

 もちろん軽々しく周囲に漏らせる内容ではない、バレればすぐに牢屋行きだ。


 そこでヤーネンは、自分の得意分野である催眠の魔術を使った。騎士達大隊長という地位を活かし、時間をかけて白獅子騎士団の部下50名を催眠状態にしたのだ。


 騎士達は悪魔と戦う事も想定して高い催眠耐性を持っている。

 しかし訓練で疲労のたまった時を狙って、ある時は思考力を落とす香を、ある時は食事に薬を、ある時は焚き火や魔獣避け鈴の音を用いてと、一つ一つは効果の薄いあれこれを、周到に重ね合わせる事で巧妙に催眠への耐性を低下させていったのだ。


『残虐な悪魔が出現。至急討伐に向かっている』


 現在、そう認識するように催眠をかけている。

 しかし、実際は別荘地でささやかな休暇を楽しむ王族に夜襲をかけにいくのだ。


 死人に口無し。王族が悪魔に魂を売っていたのが判明したため速やかに粛清したというストーリーを流し、そのまま国の実権を握ってしまおうとヤーネンは考えていた。

 真っ赤な嘘だが、暗示にかかった騎士達50名が同様の証言をすれば真になるだろう。勝てば官軍なのだ。


 と、そこで夜道を照らす月明かりに陰りが見えた。

 雲でもでてきたかとヤーネンは空を見上げると—―視線の先から、何故かゾッとするほど美しい声が聞こえてきた。


「こんばんわ、月が綺麗ですね」

 

 そこには、月明かりを背に恐ろしい笑顔を浮かべた、伝説の大悪魔が佇んでいた




 ヤーネンの背中に冷たい汗が流れた。


 何せ彼は大隊長、陰謀が得意だか戦闘だって苦手ではない。特に相手の実力を見抜く目には自信を持っていた。だからこそわかる、月夜を背に浮かぶコイツの力はヤバい。


(200年ぶりに現世に現れたと言うのか?)


 そして、あろうことかその外見は騎士団の教本にある伝説の大悪魔『シンデレラ』と酷似していた。

 笑顔も人相画とうりふたつ……いやもっとおぞましい。


 加えて言えば一見聖力を纏った天使のように見えるのもヤバい。

 強力な悪魔ほど、自分を神の使いか何かに見せて誘惑してくるのだ。仮にも騎士である自分が一瞬天使と間違いそうになるなど、やはり伝説の大悪魔に間違いないだろう。


(何とか争いを避けなくては)


 そう思いながら悪魔の挨拶に何と答えようかヤーネンは一瞬思案し……その一瞬が開戦の合図となってしまった


「ファイヤーボール!」

「アイシクルエッジ!」


 虚な目をした騎士達が魔法を放つ。ヤーネンは「うおぉぉーい!?」と驚きの声をあげるが、少し考えれば心当たりがありすぎた。


『残虐な悪魔が出現。至急討伐に向かっている』


 それが彼の催眠の内容

 偶然にも一致した状況になってしまったのだ


「ええい!こうなればこの大悪魔を討ち取るしかない。総員、対空戦闘を行え!」


 夜空に花火のような弾幕が張られる。しかし、悪魔はそのすべてを回避していく。

 のみならず、何処からか見慣れない形の武器らしきものを取り出した。


「攻撃に備えろ!結界準備!」


 物理、魔法、両方防ぐ防御結界を展開する。

しかししかし、悪魔の攻撃はそのどちらでもなかった。


 ギャギャギャイーン!!!


「うお!」

「なんだなんだ!?」


 予想外の大音量が鳴り響き、驚いた兵士の弾幕が弱まる。その間に、悪魔は恐ろしい声で歌い始めた


 それは、精神に作用する力を洗脳・催眠効果を纏った歌だった。歌を聴いていると『本能的に嫌っている奴をめちゃくちゃにしてやれ』という衝動が湧き上がってくる。


 対悪魔様に作られた白鎧の効果に加えて騎士団大隊長として高い耐性を持つヤーネンは、それを何とかレジストした。しかし悲しいかな、騎士達はヤーネンの仕込みよって催眠に対する耐性が大幅に下がっていた。結果、ヤーネンによる催眠はシンデレラの歌によって上書きされていく。


 シンデレラへの攻撃を攻撃をやめる騎士達。それをみて宙に浮く大悪魔は恐ろしい笑みを浮かべると、翼をはためかせて飛び立っていった。


 そこからが、ヤーネンの地獄の始まりだった。





 王族を護衛していた騎士達は突然空に張り巡らされた攻撃魔術による弾幕に気付き、偵察部隊を差し向けた。


 到着した彼らが見たものは、疲労困憊で倒れ伏す騎士達と、ぼこぼこの顔で裸にむかれて亀甲縛りで木に吊るされた状態で尻から血を流すヤーネン大隊長の姿であった。加えて言うと尻には剣の鞘がねじ込まれていた。


 偵察部隊はすぐさま大慌てで手当を行い、事情聴取を行った。


 しかし、精鋭の騎士達はこの一週間ほどの記憶がはっきりしないという。ぼんやり覚えているのは、恐ろしい笑顔を浮かべる悪魔の姿と、『残虐な悪魔が出現。至急討伐に向かう』とヤ―ネンに命令されていたこと、そして「この大悪魔を討ち取るしかない。総員、対空戦闘を行え!」という言葉のみであった。


 そして当のヤーネンはと言うと……完全に精神がやられており事情調査は叶わなかった。ただ時おり「シンデレラ、恐ろしい、シンデレラ」と口にしてることが確認されている。


 これらのことから、王家はこんな結論を下した。


 200年ぶりに大悪魔シンデラが出現、その場所から察するに別荘で療養中の王族を襲おうとしていた。

 それを感知したヤーネンは緊急事態と言う事で諸々の手続きを省略し白獅子騎士団を率いて迎撃。

 なんとか退け王族を守ることにはことに成功したもの、白鎧と騎士団の耐性を上回る洗脳魔法により騎士団の面々は昏倒させられ、ヤーネンは蹂躙された。おそらく今回は小手調べ、シンデレラは虎視眈々とこの世を地獄にする事を狙っており、全く油断出来ない状況である。


『200年ぶりにシンデレラが出現』

 この報は瞬く間に世界中を駆け巡り世界中を恐怖に陥れた。


 特に、寿命が長く当時のことを知るオーガの勇者やエルフの姫は思い出補正で5割増しで過去のシンデレラの恐ろしさを伝えて人々はそれを信じた。


 200年前の伝説は真実だった!

 シンデレラは、より力をつけて帰ってきたのだ!


 シンデレラの恐ろしさは再び……いや以前にも増して強く認識された。


 結果、人類種全体の危機に各国家は今まで以上に強く団結した。

 また、自己利益のために争いを起こそうと考える不届き者もいなくなったという。

お読み下さりありがとうございました。

よりければ、下の星☆を染めて評価して頂けますと参考にも励みにもなります。

そして新作を書く力にもなります。愛の一票を頂けますと幸いです。


また、新作短編を投稿しております。

願わくば、こちら↓もお楽しみいただけますように。


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