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デトロイト・メタル・シンデレラ  作者: いのりん
魔界からの使者 編
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35.堕天使やめました

堕天使ルシファーがシンデレラと行動を共にして数日が過ぎた。当然ながらこの間、シンデレラは一切悪事に関わっていない。それを近くで見続けたルシファーも、「あれ、この娘、顔、とくに笑顔がものすごく怖いだけで、噂とだいぶ違う人物ではないか」と思い始めていた。


そんな彼らは現在、ヒューマン国の荘厳な大会議室にいる。

その円卓には現在、シンデレラを含む、各政務の担当大臣が一同に会し、国政について意見交換がされていた。


ちなみに、大抵の場合、最も時間がかかる外交については開始から3分もかからずに終わっていた。揉めることが予想されたエルフの国やオーガの国について、シンデレラが非の打ち所がない条件で条約を締結していたからだ。


そこで、現在残された議題は、2つ


・治癒魔術の発展の為に人体解剖を規制緩和してよいか

・死刑となった凶悪な犯罪者の埋葬費用について


今は人体解剖の規制緩和について議論の最中だ。


厚生大臣が言う

「治癒魔術の上達には、身体の構造をイメージする必要があります。現在、解剖は動物のみで行われていますが、術者育成のため、人体解剖もできるように規制を緩和するべきではなきでしようか?」


すかさず、他の大臣から反対の声があがる

「倫理的にそれはどうなのだ?」

「治癒術者は女性が多い、耐えられるのか?」


厚生大臣はたたき上げで出世した人物だ。ゆえに、紛争や魔物の討伐で、治癒が上手くいかず四肢を切断することになった事例を数多く知っている。そこで今回提案したわけだが、反対意見が多かった。彼が、やはり死体を暴くような真似は難しいだろうか諦めかけたその時


「私は賛成しますよ。素晴らしい案だと思います。」と声が上がった。


賛成の声を上げたのはシンデレラ

周囲の注目が集まる


「献体をどう用意する?希望者が集まるとは思えないぞ。」


「死刑となった犯罪者の方にご協力頂きましょう。予定されているもう一つの議題は、犯罪者の埋葬費用についてでしたわよね。確か今は、そんな事に費用を使うなと言う国民の声から供養もされずに墓もなく、そのまま荒れた土地に埋められるのも倫理的に良くないから何とかしたいと言う……ならば彼等にご献体になって頂く代わりに、解剖後に手厚く国が埋葬すると言うことで一石二鳥になると思うのですが、どうでしょうか?」


大臣達は目を見開いた。確かに、それなら国民も納得の上で献体の問題はクリアできる。また、死してなお。体をいじられる恐怖は重度犯罪の抑止力ともなるだろう。実は各大臣達も、似た様な案を、頭の片隅で考えた考えたことはあるのだ……周りにドン引きされそうだから言わなかっただけで。


「ご献体として、脳や内臓まで解剖させて頂くのですから、それを説明すれば、国民の皆様もご献体を手厚く埋葬する事に納得して下さると思います」


大臣達は、ばっと顔を見合わせた。そのまま、目でやりやりとりする

(え、解剖って内蔵や脳まで行うのか)

(いや、ワシも手足だけかとおもってたんじゃが)

(この女、当然の様に解剖する想定範囲を広げたぞ)


ちなみシンデレラは前世、医療職に憧れておりそのカリキュラムを調べる過程で、「解剖見学」という項目があることを知っていた。加え言うと医療系の漫画や小説も沢山読んでおり、ゆえに心理的ハードルは凄く下がっていた。この辺りは転生者と現地民の意識のギャップが出た形である。


「ち、治癒術者は女性が多い、耐えられるのか?」


「何なら初解剖には、まず私が女性の代表として責任を持って立ち会いますわ。個人的に治癒魔術の勉強もしたいですしね」


数日間、行動を共にしたルシファーには分かる。これは彼女の本心だ。しかし、本人の高潔な意思に反し、周囲は彼女のことを非常に恐ろしい猟奇殺人者かなにかのような目でみている。まあ、今だって悪魔の様な天使の笑顔を浮かべているので、大臣達が勘違いするのも仕方ない面もあるのだが。


結局、この案は可決され、王国の治癒魔術の水準は上がり、重度犯罪は減った。


それはそれとして死体をバラバラにするのが大好きな女と言う噂が広まり、シンデレラはより怖れられる様になったのだった



⭐︎⭐︎⭐︎


そんな日々が数ヶ月ほど続いた。


そうすると、顔が怖く笑顔を作るのがとても下手なだけでこんな扱いをされているシンデレラのことを、ルシファーはだいぶ可哀そうに思って情が湧いてきた。今はちょっとぐれているが、元々、彼は人類を守護してきた大天使。根は真面目で、善良な人間が大好きなのだ。そこで彼はシンデレラに伝えた。


「シンデレラ、堕天使を辞めたよ。今日から私は、君の守護天使となった。とは言っても堕天で失われた聖力が回復して肉体を取り戻すまでは、君にしてあげられることは殆どないんだけどね。」


「まあ!嬉しい、その気持ちだけで私は充分幸せよ。ところで、外見は全然変わっていないみたいだけどそんなものなの?ほら、翼は黒いままだったり……」


「ああ、翼は生え変わりを待たないといけないんだ。2、3ヶ月くらいかかるかな。まあ、自然回復して肉体を取り戻すまでには一年くらいかかるし、それまでは人に見えないから問題ないだろう」


「あ、そんな犬の抜け毛みたいな仕組みなのね……」


かくして、善良な転生少女はついに理解者を得た。しかも、その相手は聖人にしか付かない守護天使である。現在はツバサが黒く堕天使っぽいが、順当にちょっとずつ聖力が回復し実体化する頃にはきちんと天使っぽい外見になるはずだ。


ルシファーは思う。実体化した自分を見れば、流石に人々のシンデレラを見る目も変わるだろうと。


人はそれをフラグという。


もちろん、この物語がルシファーの思った通りの展開になるわけがない。この数日後、シンデレラへの畏怖はより強まる方向に事態は急展開を迎えることになる。

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