31.本物の悪魔
外務大臣。凄く大変な事になると思って覚悟を決めて引き受けたんだけど、いまのところはそれなりに上手くいっていると思う。
と言うか、交渉相手がいい人だったんだよね。エルフの国のクコロさんだっけ。こっちが身だしなみ整えて誠意を持ってお話ししたら、あっさり主張を覆してくれた。調停まで数ヶ月かかると予想されていた交渉が一日でおわるとか、逆に驚いたよ。
そんなことを思いながら王宮の中をフラフラ歩きていると__いや、サボりじゃなくて現在は本当に仕事がないから何か役にたてることはないか視察としてね__私より一回り年下の少女に声をかけられた。
「ごきげんよう、シンデレラさま」
「ブリトニー王女、ごきげんよう。クラウザーお兄様も、ご機嫌麗しゅう。」
「ああ、シンデレラ……ご機嫌麗しゅう」
ブリトニーというのはこの国の王女だ。末っ子で現在10歳、とってもかわいい。可愛過ぎて、心の中ではこっそりブリちゃんと呼んでいる。そして、隣にいるのはクラウザーお兄様。
年の差もあり、あまり接する機会がないのだが品性方向・文武両道の自慢の兄だ。幼少期に一時期近い距離感になれたのだが、その後すっかり疎遠になってしまっていた。まあ、年齢も離れているし性別も違うしそんなものなのかもしれない。学院を卒業後、国の治安向上のための事業に力をいれていて、今は王宮の警備を取り仕切るようになっている。今は王女さまの話し相手、かつ護衛的な立場で傍に付き添っているようだ。
「聞きましたわよ。エルフの国との交渉を上手く纏めてくださったというお話。王女としてお礼申し上げます。ありがとうございました。」
ブリちゃんはそう言うと、手を握ってきた。はわわ、やっぱり天使だわこの娘。と、手の中に何か紙の様な感触が。
「危険ですよ!ブリトニーさま、王族たるものが気軽に他者に触れに行くなど。」
「もう、様はお堅いんだから、貴方の妹ではありませんか」
お兄様が慌ててブリちゃんを諌める。ブリちゃんの言う通りお堅いかもしれないけれど、真剣に仕事をするのは素晴らしいことだ……まさか私が危険だと思われているとか、ないよね?
そうして二人と別れた後手の中を見ると、ブリちゃんから渡された小さな紙があり、こう書かれていた
『どうしても二人きりでお話ししたいことがあります。本日の丑三つ時に戦地跡にきて下さい』
⭐︎⭐︎⭐︎
さて、現在は丑三つ時の戦地跡だ。つまるところ深夜になるが、地球よりも月明かりが明るく、わりと見通しがよい。便利だね、異世界。ちなみに戦地跡というのは、城内の大学キャンバスの様に敷地内の外れにある、400メートルトラックくらいの土地のこと。かつてここで悪魔との激戦があり、悪魔の呪いの残滓で草木一本生えず荒れ果てている。それを気味悪がって人々は近寄らず、こっそり会うのはうってつけの場所といえるだろう。
「本当に1人で来るとはな、豪胆と言うべきか、愚かというべきか」
背後から声をかけられて振り返ると、ブリちゃんだった。あれ、口調と雰囲気なんか違くない?いつもは正統派お姫様って感じなのに、いまはその……凄く厨二病っぽい。
「あの、ブリトニーさま、いつもと雰囲気がちがうような」
「我はブリトニーではない。傾国の悪魔なり」
おおっと……これはひどいわね(誉め言葉)。クラウザーお兄様も罹患していた厨二病だ。ブリちゃん、ストレス溜まっていたのかなぁ。うーん、王女相手にこんな対応は失礼かもしれないけれど、否定するも可哀想だし周りに人もいないし、ちょっと乗ってあげよう。
「な、なんですってー(棒)いったい何を企んでいるの」
「ようやく憑依した器が我の魔力に耐えられる様になってきたのでな、まず手始めに、この王宮で最も恐れられている貴様を血祭りにあげてやろうと思ったわけよ。ああ、助けを呼ぼうとしてもむだぞ、いまこの荒野は闇の帷でおおったでな。」
ブリトニーちゃん、ノリノリだな
「まずは手始めに、腕でももいでやろう。悶絶ふるがよい」
「あ痛ぁ!」
ブリちゃん、手からなんか魔法をとばしてきた。この年で魔法使えて凄い。でも、腕ちょっとだけ赤くなっちゃたよー。強めのしっぺくらいの痛さだった。
「バ、バカな。殆どのダメージがないだと。我が力はまだ完全体ではないとはいえ......貴様、何者だ」
「いや。ちょっと痛かったからもう少し加減してくれると嬉しいんだけど……」
「っ、舐めた口を。遊びは終わりだ。今出せる全力を見せてよろう。滅びるが良い。」
「わわわ!」
ブリちゃんの両手から沢山魔法がてでくる。直撃したらちょっとだけ痛そうだから、避けて、手のひらに魔力を集めてパリィしてと捌きながら思う。ブリちゃん、相当ストレスたまっていたんだなぁ。王女としての責務とか、いろいろ思うこともあったのかもしれない。このままやられたふりしてもいいんだけど、すこし年上のお姉さんとしては、もっとできることがあるかもしれない
「ぶりちゃん!落ち着いて!私は貴方の味方よ!」
「な、おいきさまなんのつもり痛だだだ!」
とりあえず、思いっきり抱きしめてみた。
強くだきしめすぎたか?でもこうやってしっかり愛情表現するのも必要だろう。
力はそのままに、全力の治癒魔力ー―聖の魔力で彼女のことを包んであげよう
「びびゃー!消滅するうぅぅー!降参、降参じゃ勘弁してくれ!」
あ、ぶりちゃん、泣いちゃった。よっぽどストレスたまってたんだなぁ
☆☆☆
その後、ぶりちゃんと話し合って、月一くらいでよければこうやって深夜に付き合うことを約束した。
途中で「ま、まさか本当に気づいていなのか、勘違いしとるのか……」とか「こ奴を超えるまで力を付ければ、その時こそ、この国を......」とか小声でぶつぶついっていたから、この中二病はなかなかに深刻だと思う。根気強く付き合って、彼女をストレスを少しでも和らげてあげたいものだ。




