30.高飛車エルフのトラウマ
どうも、シンデレラです。
外交補佐官の試験をうけたら、何故か外務大臣に抜擢されてびっくりしています。元大臣のテリーさんと、宰相ビスマルクさんがゴリ押しして決まったみたい。
きっと、先日の友好的な外交をしたいと言うスタンスを評価して頂けたのね。今後もそのスタンスは崩さずやっていこうと思う。
そんなわけで、宰相ビスマルクさんの指示で、まずはエルフの国との交渉を担当することになった。なんでも、現在エルフの国とは緊張状態にあるそうです。なんでも、国境にある森の資源の配分で、エルフの国が突然、今まで両国で取り決めていた量よりも多くの資源をよこせと主張してきて、場合によっては戦争も辞さない構えらしい。
それで、今度話合いが持たれると言うことで、現在は補佐官の人から色々教えてもらっている。ちなみにだけど、補佐官の人は超優秀。難しい事柄も、ポイントを絞ってわかりやすく教えてくれる。ありがたいことだ。
中でも、エルフさん達は数ではヒューマンに大きく劣るものの、強い魔力と長い寿命による豊富な経験値をもっていてヒューマンを見下しがちなのが、現在頭を悩ませているポイントだという。
「それで、話し合いはどんな形式で行うことになるのでしょうか」
「はい、国境沿いの平野にて、それぞれの国の代表が精鋭の兵士100名を率いて集合。衆人環視のもとで代表者同士が話し合いを行います。」
「そう、ありがとう。相手の代表者はどんなエルフさんなの?ぜひ知っておきたいんですけど。」
「おそらくエルフの姫であり、自身が強力な騎士でもあるクコロという人物が出てくるかと。エルフの特徴にもれず外見は若いものの、特に長命で1000年以上生きている人物と言われています。」
うーむ、どうしたものか。まず、武力で威嚇する、とかは絶対にしたくないんだよなぁ。ビスマルクさんも『遠慮せず、君らしいやり方でやってくれたらいい』って言ってくれたし。うーむ......
よし、決めた。
まず、身だしなみを整えよう。
異世界って、個性を大切にするのか、兵士さん達でも髪型とか軍服の着こなしとかバリエーションが豊富なんだよね。
それも個性的で素敵なんだけど、元いた世界のお巡りさんとか自衛官の人とか、髪型とか服装とかビシっと統一されていて、組織としての規律が凄くかっこよかった。そんなわけで、脅しではなくて、ヒューマンの国にはこんな規律ある文化がありますよーとアピールして、文化的に一目置いてもらってから交渉するようにしよう。
「よし、交渉を有利にすすめられるように、まずは連れていく100人の兵士の身だしなみを統一しましょう。簡単なイラストを書くわね……よし、こんな感じでお願い」
「これは、初めてみる髪型ですね。いったいどういった目的なのですか」?
ふふふ、これはね、礼儀正しさと聡明さをアピールする髪型
これで一目おいてもらって、仲良し外交するぞー
⭐︎⭐︎⭐︎
エルフの姫であり、自身が強力な騎士でもあるクコロは、ワガママで好戦的な人物であった。また、エルフの中でも特に長命で強く、魔法にも精通しているため、ヒューマン達を見下して会見に望んでいた。誤解を恐れず端的に言うと、現在の彼女は「ざまぁ」されるのがお似合いの嫌な女であった。
そんな高飛車な彼女だが、過去にはトラウマがあった。その元凶は、大昔、大悪魔に憑依されて闇堕ちしたオーガ族の男勇者だ。エルフの国はそいつに蹂躙され、他国の連合軍に助けられるまでの3日3晩、クコロは辱めを受け続けた。800年前たった今でも彼女はそのことが忘れられないのだ。ちなみに当時、籠城して援軍の到着を待とうという周囲の制止を振り切って少人数で戦いに打って出て返り討ちに合っており、クコロの自業自得な面もある。
それでクコロは、オーガ族のように屈強で【強力な雄】を感じさせる種族には今でも無意識下で上にみており、強気に出られない。しかし逆に、元々の性格に屈辱をうけた反動も加わり、下にみている他種族相手にはより苛烈な態度をとるようになっていた。そして下に見ている種族には、他種族と比較するとなよっとした外見になりがちなヒューマンも含まれている。なお、かつてクコロを助けた連合軍にはヒューマンも含まれていたのだが、その事実や恩は都合よく無かったことにしていた。基本的にクコロは嫌な女なのだ。
今回の森の利権のことだって、クコロが暴走して、穏健派の臣下からは諌められているのが実情だ。
さて、そんなクコロであるが……現在、びびりまくっていた。
先程、会談でシンデレラにあったばかりだと言うのにだ。
「はじめましてクコロさん、私はシンデレラ、実りのある会談にしましょう」
「ああ……ヒューマンの大臣よ。よろしく……お願いします」
偉そうに「よろしく」で、言葉を切るつもりだったクコロだったが、つい「お願いします」と敬語になってしまった。これではどちらが上かわからない。
何せ、シンデレラときたら、うちに秘めた魔力がハンパじゃないのだ。上手く隠しているようだが、魔力に精通したクコロにはわかる。過去1000年、こんな強力な魔力持ちにであったのは一度しかない。その一度は言うまでもなく、トラウマとなっている大悪魔に憑依されたオーガ族の勇者だ。
かつて完敗したオーガ族の勇者ーーその特徴であった『ハンパなく強い魔力持ち』と『圧倒的な雄を意識させる身体的特徴』には無条件に屈服してしまう程、彼女は過去の経験に心を折られていた。この場合、シンデレラは前者に該当する。ただ、エルフの代表として、また自分が言い出しっぺでヒューマン国にふっかけて会談に望んでいる以上、無様な無条件譲歩などできるはずがない。
しかし幸い、シンデレラは女性だ。クコロのもう一つの弱点である『圧倒的な雄を意識させる身体特徴』が出てくることはあり得ない。つまりまだなんとか、耐えられる。それで、「頑張れ私」とクコロが内心で自身を叱咤していると、シンデレラから追撃がはいった。
「エルフの精鋭の兵士達も素敵ですね。でも、ヒューマンも素敵なんですよ。今回は髪型にも趣向をこらしたの、よく見てくださいね。」
「ひい!」
シンデレラが兵士達を自分たちの近くに呼び兜を取らせたとき、兵士たちの一律にそろった髪型を見てクコロはこらえきれずに悲鳴を上げた。シンデレラとしては、クコロに好印象を与えるために、兵士全員に『礼儀正しさと聡明さをアピールする髪型』をさせたつもりであった。しかし、トラウマを刺激されたクコロには別のものに見えていた。
兵士達の頭は、クコロの目にはまるでキノコのように見えた。
そして日々の訓練で黒く日焼けした兵士達のキノコは、クコロには陵辱されたオーガのキノコを思い起こさせた。それが100本ならんでいる。そして当然ながら人の頭は、オーガの股間についている剣よりも、はるかにでかかった。
「き、奇抜な髪型ね……」
それは、クコロの精いっぱいの強がりだった。ヒューマンは礼儀正しさと聡明さが特徴的な種族とたかを括っていたら、今回の外務大臣は、秘匿していた自分のトラウマを暴いたうえでトラウマを暴力と陵辱をちらつかせる恐ろしい相手だった。分はこのまま敗北するだろう、しかし、しかしそれでも、少しでもいい負け方をする必要がある。
「なかなか素敵でしょう。この髪型はね……坊ちゃん刈り、っていうのよ」
ボキリという音がクコロには聞こえた
兵士の「坊ちゃん」にめちゃくちゃにされる未来を幻想した彼女の心が折れた音だった。
結局、国境にある森の資源の配分の話し合いは、エルフの国全面的に譲歩する形でおわった。両国で取り決めていた配分量がそのまま継続となるだけでなく、迷惑料としてヒューマンに有利なオプションがいくつかつくこととなった。以降、クコロは外交の任を外れ、エルフの国とヒューマン国は大きなトラブルなく、良好な関係が長年続くこととなる。
それはそれとして
高飛車なエルフの姫をどうやって屈服させたらしい
何かえげつない方法でトラウマを刺激したそうだ
というウワサがながれ、シンデレラは外務大臣に就任早々、他国からも恐れられる存在となったのだった。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます
本日、もう一作短編を投稿したのでご紹介させて下さい
「ガチゴリラ令嬢ですが年下王子に求婚されました」
Nコード N5526KC
なんと、異世界恋愛物語(笑)です。
脳筋バトルがありますが、ジャンルは恋愛!社交界のビオランテ、ゴリアーデさんの活躍を、是非ご覧下さい!




