28.王宮への招集
シンデレラが学院へきて三年目の春
彼女は15歳になっていた
この三年間、シンデレラは変わらず心優しい少女であり続け、本人は良心にそった行動を続けた。
にも関わらず、ミラクルな勘違いが御多分に漏れず続いた結果、『裏で悪逆の限りを尽くしている恐ろしい人物』と言う噂は、よりいっそう強固なものとなっていた。
そんな小春日和の昼下がり
学園には激震が走っていた
「おい、シンデレラさんが王宮に召集されたぞ!」
「今度は一体、どんな恐ろしいことが始まるんだ1?」
きっかけは一通の辞令だ
『生徒、シンデレラを外務大臣補佐官の候補して王宮へ招集する』
学院の生徒は、無償で最高峰の教育を受けられる一方で、必要な時は国に協力する義務があると、法に明記されている
しかし、一介の学生が、しかも外務大臣補佐官と言う重要なポストの候補として王宮へ招集されるようなことは、前代未聞であった。かくしてシンデレラは王宮へ召集されるのだが、その際「国王を脅したらしいぞ」、「この国の陰の最高権力者はもうシンデレラさんに替わっているんだ」、「とうとう他国をSATUGIしに行くのだ」など根も葉もない噂が王都に流れることになる。
ちなみにそれらの噂によって、一寸先にどんな災禍が待ち受けているのかと不安になった国民の多くは、浪費をやめ貯金に励み、かけがえのない家族との時間を大切にしたことで逆に人生の幸福度が増したという。
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どうも、シンデレラです
いま、王宮の一室にいます
先程、宰相のビスマルクさんからこんな話をされました。
・外務大臣補佐官としての適性をみたい
・そこで、外務大臣に自分を雇う交渉をしてみてくれ
・交渉のスタイルは外交で想定される範囲で自由
・ただし大臣は用心深く、弱みつかむのは困難
・準備期間は3日
まあ、弱みをつかむのは困難と言われたのだが、それはどうでもいい情報だ。交渉スタイルは自由と言うし、弱みを掴んでゆするなんてことしたくないからね。お互いに徳となる、ウィンーウィンの交渉を目指すのだ。
なので、まずは大臣さんに関する情報を集めよう。大事にしている物とか、大切な人とかね。それで、まずはこちらから何か差し出そう。奉仕の心、真心で仲良くなって、お互い幸せになる外交スタイルを提案したいと思いまーす。イッツ、シンデレラスタイル!
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わたくしの名前はリーリャ
王宮にて、執務に励む皆様を陰ながらお支えするメイド長をつとめてさせて頂いております
ちなみに十二年ほど前まではデトロイト家に使えておりました。家長のフレディさまは素晴らしいお方で、このまま、一生お使えするものと思っていたのですが、子女のシンデレラさまに恐怖感を感じてしまい、王宮に転職した経緯があります。
ただ、きっかけは後ろ向きなものでしたが、王宮での仕事もまた、やりがいがあり楽しく、また先代のメイド長よく目をかけて頂いたこともあり素晴らしい経験となりました。今では転職して良かったと思っています。
ただ、現在、大きな不安事がございます
かのシンデレラ様が王宮に招集され、わたくしは彼女に呼び出されているのです。一体何をされてしまうのでしょうか?
「リーリャさん、お久しぶりね。覚えているかしら?私、3歳のころまで貴女にお世話してもらっていたのよ。歴史を教えて貰ったり……一緒に武器庫にも入ったわよね」
「もちろんでございます」
なんで忘れる事ができましょうか。それに、わたくしを明確に覚えていたのも、誇らしい以上に恐ろしさを感じます。三歳の頃の記憶というのは、そんなに明確に覚えていられるものなのでしょうか?
「それでね、今日あなたを呼んだのは一つお願いがあるからなの。きいてくれるかしら。」
「もちろんでございます。ただ、メイドの倫理に反しない範囲で……ではございますが。」
シンデレラ様が外務大臣との交渉に臨まれるという話は、メイドの間でも噂になっています。大方その情報収拾でございましょう。ただ、メイドの倫理として、普段からお支えする殿方の悪口や、不利益になる情報を漏らすわけには参りません。そもそも、外務大臣さまは用心深い方で、部下や私達にも弱みは見せないかたなので、弱みとなる情報も存じ上げないのですが。
「よかった。では、メイドの情報網を使って、大臣の好きなものや、大切な人について調べるのを手伝って頂戴。穏やかな交渉になるように、相手の好きなものを把握しておきたいの」
「……承知いたしました。」
シンデレラ様の提案は至極平和的なものであり、メイドの倫理感に背くものではありませんでした。喜んで協力させて頂くべき案件です。ただ、シンデレラ様はその時、昔以上にはるかに恐ろしく、悪そうな笑顔をお浮かべになられておられました。本当に全力で協力していいものなのでしょうか?
ただ、普段メイドの仕事というのは雑用が殆どなので、このような大事を頼まれるのは自尊心もくすぐられます。こうして、まるで知らないうちに上手く騙されて何か悪いことに加担しているような恐怖を感じながら、わたくしはシンデレラ様の依頼に全力で取り組むことになるのでした。




