25. 病気の悪魔の斃し方
(うーん、何とかしないといけないわよね)
入学して一年目の冬、シンデレラは懊悩していた。きっかけは、冬にはよく、『病気の悪魔』がこの学院に呪いをかけてくると言う話をきいたからだ。人々は一口に悪魔とくくっているが、実際のところは、実体をもち人を物理的に害する悪魔、半霊体で遠隔的に呪いをまき散ららしてくる悪魔、そもそも正体不明の悪魔など、様々な種類の悪魔がいる。
呪いをかけ生気を乱し、発熱や悪寒や体を痛みを多数の生徒に強いる、『病気の悪魔』。実体を見た者はおらず正体は不明だが、太古から存在しており国中に呪いをまき散らす大悪魔と言われている。悪魔祓いが様々な結界魔術を試しているが、悪魔は狡猾にすり抜けてくるらしい
(いや、ぜったい感染症よねそれ、インフルエンザみたいな)
この世界にウィルスという概念は、まだない。魔術が発展している弊害で、医療の発達が遅れているのだ。そこで、シンデレラは一計を案じることにした
☆☆☆
(また、ガラの悪い恰好をしている連中がふえてる......)
シンデレラの同級生で、最近はかませ犬と突っ込み役になりつつある少女、デボラはため息をついた最近、鼻から首までかけて黒い布を巻きつけた生徒が急増しているのだ強盗が顔を隠すようで、なんだか凄く不良っぽい。この格式ある学園に似つかわしくない格好である。
この様な装備品が流行するのは予想外だったのだろう。校則で禁止されてはいない。しかし、低学年の学年代表として学院にふさわしい恰好をするよう注意するべきだと思った回廊を歩く、ガラの悪いマスクをつけた女生徒2組に話しかける。
「ねえ、あなた達。なんでそんな恰好をしているのかしら、この学院にふさわしいとは思わないんだけど」
「あ、デボラ様」
「ご存じないんですか?この格好はですね」
「シンデレラさんからのお達しだー!!」
会話に突然、一人の男が割り込んできた
彼はシンデレラの熱心な取り巻きで、「取り巻きの鏡」と異名がついている人物だ
「どういうこと?」
「シンデレラさんは、病気の悪魔を撲滅させる気なんだー!」
そう、シンデレラは、自分の友人達にお願いをしていた。「理由は明かせないが、自分は病気の悪魔の呪いついて詳しく知っている
。だから呪いを防ぎ、病気の悪魔を撲滅するために協力してくれ」と。そして「悪魔の呪い」の対抗措置として手洗いうがいと、マスクの着用を広めようとした。ちなみにマスクが前世でよく使っていたものと違い、黒のフェイスネック型なのは彼女はなりの気遣いだ
耳が痛くなく、呼吸もしやすい
黒色なら男女問わず装着できる
合理的だ
ただ、見た目が凄く悪っぽくなることを除けば、だが
「シンデレラさんは、病気の悪魔の呪いへの対策を知っている!それが、きれいな水で、手と喉を清め、仕上げにこの黒布を装備することだー!」
取り巻きの鏡の言葉に、女生徒達もうんうんとうなずいている。
「いやいや、ちょっとまって!?病気の悪魔の呪いは、過去数千年もの間、誰も有効な対応策を発見できなかったのよ?なんで一生徒であるシンデレラがそんなこと知っているのよ!」
「シンデレラさんが魔界出身の悪魔だからだー!自分以外の悪魔が獲物に手を出すのが許せないんだー!」
「んな!?」
デボラは絶句した。そんなわけないだろうと。
事実、当たっている。そんなわけがない。
そんなわけがないのだが、取り巻きの鏡が自信満々に断言していることと、入学後以降、様々な伝説を作っているシンデレラの実績が、妙な説得力を醸し出していた。
「そして事実!今年も病気の悪魔の呪いの被害者が出始めているが、シンデレラさんの対策を取り入れたものは誰も呪いを受けていなーい!シンデレラ軍団に入れば、悪魔の加護を得られるのだー!」
「いや、シンデレラ軍団ってなによ!?」
ツッコミが追いつかない
しかし、事実効果は出ているらしい
なら、頭ごなしに否定するわけにもいかない
デボラはこれでも宰相の娘
基本的には優秀で合理的なのだ
ちょっと間が悪いだけで
結論は一旦保留し、取り巻きの鏡の言う『シンデレラ軍団』も呪いにかかるようなら、改めて糾弾しよう。結局、デボラはそう判断したのだった。




