21. 芸術の授業(表)
シンデレラが入学して1月あまりが過ぎた。入学後、3日たたぬうちに数々の伝説をつくり、次は何をやるのだろうと噂になった彼女だが、その後は大きな事件を起こすこともなく大人しくしている。少なくとも今のところは。
授業は真面目にうけている。舎弟らしき不良達と一緒にいることはあるが、素行不良ということもない。むしろ不良達は、シンデレラが歩く道にゴミひとつ落ちない様に自主的に掃除を行ない、主たるシンデレラの前で酔うなど出来ないと酒をやめ、失礼な格好をしない様に身だしなみを整えるなど、一見すると模範的な生徒となっている。しかし、それらが逆に恐ろしい。悪魔は、一度油断させてから奈落に落とすのだ。もうすぐ何かが起こるぞと、生徒達の中では噂になっていた。
⭐︎⭐︎⭐︎
「それでは、今回の芸術の授業をはじめます。課題は、『絵にメッセージをこめる』です。テーマは自由、各々の教養や技術を活かして、素晴らしい作品を作って下さい。特に良い作品は表彰されて、しばらくの間、国立美術館に展示します。それと、あとでどんなメッセージだったかをいちいち問うようなことはしません。絵が訴えかけてくるような作品を期待しています。」
教師の説明を聞いてシンデレラは思った
(みんな仲良しな、平和な世界をテーマにしましょう)
牧師も、王様も、貴族も、衛兵も、平民も、みんな仲良くピクニックしている絵を描いていく。あ、そうだ、神様がこっそり見守ってくれている感じを出すために、遠くに教会も描いておこう
(あとは、そうね……ちょっとコミカルな感じにしたいから、川に落ちそうになっている構図もいれましょう)
つまらない散歩ではない羽目を外して、川に落ちそうな人が出るくらい楽しいピクニック感を出そう
(あとは、きらきら暖色の光で温かくて明るい感じにして......ああでも、そうしたら、皆まぶしすぎるかしら)
暖色で暖かな光を表願してみるが、どうもしっくりこない。何度か重ねる塗りをして、やっといい感じに仕上がった。初夏のピクニックをイメージできるなかなかの出来だと自画自賛する。そして、小川から乱反射する光が眩しくないように配慮もして、作中人物たちには黒いサングラスもかけてあげた。シンデレラはちょっと変わった思考の持ち主だが、優しい女なのだ。
(よし、なかなかうまくかけたんじゃないかしら。みんな、この絵を見て楽しい気分になってくれるといいなぁ)
後日、シンデレラの作品は最優秀賞に選ばれた
「仲良しと平和をテーマに書いたメッセージが伝わってよかった」と喜ぶシンデレラだったが、実際のところは誤ったメッセージが伝わるような絵画になっていた。さらにそれが国立美術館に展示されたことで、周囲は今まで以上に彼女に対して恐れの視線を向けるのだった。また、これもきっかけに「シンデレラは恐ろしい女」という噂は学園外にも広がっていくのだった。




