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20. 入学3日目

新学期が始まって3日目、ヒューマン国学院5学年生代表の少女、デボラは焦っていた。今まで、低学年の権力のトップはぶっちぎりで自分だったのに、その牙城が揺らいでいる....どころか崩れかかっているからだ。その原因は、シンデレラ、メタル、デトロイト。入学式で大暴れし、入学初日に不良生徒達全員を舎弟にしてしまったと言う、規格外の少女だ。


きっかけは新学期二日目、つまり昨日のことだ。その日デボラは不良を大勢引き連れ歩いているシンデレラに、大衆の前で意を決して話しかけていた。「学院はどう?中には馴染めずに、ノイローゼになって自傷行為に走るような子もいるから、せいぜい気をつけることね」という風に。早い話が、彼女の底を知るために挑発したのだ。


取り巻きの不良達は、デボラの挑発に、おい、なんてこと言うんだという表情をしていた。なんなら、「シンデレラさんの貴族殺しが見れるかもしれねぇぞ」なんて言う取り巻きもいた。しかし、当のシンデレラはというと、取り巻きを諫めてお礼を言ってきた。ただし、凄まじく悪そうな笑顔で。


その時、デボラの精神監査能力では悪意が感知できなかった。感知したのは高揚の感情だった。ありえない、あんな嫌味を言われた後に、絶対に復讐を企んでそうな悪い顔で笑いかけてきたのに。考えられる可能性は二つくらいしかない、よほど魔術が巧みで隠匿したか、そもそも復讐を悪とすら感じず報復行為に高揚するような歪な精神構造をしているのかだ。


あっけに取られているデボラに「これからも仲良くして下さい」と告げシンデレラは去っていった。その後で先ほどシンデレラに諫められていた取り巻きは、「相手にされずによかったな」なんてこっそり煽り返してきた。そこで、格付けが済んだと大衆は認知したらしい。


すでに学園の勢力図は、【シンデレラ>デボラ】ではないかと噂になっているのだ。


しかしデボラは逆転を狙っていた。彼女の闘志は萎えてはいなかった。今までの人生、親兄弟以外に負けたことはないのだ、簡単に諦めるものかデボラは今日、シンデレラに因縁をつけて決闘を申し込む予定だった。貴族の子女間での揉め事は泥沼化することが多く不毛だ、その予防策として学院内では両者の合意があった場合に限り決闘が認められているのだ。呪言のような魔術を使うシンデレラは恐るべき相手だ。だが、精神系の魔術が得意な自分はある程度レジストができる。そうなれば、あとは腕力勝負、流石に12歳と15歳の体格差なら自分に分がある勝負だろう。戦って勝てればよし、戦いを避けられても、シンデレラが逃げたと噂になるのでよし。


「シンデレラさん、ちょっとお話いいかしら」

昼休み、中庭でシンデレラに話しかけた。周囲がざわつき、ギャラリーができる

「良いですよ……と、すみません、少し待って下さい。そちらの貴方、大丈夫?」


シンデレラの視線の先、ギャラリーの生徒のうちの一人の大男は明らかに様子がおかしかった。デボラが精神感知の魔力を使ってみると、強いストレス、攻撃性、そしておそらく違法薬物な何かの摂取により半分正気を失い興奮状態になってあることがみてとれた。大方、上級学年の授業についていけずに、ストレスから最近帝都に出回っていると言う違法薬物に手を出したと言うところだろう。そこまではまあいい、デボラは競争に負けた者が落ちぶれようとも自業自得と考えるような女だった。しかし、強い攻撃性が気になった。


と、そこで男は懐からナイフを取り出した。視線の先にはシンデレラと自分。もし、半分正気を失った大男に襲われでもたら身を守る術はない。精神感知系の魔力は、物理的な暴力には無力なのだ。


「ひっ……」


デボラの方から恐怖の余り悲鳴が漏れそうになった。と、そこで隣の少女が、稲妻のような速度で動いた!大男に接近してナイフを持った右手首をつかんでいた。瞬きひとつの間にだ。そして言った。


「ああ、いけない。いけないわ。そんな、命をドブに捨てるような真似……」

「う、おお、ああぁ…うぐうぅぅぅ」


大男は手を動かそうとするが、万力のような力て握りられてられているのか、ぴくりとも動かない。大男が泣き始たのは、手首砕かんばかりに強く握られた痛みからか、それとも恐怖からか。デボラの精神感知では男は大きなショックを受けた結果、正気を取り戻し、ただ目の前少女を恐れているのがみてとれた。先ほどシンデレラの言った「命をドブに捨てるような真似」とは、「自分に歯向かうものに明日はない」と言う意味で間違いないだろう。


シンデレラは続ける。


「ちっぽけなナイフなんかに頼らないで。これからきっと、この学院ではきっと沢山の楽しいことが起こるわ。生きて、それを楽しみに待ちましょう。ね?」


大衆を扇動し暴徒化させ、不良を傘下に置いた彼女の言う「楽しいこと」とはなんだろう。それはまるで、必ず実現する不吉な予言の様だった。デボラは思った。こんな化け物と決闘は無理だと。そして彼女は今、凶悪な笑顔の奥底で、一体何を考えているのだろうかと。







一方でその時シンデレラは


(はー、自傷行為を思いとどまってくれてよかったわ。そんな命を粗末にするようなまねしちゃダメダメ。生きていれば楽しいこともあるもの。私だって、アーノルドさんとか、その舎弟さん達とかお友達もできたしね。それにしてもデボラさんって優しい人ねー。昨日も話しかけてくれたし、この男の人みたいに、気をやまない様にと忠告もしてくれたし。)


なんてことを考えていたのだが、それを知る者は彼女以外にはいなかった

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