19.入学初日(放課後)
入学初日の放課後、シンデレラは寄宿舎のはずれで1人ゴミ拾いを行っていた。前世で「人に見えないところで善行を積むのはいいことだ」的な説法を和尚さんなり神父さんから聞いて感銘を受けて以来、人の見えないところで徳を積もうとするのが長年の習慣になっているのだ
(今日は皆と仲良くなれず残念だったなー)
ちょっと、がっかりしながらも思う。
進んで人に見せるものではないけれど、こうやって、コツコツいいことして徳を積んでいれば、いつか運が巡ってきたりするよね。あと、我ながら浅ましいかもしれないけれど、漫画とかだと誰かが偶然見てくれてたりするのよね、と。
(それにしても流石は帝国学院ね。何か一つくらい拾おうと、ちょっと寄宿舎の外れまできたのに、全然ゴミが落ちてない。気になるのは......あの倒木だけね)
視線の先には、巨大な古木が倒れていた。先日あった嵐で折れたのだろう。通行の邪魔にならないように、廃棄場所まで運んでおいてあげようと思った。寄宿舎の東の外れのうらにあるんだっけ、新入生だからいまいち自信がないなーとシンデレラが思った、ちょうどその時である
「探したぜおい、お前、シンデレラだな」
「こんなところで何してんだー」
二人組の男から、声をかけられた。どうやら何か用事があるらしい笑顔を浮かべているし、もしかして、お友達になろうとしてくれているのだろうか。本日、他の生徒から初めて声をかけられたシンデレラは喜んで笑顔を浮かべながら答えた。他人からみたらとても恐ろしく見える笑顔を。
「ちょっと廃棄場へ行こうと思っていたの」
「お、おうそうか……」
「何の用事かしらねぇが……案内してやるよ」
「嬉しいわ、ちょうど用がある所だったから。ちょっとだけまってね」
なんて親切な人達に出会えたんだろうかとシンデレラは感動した。やはり、いいことしようとすると運がむいてくるものだ。
そして彼女は倒木に手をかける
(前世だったらこんなの絶対運べなかったけれど、流石は異世界よね。力を込めれば……っと)
凄まじい質量を持つはずの倒木が持ち上がる。シンデレラの持つ膨大な魔力により身体能力が大幅に強化されているのだ。ちなみに彼女は己のもつ強大な力に無自覚である。父親や教師が彼女の持つ強大な魔力を恐れて、君の魔力の才能は平凡だと話して魔力の実践訓練を行わせなかったからだ。貴族の女が魔力を使う機会はほぼないとも説明し、シンデレラ自身も平和主義者で、強くなって戦いたいとか願望はないし、まああいやと納得していた。
参考までに言うと、一般的な騎士の身体能力強化は、近代オリンピアンくらいまでの強化がせいぜいであり、巨木を軽々と持ち上げることなどはできない。もちろんそれでも十分すごいのだが。ちなみに騎士団長でも室伏広治には勝てない。
こうして、あっけに取られる2人組とともに、シンデレラは廃棄場へ歩き始めた
巨大な倒木をかかえたまま
⭐︎⭐︎⭐︎
廃棄場には数人の不良生徒がたむろしていた。寄宿舎のはずれで人目がなく、隠れて悪事を働くのに都合がいいのだ。
ただまあ、不良といってもここはエリートが集まる帝国学院、単位を落とさないように授業はきちんと受けるし素行もそこまで悪くはない。悪事といっても、中だるみして絶賛モラトリアム中の生徒が、むろしたり、ちょっと隠れて酒を飲んだり、いきったり、その程度のものだ。そして、そんな不良グループのリーダー、アーノルドは絶賛いきり中だった。
「ほー俺がサボった行事で、新入生がそんなことをね。調子こいてんな、そのシンデレラってガキ。やっぱり一度しめてやらんとな」
「いや、アーノルドさんアイツマジでやばいっすよ」
「絶対関わらない方がいいですって」
「先日の嵐も、きっとシンデレラさんが呼んだんですから!」
「ばかやろう、おれを誰だと思ってんだ。この学院の番長だぞ。」
舎弟がいろいろ言ってくるがアーノルドは取り合わない。噂が本当なら、そのシンデレラという女はいずれ誰が頭を張るかで敵となるかもしれない相手だ。また、番長として舎弟たちに弱みを見せるわけにはいかないのだ。飲酒で気が大きくなっていた彼は、廃棄場所にあった角材をつかみ、なおもいきり続ける
「実はな、そのシンデレラってやつをここへ連れて来る様に、一緒に入学式サボってた奴らにもう命令しているのよ。そろそろ来る頃だぜ.。もし俺の前でも調子こくな様なら、こいつでぶんなぐって…って、へ?」
アーノルドの視線の先で、木が動いていた。いや、木が動くわけがない、根本を見ると脚が生えていた。いや、違う一人の少女が、腕を幹に回しても半分も回らないような木を抱えて歩いているのだ……それが、だんだんと……こちらへ向かってくる!
(あ、ありえねぇ、なんて怪力だ。てか、なんであんなものもってこっちに向かってきてんだ)
「アーノルドさん、コイツですよ」
「やばいですって、さっきの会話きかれたんじゃ」
「シンデレラさんのカチコミだー!」
部下達が囁く
アーノルドは硬直して動けない
手から角材が落ちた
そこで、こちらを見下ろす少女と目があった。
少女は言った。
「ごきげんよう。私はシンデレラ。皆さん集まっていてなんだか楽しそうね。私もね、ちょうどここに用事があるところだったの。」
「あ…はい。ちなみに、用事ってなんなんでしょう」
「ゴミを処分しようとしていたの、だから、ちょうどよかったわ」
アーノルドは直感した。ゴミとは、自分達のことだろう。事実、ごみ呼ばわりされても仕方ないだけのの戦力差がある。敵対するなんてとんでもない。角材と大木で打ち合って勝負になどなるはずがないのだ。今回自分は、そんな相手を呼び出してしまった。そしてさっきの会話も聞かれていただろう。ここで対応を間違うと、きっと[処分]される
敵対の意思はないことを、いや、軍門に降ることを早急に伝えなければ
「お、お忙しいところ及びだしして、申し訳ありませんでしたー!シンデレラさん、どうか俺たちを舎弟にしてください!」
こうして、入学1日目で学院の不良グループは全員、シンデレラの傘下となったのだった。
初日に不良達を締めちゃうのは、漫画、エンジェル伝説のオマージュです。展開は変えているのでオマージュということでご勘弁を。




