10.魔力判定 (裏)
デトロイト家の警備主任兼魔術講師であるガノンは、青い顔をして雇用主であるフレディに報告を上げていた。
「それで、シンデレラが魔力を流すと、植物が朽ちるように枯れていったというのか……」
「はい、魔力の性質にはその人物の魂の本質が影響します。情熱的なら植物は熱をもち、優しい人物なら栄養を与えて急成長させるといった具合に。しかし、植物を枯れさせる魔力などは見たことがありません。申し上げにくいのですが、娘様の魂の本質は……」
「死と荒廃を好む……と考えるのが妥当か」
「それに近いものと思います。また、警備主任として今だから申し上げますが、お嬢様が一才の頃、暗殺者の憑依した毒蟲を半殺しにしていた件……あれは本来ありえないことです。」
ちなみに、シンデレラの魂の本質は優しさで、判定時は植物を急成長させる魔力が出ていた。しかし、魔力が強すぎた結果、過剰成長により植物の生命力を暴走させてダメージを与えた結果、枯らしてしまったのだが、それに気づくものはこの場にはいなかった。
なお、この件でガノンを責めるのは少々酷である。「治癒魔力が強すぎた結果植物を枯らす」など今代の聖女にも不可能な芸当なのだから。そう、シンデレラは転生者のメリットを活かして魔力の伸びやすい幼少期に鍛錬をした結果、史上最強クラスの魔力を保有するまでになっていたのである。
「大変申し上げにくいのですが……実は、薔薇の悪魔に魂を封印された後、堕とされて身体を乗っ取っられた少女の伝承があります。その悪魔付き少女の魔力判定は、腐敗……だったそうです」
フレディは啞然とした。まさか本当に娘に悪魔が憑いていたとは。いや、しかし呆けている場合じゃない!本来の娘の魂を救わなくては
「シンデレラとほぼ同じではないか!ああ、なんということだ……ガノンよ、お前にだけは言うがな。私はあの子供、いや、奴が産まれたときから怪しいと思っていたのだ……ところで先程、魂を封印されてと言っていたが娘の魂を解放してやる方法はないのか?」
「伝承によると、封印の継続に悪魔は力を消費し続ける。そして、枯渇すれば封印はとけ悪魔は地獄に帰らねばならぬそうです。しかし一方で、混沌と暴虐により憎悪が生まれると力を増していき、一定量を超えると完全体になり物理的に人を襲い始めるようです。」
「逆に力を弱める方法はないのか?悪魔が国を滅ぼす可能性があるならば、私は貴族の責務として実の娘を手にかけることも考えねばならぬ…」
「住まう地域に幸福の気が満ちると、悪魔の力は弱まるそうです。そうですね……少しでも良い治世をして、慈善事業に力をいれるなどをされるのが有効と思います。ちなみに、娘様を殺めて解決しようとするのは無駄です、その場合、こういった憑依タイプの悪魔は新しい宿主を見つけるだけですから。そして、おそらく彼女…いや奴は強力な魔力を秘めており、積極的な訓練でコントロールを学ぶと危険性が増す恐れがあります。ひとまず、魔術の練習は理由をつけて練習させないようにして、あとは目の届くところで監視するのがよいでしょう。」
「そうだな、悪魔の正体に気づいたことは、当面は我々だけの秘密にしておいた方がよいか。こちらが察知したとバレると悪魔がどう動くかもわからん。ひとまずばその方針で頼む。私はこの地域に幸福が満ちるよう、良き治世と慈善事業を頑張ってみよう。」
こうしてシンデレラの預かり知らぬところで話はすすんでいった。後日、シンデレラの魔力訓練は中止となり、デトロイト領の治世政策は、領民たちにとってより良いものへと見直されることとなった。
ちなみに後世にてフレディ・メタル・デトロイトは『慈善事業に力を入れて民に平穏と安寧をもたらした名君』として評価されるのだが、それはまた別の話である。




