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豆話集  作者: 白楼雪


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10/11

天秤の受け皿(豆L:中編)

私の言葉に友人は憂いも憤りも無く、無垢な疑問の表情を浮かべていた。

「何も知らないと言うが、君は私の好きな菓子も、苦手な生き物の事も知っているじゃないか。何ならばスリーサイズでも教えようか?」

友人の無垢な表情は、確かに私の知っている僅かな友人の一面である。

友人は聡明だが、時折幼い子供の様な面も持ち合わせているのだ。

「いや、そうだけどそうじゃなくて。お前は僕に無い思考を持ち合わせているだろう?それは非凡なものだ。そして僕は凡人だ」

私の言葉に友人は何も口を挟まず、聞き続けていた。

「非凡と平凡には越えられない溝がある。でも、それじゃ駄目なんだ。少しでも近くに在りたい。それを成すために、僕はお前を知りたいんだ」

告げた私の言葉は、やはり友人の表情を僅かに曇らせた。

「それは、興味か?」

訝しげに瞳を細めた友人に、私は句を足す。


「違う!君を友人として親愛しているから、知りたいと思っている。興味が僅かにも無いとは言わないが、これは親愛からの願いだ」

私は嘘偽りの無い答えを吐いた。情があるから、願い望むのだ。

愛するものを知りたいと願う欲は、止めどないものである。

だが、友の声は何処か冷めて聞こえた。

「親愛ねえ。愛。それって本当に愛なのかな?」

怒りではない。けれど遠い距離を感じる友人の声と雰囲気に、私は呑まれないよう堪える。

「君は、恋と愛の違いってなんだと思う?」

唐突な恋愛の問いに、今度は私が無垢な疑問を浮かべてしまう。

恋と愛の違い?愛はまだ話の流れとして分かるが、恋など無関係な問いだろう。

「恋は、浮かれた思考になってしまうものだな。判断力が鈍るものだ」

唸り答える私の二の句を、友人は静かに待つ。

「愛は理解したい気持ちが芽生え、近くに在りたいと願うものか?」

私なりに悩み答えた言葉に、友人は酷い呆れの表情を浮かべていた。

「なんだ、言いたい事があるなら言え。悪かったな、僕みたいな凡人にはこれくらいしか言えないんだよ」

矢継ぎ早に私が言葉を発すると、友人は紅茶を一口味わい言葉を返す。

「私は恋と愛の違いを問うたのだが、それはどちらも恋だろう」

溜め息一つ溢しそうな友人に、私は静かに答えを待った。

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