表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

plume9  信じる心

正直申しますと眠い。



「夏野先輩は、本当の能力(スキル)があるのに『聖なる大樹(ユグドラシル)』によってそれを制御されています」

「……率直に申しますと、我々もその能力は不得要領(ふとくようりょう)です」

 ニコニコしている(つぐみ)と、無表情な隼斗(はやと)の唐沢兄弟も能力者である。

 だが、他の能力者とは違い、『守護者(ガーディアン)』という役割を持っていた。

「それは……警察さんみたいなものなのでしょうか?」

 鶉は言い終わると、紅茶の入ったティーカップを2人に渡す。

「ありがとうございます」 「……どうも」

 一口飲んだあと、その双子は語り始めた。

守護者(ぼくら)は一応人間ですが、能力者達(みなさん)が聖なる大樹を自我のために翻弄したり、能力者同士が争ったりしないよう、監視を務めています」

「……今は『翼在る者(ウインガ-)』と『翼無き者(ウインドレス)』に分かれてしまい、僕らも一苦労です」

 そういえば……綾鷹さんも、そんなこと言ってた気がする……。でも、あの髪と目の色は……。

 鶉は、つばめの方に視線を持っていったが、すぐに双子へ目を戻した。

 それを見た鶫は、それを見計らったかのように言った。


「あぁ、そういえば、鶉先輩は、あの仮面の人に能力者のこと、ほぼお聞きしましたよね?」


「!」

 つばめが突然目を見開いた。が、特に何も言わず、口をきつく歪ませるだけだった。

「どうしたんですか、春咲さん」

「いや……」

 その様子を見たあとで、隼斗が口を開く。

「……聖なる大樹を守るべき者達が、今やその対象を利用しようとしている。それが、『翼無き者』達です」

「ま、そいつらは俺が小学生の時くらいから出てきてたな……その意図は全然わからねーけど」

 ベッドに座っている優夜が言う。

「ま、ぼくらはどちらかといえば翼在る者より(・・)ですし、とりあえず、苺花(いちか)・T(テスタロッサ)・スワン・シャルロッテはその能力を先輩に託したわけですが……」


 苺花ちゃん……。


 大丈夫。生きていれば、自分の道を行くしかない時が必ず来る……お母さんが言ってた。

 理由が見つかった。これまでの自分を変える、新たな理由が。

 

 貴方こそが、その理由。



「聖なる大樹のことも、お聞き致しました」

「そうですか……。でも、だからこそ彼女は鶉先輩にその能力を託しました。貴方なら、その能力の意味を分かってくれると……鐘は鳴らさなければ鐘ではない、歌は歌わなければ歌ではない……愛もまた、人に与えるまでは愛ではありません」


 愛することは、許すことにも似ている……。

 鶉は決心した。


「鶫君、優兄、私は……並の人間に過ぎないけど……一生懸命頑張るよ。必要なことは勇気じゃない、覚悟は、出来ています……そして、翼在る者と翼無き者の争いを、きっと止めてみせるよ……」

 鶉の真っ直ぐな目を見て、周りの能力者達は、多々、色んな事を思ったが、彼女を見守る目は、とても優しく思えた。

「そうですか、それを聞いて安心しました……」

 ニコッと笑う鶫に、

「……僕らも貴方をお守り致します。だから……」

 相変わらず無表情な隼斗。


「「貴方を見てくれている人が、思ったよりも近くにたくさんいることを、忘れないでください」」


「え……」

「それでは僕らはこれで失礼致します。それでは、また明日学校でお会い致しましょう」

「……お邪魔しました」

 2人は出て行った。そのあとを、何故か優夜は追いかけていった。

 部屋に残ったのは、鶉とつばめ。つばめはまだ、下を向いている。

「つば……」


「綾鷹は……私の兄だ」


「………」

「今は対立関係にいるにあたり、、まだそのわけは話せないし、その内容も暗闇の中の一筋にも満たない光……」

「つばめちゃん……」

「だが、いつかきっと話そう。その対立関係は、きっとなくなると思う……。だから、鶉、私は貴方を信じよう」

 全ての始まりは、幸せに気づくこと。

「ありがとうございます」

 そしてゴールも、幸せに気づくこと。

「つばめちゃんもいるから、守りたい今があります」

 幸せなんて、感じた者勝ち。

「何があっても、助けます。だって私達、友達です」

「!」

 つばめの顔は、再度真っ赤になったのであった。










「あぁ、先程の言葉は忠告です」

「貴方を見てくれている人が……って奴か?」

「はい。翼無き者達が言う、“主”とか言う輩はきっと鶉先輩を狙いますね、確実に」

「……それでも……」


「必ず、守ってください。僕らは、監視し()ているだけですから」


「…………」

 双子は歩き始め、姿は見えなくなっていった。

「ったりめーだ……」



 優夜は、オレンジ色の空を仰いだ。






良い国作ろう、ジンキスカン♪

鳴くよ、うぐいすジンギスカン♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ