plume8 集結
レアなチーズケーキとベイクドってるチーズケーキが食べたいです。1ホール。
「あれ、優兄ー!」
「お、鶉」
「えへへ、委員会凄い速く終わりまして……。先に帰ろうと思ったのですが……優兄、部活はどうされたのですか?」
「サボり」
「えぇ?! 優兄、何してるんですか!」
「あぁ、えっと、つばめが心配だったんだよー」
「あぁ! そういうことだったんですね! 私も心配だったので、委員会終わったら早く帰ろうと思ったのですが、なんと、今日は早く閉館させる日だったのですよ! 丁度良かったです」
「へぇー……。あ、そーいや、あのー唐沢? あいつ、昼間とは違って、部活に来た時は何か仏頂面でずっと黙ってたぜ」
「そうなんですか? んー、きっと、優兄が部活サボるほどの精神だったからですよー」
「や、それは関係ないと……」
「あ、そういえば、私と同じ委員会活動の後輩の唐沢君が、なんとその唐沢君の双子の弟だったんですよ!」
「鶉、理解はしたけどややこしい」
「じゃぁ、これからは2人をそれぞれお名前でお呼び致しますね!」
「…………」
烏丸家に、着いた。
「春咲さーん、お体の調子は、如何ですか?」
優夜の部屋で休養中のつばめをお見舞いに来た鶉、そしてその部屋の主が部屋のドアを開けると、つばめはまさに着替え途中だった。
うわぁ……なんて大きく、そして素敵な…。
鶉はしばし、つばめを見つめる。
「…………」
無言そして無表情で大きく分厚い辞書を片手で持ち上げるつばめ。
「待って待ってつばめ! 今出てくから……ぁああああああ!!!」
優夜の叫び声に、本日3回目のケーキ作りをしていた烏丸家の母は、顔を上げた。
「あぁ、鶉。お見舞いに来てくれたんだね、ありがとう」
「あ、はい! 春咲さん、元気になって良かったです!」
「あぁ……その……名前で、つばめで構わないよ」
「えっと……じゃぁ、つばめちゃん、元気になって良かったです!」
「! ……あ、あぁ、ありがとう」
そう呼ばれたのが初めてだからだろうか、つばめは顔が少々真っ赤になった。
そして、そこへケーキを持った優夜が登場する。
「わぁ、優夜ママのお手製ケーキです!」
「はい今日は春咲様の大好きなチョコレートケーキですこれで機嫌を直してください春咲様」
何気棒読みの優夜。
「ところで鶉」
「無視かよっ!」
「冗談だよ、優夜。少々気色悪かったがな、刎頸の交わり、私とお前の仲だろう?」
「お前な……」
そんな2人のやりとりを見ていた鶉が、ふと言った。
「そういえばお二人は結構仲がよろしいのですねぇ、どういった関係なのですか?」
「幼なじみ」「師弟関係」
「………」
「………どちらですか?」
「や、まぁ、師弟関係じゃないって言ったら嘘だけどさ、そういうの何でこういうところで言うのかなぁ!?」
優夜は机をどんどんと叩く。
「あの……つばめちゃん、どっちが、どうなのですか……? ……あれ?」
「私が師で優夜が馬鹿弟子だ」
「うぉいっ!!」
「優夜の能力はあまり戦闘には向いていないから、私が幼少の頃から色々伝授したのだ」
「わぁー、凄いね、優兄!」
鶉は優夜の手を取る。
「あーいやぁ……」
「そうだ、鶉。……昨日のこと……いや、まず、能力者について教えよう」
今からまさにチョコレートケーキを頬張らんとするつばめが言った。
「あ、はい!」
とりあえず一切れ食べ終わったつばめは、もう一切れ取りながら、口を開き始めた。
「いや……やはりそういうことは私よりもあの2人の方に聞くのが良いだろう……そろそろだ」
「?」
ピンポーン。
烏丸家のインターホンが鳴る音と、玄関に行く足音、そして優夜を呼ぶ母の声が聞こえた。
優夜が下へ下りて数十秒後、階段に3つの足音が響き、部屋に入ってきたのは……
「あ、こ、こんにちは! 鶉先輩!」
「………どうも」
「あ、え?」
入ってきたのは、お昼と放課後に出会った、元気で明るい兄と、無愛想な弟の、後輩であり、双子の唐沢兄弟であった。
「痛ってぇ! 雛乃、お前もう少し丁寧にやれよな!」
「うるさいな。翼在る者の攻撃まともに食らってくるあんたが悪いのよ、未鶴」
某所。
そこには3つの翼無き者達の姿があった。
一つは未鶴、もう一つは綾鷹、そして、最後の一つは、名を雛乃といった。
「ちょっとぉー、綾鷹からも何か言いなさいよぉー。全く、私の雷で2人とも助かったんだからね!」
「未鶴、汝の罪死に当たる。……これでよいか?」
「オッケーよ!」
「おい!」
「皆様、お忙しいところ失礼致します」
そこへもう一つ影が加わる。
長身で、スーツを着こなしているというのは分かるが、暗くてよく顔が分からない。
ただ、声は少々低めである。
「主様から言付けです。お聞きになりますか?」
「えぇ」
「ったりめぇよぉ!」
「惟だ仁者のみ宜しく高位に在るべし。其が我が主、当然だ」
3人の応答を聞いた後、その人物は静かに口を紡ぐ。
「はい、まず、雛乃様だけに、特別任務がございます……」
日はだんだんと沈んでいく。そう、夜の戸張が、降りてくるのであった。
でも甘さ控えめなチョコレートケーキも捨てがたいです。