plume7 蒼と碧
バトってます。
「翼在る者」
その少女はそう言った。
“「俺は翼在る者の烏丸優夜、能力は『時の追想!」”
先刻の優夜の言葉。
お仲間……さん……?
腰まで伸びた長く青い髪の上を水がはね、鶉は、綺麗、そう思った。
「つばめ……」
優夜が目を開ける。すると、つばめと呼ばれた少女はこちらに歩み寄り、優夜の頬を撫でた。
「……なんて様だ……。お前のやんごとなき命などどうでも良いが……聖なる大樹の少女よ、名を何という?」
つばめは視線を鶉に向ける。
「あ、えっと……夏野鶉です!」
「鶉……私は、貴方を命に代えても守ろう。それが私の役目、いたづらごとかもしれないが、さるべき事を致そう」
無表情な少女だが、瞳の光は衰えていなかった。
ゆっくりと立ち上がったつばめは、
「アクアサードニクス!!」
翼無き者達に、何千という水矢を、有象無象に撃ち放った。
「……おっとぉ!!」
未鶴はそれを易々と回避したが、地面に突き刺さったり途中で消えた水矢は、またとなく再生し、対象者を追いかける。
「はっ! ストーカーのつもりかよ……? ……っぐ……!………地獄の隆起!!」
未鶴の腕を直撃した水矢を振り払い、下の限りなく広がる有効フィールドを、未鶴は大いに使う。
自身の下の地面の揺れを察知したつばめは、飛躍によりそれを回避するが、着地した地面でもその揺れが生じた。
「なに!? ……うわぁぁぁぁぁ!!!」
「は、春咲さん!」
つばめの足下の地面は盛大に崩れ、彼女に鶉の声は届かず、地面の奥へと吸い込まれる。
「だーから言ったろぉ? ここは俺の方が有利だって」
未鶴はニィっと笑うと、鶉の方へ視線を向け……ようとしたが、
「……遅いぞ……愚者が」
未鶴が後ろを振り向くと同時に、つばめの足刀が飛ぶ。
それは、未鶴の脇腹を直撃した。
「……かはっ?!! ……っぐ……! ……い、今の蹴り……どこかで……なっ……は、速い……?!」
未鶴は地面に跪き、その前につばめが立ちはだかる。
「わき腹3本……最後だな……アクアサードニ……っ?!」
手が動かない。右手の方を見ると、植物のツルが巻き付いていた。
「いうかいなし」
つばめの身体は、巨大植物によって完全に拘束されていた。
腕にはツタが何重と絡まり、身動きが取れない。
「貴様の能力など、我にとっては養分としか成らん。大人しく聖なる大樹を渡すのが、万全の対策と見えるが」
それを聞いたつばめの無表情な顔に、ちょっとした笑みが作られた。
「どうした、あまりの不条理さにネジが飛んだか」
綾鷹の問いに、つばめの顔はさらに笑みが大きくなる。
「……そういえば、まだ私の能力を教えていなかったな」
「……? 貴様の能力は……」
綾鷹が言いかけると、つばめは、まだ動く手をぴくりと動かし、手を広げた。
右手には水、左手には、炎……。
「私の能力は『水焔華』! ……貴様の能力の栄養となる水と鉄槌となる炎……それを同時に使いこなすが如く!! ……フレイムローズクォーツ!!」
左手から大量の炎が吹きすさび、鎖の如くつばめの周りのツタに巻き付いた。全ての植物が燃え、つばめは地面に降り立つ。そして、その緑の赤は灰になる前に燃え尽き、何もなくなった。
そして次の獲物に食いつくべく、龍の如く綾鷹に襲いかかる。
「隠華」
静かに綾鷹が言うと、巨大なツル、そして大華が、彼を守るように天まで伸びる。つるは、幾度となく炎の進入を拒むが、つばめはさらに右手をかざす。
「アクアサードニクス!!」
水と炎、両方の勢いで、ツタは主を守るべき術をなくした。
それを予想してはいたのか、綾鷹は直撃を食らわずにそれを回避した。が、水がそこで再生し、綾鷹の顔をかすった。
ピシッ。
仮面にひびが入る。それはだんだんと広がり、仮面は砕け散った。
その仮面の下から現れたのは……無表情な、顔だった。
その青い髪を持つ青年は、先程からその無表情な顔だったのだろうか。
そして、つばめはもう走っていた。
「綾鷹ぁっっ!!!」
水を纏いしその拳は、宙を斬った。その行く先を知っているかのように、さらに、綾鷹も体術で応戦するが、2人の体術は、似ていた。
「もしかして、あの2人……」
鶉は2人を見つめる。
「鶉、目をそらすな」
ほぼ身体を回復した優夜は、鶉を安心させるように頭に手を置いていた。
「許さない、春咲家の敵め!!」
「…………」
2人の力量は同等に見えたが、少々つばめが押しているようにも見えた。
その時だった。
ドッシャーン!!
大きな雷音が、2人の間に落ちた。
「ぐぁぁあああぁあぁぁ!!」
悲鳴を上げたのはつばめ。腕に纏っていた水を伝い、前進を雷が通り抜ける。その際、勢いで鶉の手前まで飛ばされた。
「春咲さん! 雷……? どこから……」
綾鷹は、危機一髪のところで脱出した。
その雷は、まるでライオンのような獣の形をしており、低音で唸っている。
「雛乃か……」
綾鷹はそう呟くと、未鶴を無造作に持ち上げ、その獣の背に乗せていた。
それを見たつばめは顔を上げる。
「待て……逃げる気か……」
それを聞いた綾鷹は、とても冷たい目でこちらを見つめた。そして、口元に笑みを浮かべた。
「主からの命でな、戻れと言付けを承けたわまった。我々の目的は変わらないが、それまで聖なる大樹を、我が欲のために使うでないぞ」
そして、自身も雷獣の背に乗ると、天高く駆け上がり、どこかへ消えてしまった。
「馬鹿が……そんな戯言、あるにも……」
バサッと、つばめは倒れる。
鶉と優夜は走って駆け寄った。
雲間からは光が途絶え、雲はだんだん厚くなり、雨が、降り始めそうだった。
長引きました。
次も長引きそうで恐いです。
でも頑張ろうと祈る今この時です。
野澤が意味不です。