plume6 守りたい
「貴方達の決心が変えられないことが分かりました」
「?」
「もうそのことについては何も言いません」
「!」
鶉の目の前で、鋭利な土塊は砕かれた。
未鶴、そして綾鷹の身体は完全に停止しており、そして悟った。
が、それは時使いの能力ではなく……。
植物の呪縛から解かれた夏野鶉……?
「確かに、本当の事を言っても辛い現実は絵空事で、信じてもらえないかもしれません。どんなに謝っても許してくれなくて、償う事ができなくて、苦しくて…」
「鶉……?」
優夜が目を覚ます。
「でも、本当に大事なのは、自分が悪い事をしたと思って、償おうとする想いを生み出すことです。それが遅すぎるなんてありません!」
「………違う、主は間違ってなんかない……! 償いなんて……」
「未鶴さん! 貴方達も貴方達の主も、ただ、『考える時間』ではなく、『考える場所』が探せなかっただけです!」
「…………!」
先程のオロオロしていた少女とは違い、今の鶉は、まさに全てを支配していた。
苺花は、閉じていた目をうっすらと開くと、鶉を真っ直ぐと見つめていた。
「そして、綾鷹さん、この世に無意味なモノなんて、一つもないんです! 夢や目標は自分を裏切らない、自分が夢や目標を裏切るだけです!」
「……なにを………? ……貴様………! ……碧の幻想剣!!」
「ま、待て、綾鷹!」
鶉に向かって、碧の刃が何百と飛ぶ。
全ては鶉の目の前で砕け散った。
が、一つの刃が、砕けずに鶉に向かって飛んでくる。
「!」
さすがに予想していなかったのか。
「……み……さま……!!」
その碧の刃は、いつの間にか植物の囚われから抜け出した苺花の幼い身体を、貫いていた。
「い、苺花ちゃん……? どうして……?」
鶉の膝の上で、すでに苺花は虫の息だった。
「……鶉お姉ちゃんは、ちゃんと大切なことを……知って……いる……」
小柄な身体を赤が染める。
「だから……鶉お姉ちゃんに……『聖なる大樹』を、託します……。貴方なら……この戦いを、終わらせて……っ……! ……鶉お姉ちゃん……」
「何? 苺花ちゃん……」
「ありがとう」
苺花は、微笑んだ。
そして、一つの光になったかと思うと、それははじけて光の粒になり、鶉を包んだ。
“世界を調律せよ”
それは誰の声だったのか、分からない……。
鶉は目を開けると、苺花の姿は、なかった。
優夜が視界に入る。
「優兄!」
鶉は優夜の元へ行くと、その額へ手を乗せた。すると、暖かな光が、優夜を包み込んだ。
「鶉…………苺花は……」
「簡単に手に入るモノに、人は命をかけない……。苺花ちゃんは、私を守ってくれた……だから今度は、私が苺花ちゃんからの力を守るの」
「すまない……よりによって、お前をここまで巻き込んで……」
「優兄、私は、大丈夫だよ。だから……神様は人を創って放ったらかしにしているけど、でも、自由だね。自由のためには、現実と向き合わなきゃだけど……」
鶉は前方を見据える。
その先には、眼帯の少年と仮面の男。
「鶉ぁ、お前、まさかなぁ………じゃ、お前を連れて行かねえとなぁー……っと!」
「!」
鶉は優夜を強く、優しく抱きしめ、目をつぶった。
――……守りたい……!
ピシャン。
――……?
……雨?
目を開けると、そこには一人の少女が立っていた。
未鶴の鋭利な岩は完全に跡形もなく砕かれ、周りには水たまりが点々とあった。
「聖なる大樹に手をかけないで頂たい……この愚者が……!」
凛として、蒼い髪を持つ少女は、綾鷹と未鶴の前に立ちはだかった。
「我が名は春咲つばめ、……翼在る者だ!!」
雲間から光が、差し込んだ。
新キャラ登場ですが、まだまだ登場人物結構居るのです。
ご了承願ったりです。