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plume22 来訪者



 高橋(たかはし)花鶏(あとり)には、かつて1人の妹が居た。

 高橋(たかはし)水鶏(くいな)

 性格こそ対照的だが、双子姉妹の2人は見分けがつかないほどよく似ていた。

 だが現在は、瞳の色さえ、違う。



「あ……花鶏先輩……?」

「んー、そうね。(うずら)ちゃんとは、2年間共に図書委員会で過ごした中ですから、先輩の秘密を教えてあげちゃっても、良いわよっ」

 その2つの黒い瞳は、澄み渡る空を見上げた。



 同時刻。

 薔薇園。

「あぁ? てめぇら、なんかようかぁ?」

 優夜(ゆうや)達の前には、2つの影が立ちふさがっていた。

 地を操る少年と、電撃使いの少女。

「よお未鶴(みつる)。俺の後輩がこちらにお邪魔しているようで」

「知らねぇなぁ。それに、確かに門は開いていたが、不法侵入はまずいんじゃぁねぇか?」

(かどわか)しが何をほざくか」

 つばめが一歩前に出る。

「何よ、やる気? 今日こそ、私の雷で体中黒こげにしてあげようかしら?」

 そう言って、雛乃(ひなの)が足を進めた時だった。

烏丸(からすま)先輩、春咲(はるさき)さん」

 双子が前に歩み出た。

「さっき(ほまれ)さんが言っていました。ここは僕らが引き受けましょう」

 (つぐみ)隼斗(はやと)。2人は、優夜達に背を向けている。

「な、お前らが敵う相手じゃ……」

「これだから先輩はダメですね。僕ら何だと思っているんですか」

 溜息の後、鶫が言った。

「僕らは守護者(ガーディアン)ですよ? 違法能力者への措置は、僕らが行うのです。

 ですから、残りの数人も先に行って仕留めておいてください」

「だがしかし……」

「春咲さん。貴方が戦うべき相手はあの人達ではないでしょう?」

「! そうだな……優夜、行こう」

「……つばめ?」

「この双子達なら大丈夫だ。まずは鶉だ」

「先程誉さんがここの周辺をぐるぐる周っている時に気がついたんですが、どうやら、あそこの檻を出て行けば、本邸に入れるでしょう」

「……お前、なんなんだぁ?」

 未鶴の軽いツッコミを無視し、鶫が言う。

「僕らも後で追っかけますから、片づけておいてくださいよ」

「あぁ! わかった!」

 つばめと優夜は、檻の方へ走り出す。

「させるかよぉ! 新たなる土地雨(ノヴァヤゼムリャ)!!」

 未鶴の放つ尖鋭な巨岩が、優夜とつばめを襲う。

 それらは、2人に命中した。

 が、その後、その人の形をした幻影(・・)は、ゆっくりと消えてしまった。

「あぁ?!」

「僕の能力の術にかかる奴って、大抵が単純な奴なんだよなぁ。

 ……僕の能力は、『夢幻(ファントム)』。……ここから先は、行かせないよ」

 すると、今までずっと寡黙だった隼斗が、口を開いた。

「……そういえば兄さん……誉さんは……?」





「あのね、鶉ちゃん。7年くらい前にね、家にね、とある2人組がやってきたの」

 花鶏はとてもにこやかな笑顔だった。

 そして次の瞬間、鶉の目が大きく開いた。

「そのうちの1人が、これまた可愛い女の子で、苺花(いちか)ちゃんって、いうのよ」

「え……」

「もう1人男性がいたのだけれど、何て言う名前だか忘れてしまったわ」

 苺花ちゃんが、見えた……ということは。

「なんかね、すごいの。私とか、未鶴とか、みぃーんな、その日から何か凄い力が使えるようになったのよ」

「花鶏先輩……?」

「でも苺花ちゃんいなくなっちゃったらしいのよね……良かった(・・・・)

「あ……え……?」

「だって、あの子のせいで水鶏は、あんな風になってしまったんだもの」





 春咲綾鷹は目を閉じていた。

 そこは、色とりどりの花や植物が咲き誇る庭園(ガーデン)

 ただし、何故か薔薇はなかった。

 春咲綾鷹は目を開ける。

 そこには、時使いそして、血の繋がった我が妹――。

「つばめか。よくこの場所が解ったな」

「悪役風情にも満たないものが、颯爽と悪役の台詞をほざくな……。優夜、解っておるな?」

 つばめは優夜へ視線を向けた。

 それは、師から弟子への信頼の視線か、それとも。

「あぁ……任せたぞ、つばめ!」

 と同時につばめは綾鷹へ一直線に飛びかかっていった。

 春咲流武術は、春咲流武術で止められる。

 双方、動かない。

「アクアサードニクス!!」

 突然のつばめの能力にもかかわらず、すぐに対応する綾鷹。

 そして。

 お互い、同じ構えをとった。

「今日こそ決着です……綾兄さん!!」

「ほぅ……果たして、敵破るは我か、つばめ、貴様か……。いざ、尋常に……参る!!」




 優夜は走った。

 校内ランキング1位の体力だ。その様子では疲れも見えない。

 元々、成績も学年2位でありながら、その文武両道の才には見た目から驚かされる。

 そして、時を操る……いわば『時の支配者(デビルクロック)』……。

 彼を今まで支えてくれていたのは、家族、友人、部活の後輩、恐ろしい師匠、そして……大切な幼なじみ。

 どんなときでも、彼は諦めない。

 どんなときでも、過去を恐れない。

 どんなときでも、目の前をしっかり見る。

 どんなときでも、心を広く穏やかに。

 どんなときでも、振り返らない。

 それだけの、ほんの小さなコトだが。

 彼は、決めたのだ。


 必ず――守ると。


 そして、彼の前には、盲目の音使いが、降臨する……。




 

 

野澤   俺たちの旅は、まだまだ終わらないぃ!


りっくん ……打ち切りぃ?!


野澤   だが、戻ってきた!!


りっくん おぉ!



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