plume20 繋がり
野澤 りっくん
りっくん 何?
野澤 サイトに私がメロンパンを食べているって載せたでしょ。
りっくん うん
野澤 野澤の「澤」が「沢」になってた
りっくん うん
野澤 直しておいて、あと麻雀やらせて
りっくん はいはい
いや、違う。
まず髪が短い。
ただ、後ろ姿が、雰囲気が、花鶏先輩に似ているな……と思っただけで。
ガタン。
肩が襖に当たった。
その音でその少女が振り向き、鶉は、その赤と黒の異なる目と目が合う。
少々ウェーブのかかったショートの黒髪を持つその少女は、たった一つの自己だけの行動手段、車椅子で、ようやく全ての全貌を明らかにした。
「あ、あぁ、ご、ごめんなさい!」
「?」
少女は、鶉が何故突然謝ったのか分からず、手元にあったスケッチブックに何かを書き始め、それを鶉に見せた。
『こんにちは』
そう書いてあった。
「あ、はい、こんにちは!」
つられて鶉も挨拶を返す。
それを聞いた少女は、またスケッチブックに何か書き始め、続けてそれを鶉に見せる。
『私の名前は水鶏よ』
「はぁ……えっと……なんて読むんですか?」
『くいな』
「あ、はい、ありがとうございます! すみません、お恥ずかしく存じます……」
水鶏と名乗った少女はクスクス笑うと、さらにペンを滑らせる。
『あなたのお名前は、何ていうの?』
「あ、えっと、夏野鶉です!」
それを聞くと、また何やら書き始め、鶉の方に近づき、鶉の目の前で停車する。
そして、スケッチブックを見せた。
『そう、鶉ちゃん、よろしくね。ところで、どうしてここにいるの?』
やはり。
「あ、ゆうか……あの、温泉に来ました……!」
水鶏さんは、喉の病気を患っておられる。
『そう。私も、ここの露天風呂は、格別だと思うの』
それに、やっぱり……顔が、振る舞いが、花鶏先輩と、似ている。
「あの」
「?」
鶉の問いかけに、水鶏は“何かしら”、という感じで首を傾ける。
「名字は、なんと仰るのですか?」
『高橋よ』
水鶏は笑顔で自らの名字を表す。
高橋水鶏。
花鶏と同じ名字。
「あの、もしかして、ご姉妹に、“花鶏”という方がいらっしゃいますか?」
それを聞いた水鶏は、少々考えると、首を横に振った。
「そうですか、失礼致しました」
ここまで、唐沢君達のように似ていらっしゃるのに……ま、まさかドッペルゲンガーでしょうか……。
鶉がそんなことを考えていると、不意に後ろから、聞き慣れた声がした。
「………あら? 鶉ちゃん、委員会にいないと思っていたら、私の家にいたのね」
振り向くとそこには、噂をすればなんとやら。
「あ……花鶏先輩……」
長いストレートの黒髪を、リボンで一つにまとめ、聖桜学院附属高校の制服を纏った、高橋花鶏。
手には、いつも通りの2冊の本、著・武者小路実篤と『不思議の国のアリス』がうずくまっている。
生徒会長兼図書委員長。
ん……委員会?
「花鶏先輩、もしかして今日は、月曜ですか?!」
「えぇ、そうよ。烏丸君に聞いたら、今日は風邪をこじらせたと言っていたけれど、元気そうで何よりね」
つばめの家へ行ったのは土曜日。
泊まって帰宅しようとしたのが日曜日。
今日、月曜日。
うわぁ……私、一日中寝てたんだ……。
「そういえば鶉ちゃん、どうして私の家にいるのかしら。誰かにご用?」
「あ、えっーと、綾鷹さんと一さんに……」
「あら、あの子達と知り合いなの? それは素敵ね!」
あぁ……この人は関係なさそうだ。
「そうね……ねぇ、水鶏ちゃん。私は花鶏って言うの、初めまして」
花鶏の言葉を聞いた水鶏はぺこりと頭を下げる。
?
「どうして私が貴方を知っているか? ふふ、秘密よ。鶉ちゃんを呼んだの?」
首を横に振り、笑顔を見せる水鶏。
「そう、ありがとう。鶉ちゃん、ちょっと、私のお部屋へ来てくれないかしら」
「あ、はい! 水鶏さん、それでは」
笑顔で手を振っている水鶏を後にして、鶉は花鶏と共に、長い廊下を歩き始める。
「あ、あの! 水鶏さんって今日遊びに来た方とかですか?」
「いいえ。違うわ、鶉ちゃん」
「それに、花鶏先輩とかなり似ていらっしゃいますね、従妹さんですか?」
「いいえ、姉妹よ」
「え……」
“……ねぇ、水鶏ちゃん。私は花鶏って言うの、初めまして”
「水鶏はね……病気で……私のことだけ、忘れちゃっているの。どんなに名前を教えても、少し経つと、忘れてしまうの……高橋花鶏のことだけを」
鶉は水鶏の元へ走った。
「水鶏さん!」
水鶏は、驚いた表情を浮かべたが、スケッチブックを使う。
『どうしたの、鶉ちゃん』
「あの! た、高橋花鶏さんという方をご存じですか?!」
水鶏は、また少々考え、何やら書いたページを見せる。
『いいえ。その人は、だぁれ?』
“私たちね、双子の姉妹なの”
そんな……だ、そんなに経っていないのに……。
高橋花鶏と高橋水鶏はある日を境に、
繋がりを、
片翼を、
失った。
結果的に、
携帯のみで投稿してるりっくんは、
その直すという行為が
とてつもなく面倒なのを知り、
そのまんまになってます☆