plume2 似すぎのtwins
「あ、唐沢君。先に来ていたんですね。すみません、遅れてしまって」
図書館の扉を開けて入ってきた先輩・夏野鶉。
「…………いえ」
一言だけ返して、視線を本に戻す後輩・唐沢隼斗。
2人は今週図書当番。放課後は、完全下校の時間まで当番活動を行う。
ただの同じ委員会という繋がりしか持たない彼らは、いつもは特に話さないが、今日鶉には、とある話題があった。
「あの、唐沢君は、もしかして双子でいらっしゃいますか?」
「…………」
「今日、唐沢君にとても似た方とお話ししたのですよ」
「………あぁ、僕の兄です」
「そうですか! 髪の長さまで、本当にそっくりです」
「……何を喋ったんですか」
「おぉ、えっとですね……」
相変わらず無表情だが珍しく話をしてくる隼斗に戸惑いつつ、鶉は、今日のお昼の出来事を頭に回想させた。
昼休み、廊下。
「夏野先輩! 烏丸先輩!」
振り返った2人の視線の先には、水色の髪を持った男子生徒がいた。
「あ、あの、僕は1年B組の唐沢鶫と申します。昨日は、不良共から助けてくださりありがとうございました!」
「あぁ、昨日のお方ですね。怪我はございませんでしたか?」
鶉が鶫の手をぎゅっと握ると、突然鶫の顔は赤くなった。
「あ、あぁ……は、はい! だ、大丈夫で……す……!」
おいお前。
「そうですか、それは良かったです!」
にっこりと笑う鶉。
それをあわあわと見つめる鶫のことについていち早く気づいた優夜はイライラとはしていたが。
「あ、あぁ……烏丸先輩! あの、烏丸先輩も、凄くカッコ良かったです! 恐い人達をあんなにも易々とやっつけてしまうなんて!」
「あ? ……あ、あぁ……」
「そうですね。優兄、こんな見かけですが、剣道部と合気道部の部長さんなのですよ」
「えぇっ?! す、すごいです! 今日僕、見学しに行っても良いですか?」
「あぁ……かまわねーけど。鶉、お前今日放課後……」
「あ、私は今日は図書当番なのですっ」
「あーそっか」
「あ、あの……お2人は、結構仲がよろしいのですね」
鶫の疑問に、
「あ、はい。幼なじみってだけですよ
鶉が答える。
「…………」
2人の男子がそれぞれ違う反応をしたあと、授業開始前の鐘が鳴った。
「それでは、僕はこれで失礼致します!」
鶫を見送ったあと、
「それでは、優兄」
「あ、あぁ……」
2人も自らの教室へ足を運んだ。
「――えっと……まぁ、すごく元気で面白い子でしたかね」
「……そうですか」
「あーでも、なんか隼斗君とも喋れて嬉しいです。これからも、当番活動一緒に頑張りましょう!」
「……はい……そういえば先輩、今日は先生達の会議があるそうなので、早く図書館を閉めないといけないんでしたっけ……」
「あ! そうだった気が!」
そして2人は図書館の前に出ると、ドアの鍵を閉めた。
「じゃあ、今日は私が鍵を返してきますね。また明日!」
「………はい」
走っていく鶉を見送る隼斗。
すると、鶉が走っていくのと反対側の方の廊下から、唐沢隼斗に酷似の、でも少し髪の長い少年が歩いてくる。その少年に、図書館のドアの前に立っている双子の兄は言った。
「ありがとう隼斗、君が僕に代わって烏丸優夜の部活に行ってくれたおかげで、夏野鶉の中を知ることができたよ」
「……鶫兄さんは、いつも自分の都合ばかりだね。……それで、彼女は……」
「あぁ、聖なる大樹だった……ま、僕が惚れるくらいの女の子だからねぇ……可愛いよね、先輩」
「…………僕ら『守護者』の役割分かってる……?」
「大丈夫大丈夫、とりあえず、昨日の事件の話でもしようよ、ね?」
それは、鶉が少女を助けたあの夕方に遡る……――。