plume15 賢者は志す
野澤 りっくん、怒られたことある?
りっくん 昔私の担任が、高校生の頃にね
野澤 うん
りっくん 校長のイスの下に爆竹を束で仕掛けたらしいよ
野澤 それは……さぞかし楽しかったんだろうね!
「いらっしゃい、 雷音!!」
雛乃が叫ぶと同時に、曇空広がる天井から雷が降り注ぐ。
そして、鋭い目つきの雷を纏った猛獣が現れた。
その際に、床に大きな地割れ。
「水は使えないし、ていうか前私に負けたくせに、よく出てこれたわね?」
「……私の能力が一つだと思うな……フレイムローズクォーツ!!」
「行きなさい! サンダー!」
グォォ……。
低音で唸るサンダーは、百獣の王とも呼ばれるその速さで、つばめの放つ炎の渦とぶつかり合う。
しかしながら、その力は対等であり、両者とも引かない。
その際に、バスケットゴールが床へ落ちる。
「サンダー、空へ帰れ!」
雛乃は叫ぶと共に、つばめへと向かっていた。
私だって……!
彼女はあまり、体術に長けていない。
だが、こんな時にしか、雷しか使えない彼女には、何か他の強さが欲しかった。
その、他の強さが在れば、彼女は過去に後悔せずにすんだのだ。
だが、幼少から鍛錬を怠らないつばめと彼女とでは、その差は歴然としていた。
「きゃああぁぁぁぁぁ!!!」
つばめの拳が彼女の小柄な身体を突き、
「アクアサードニクス!」
水の威力も追加され、雛乃の小柄な身体は、壁にたたきつけられた。
ずぶ濡れ、瀕死状態の彼女は もう起きあがれそうにない。
が、
彼女は起きあがった。
それは、主という者のためなのか。
それとも、過去の自分を変えたいがためか。
「雷華ォォ!!」
その雨は、つばめではなく、雛乃に、放電した。
「いやああぁぁぁぁぁぁ!!!」
体中に電気を帯びさせているとはいえ、彼女の負の感情が入り交じった強力な電流は、水を纏う彼女の身体を貫いた。
そして雛乃は、倒れた。一が駆け寄る。
つばめが言った。
「さぁ、どうする? 翼無き者よ……」
そんな緊迫した空気の中に、
「ひゃああぁぁぁぁ!! う、うそぉ~……」
そんな緊迫した空気の中に入ってきたほんわかとした声。
「わ、私の学校がぁ……粉々の……ギタギタに……」
生徒会長だった。
高橋花鶏。
講堂の扉は、大柄な体育の先生などによってこじ開かれ、人だかりが出来ていた。
そして、鶉があたりを見渡すと、その様子を見ていたつばめ達の目を盗んだのか、一と雛乃はさっきの場には居なかった。
「高橋会長、突っ立ってないで、早く道をあけて!」
「え、えぇ~……そ、奏子、……桜野君、私は何をすれば……」
しっかり者の女子副会長と、
「保健委員、男子1人に女子2人、すぐに保健室へ運んでくださいね~」
「む、無視?!」
のんびり屋な男子副会長によってその場の事態は俊敏に収拾される。
その時、ちょっとした歓声が沸き起こった。
「ちょ、ハル……?!」
「あ、暴れんな水姫! お前も血ィ出してんだから、とっとと保室行くぞ!」
(保室=保健室)
横抱き、即ちお姫様抱っこ。
それをキラキラとした目で見ていた生徒会書記は、幼いがあざ笑うかのような口調で言う。
「会長、これじゃぁ学園祭が中止になってしまいますよぉ~? ど~するんですかぁ~?」
「えぇ~?! だ、ダメよ!私の代でお祭りが終わってしまうなんて! 大丈夫よ、もう恐いことは起きないから、小恋ちゃん、早く放送をお願い!」
「はいな~」
「せ、先輩!」
「あ、鶫君達」
担架に乗せられ保健室へ向かう優夜とつばめを見送った鶉の安全を問う唐沢兄弟。
「ね、みーちゃんとハル君凄い綺麗でしたね。お姫様抱っことか憧れます」
「え……だ、だったら、先輩! ぼ、僕……」
「う、鶉ちゃ~ん! やったわ!先生達も学園祭中止には多数の意見だったのに、理事長の一言で一発よ!」
「わぁ、良かったですね、花鶏先輩!」
「あら、鶉ちゃんメイド服可愛いわね~。よし……! 今から鶉ちゃんのクラスへ行きましょう! 唐沢君達も、今日はおごってあげるわよ」
「……はい」
仲良く手を繋いで歩く2人を見つめる兄の肩を、弟は静かに叩いたのであった。
「……がんば……」
こうして聖桜祭は、何事もなかったかのように、盛大に幕を閉じたのであった。
あ、生徒会メンバーは出したかっただけなんで、特になんも関係ないっす。
あ、りっくんとかは実際普通にいる三次元の人です。
二次元の世界へダイブしたいそうです。