plume12 そして青春
時に皆様、
ラブコメは、米大好き!って意味じゃない。
って言われたらどんな面白い反応したら良いんでしょ。
1年C組。
出し物はプラネタリウム。
部屋の中を暗くし、床や壁、天井などを蛍光塗料などで星を描いたり映写機を使って夜空を創ったりして、部屋全体を宇宙空間にした休憩所としている。
当番は3人ずつの交代制。
そして、現在の当番の中に、携帯を手放さない流浪野雛乃という少女が居た。
「暇だねーひなちゃん」
「お客さん来てもコーヒーと紅茶はセルフサービスだし、うちらがすることはとくにないものー」
「どうせだったら遊びに行っても良いよねー……行こうよ! ひなちゃん、りっつぁん!」
「落ち着きなよ、なつめー」
「んー、そろそろかな」
そんな3人の元へ、1人の客人が現れた。
「え、は、まじ? 超かっこいいんですけど!」
「にゃー! 写メル写める!」
女子高生の歓声。
その男性がオロオロしつつも困っている姿を見た雛乃は、溜息をついて言った。
「遅かったわね、兄さん」
「えぇーひなたんお兄さん居たのー?」
「うらめしーうらやましーハグしちゃうー!」
「てことでちょっと抜けさして? あとで色々おごるからさぁー」
「良いよー良いよー絶対よー!」
「禁断だよー!」
そんな女子高生の歓声を聞き流して、2人は歩き始めた。
「あの、私は雛乃様のお兄さんだったのでしょうか?」
「KYもここまで来ると凄いわね……で、どうするの」
「とりあえず、私が交渉してみますので、雛乃様は……すみません、私がピンチになりましたら……」
「一……あんた……困った時の神頼みってやつ? ちょっとぉー……」
不機嫌顔の雛乃を前に、とりあえず機嫌を取ろうとするその一と名乗る若者は言った。
「大丈夫です。主様の頼みなので……念には念を入れておきました……」
3年A組。
ひゅ~どろどろお化け屋敷。教室4つを貸し切り、その前の廊下では長蛇の列が出来上がっている。
「鶉ちゃん! 来てくれたのね!」
出迎えてくれたのは、優夜のクラスの委員長。
「あ、あの、優兄居ますか?」
「あぁー2時間前に井戸に落ちちゃったのよー」
「えぇ?! だいじょうぶなんですかぁ?!」
「大丈夫よ! 1時間前から助けてくれって言う声が聞こえなくなったから!」
「えぇぇ!!」
「おいおい委員長、鶉で遊ぶのはやめてくれよ」
「あら烏丸君、ごめんなさい。それじゃあね!」
奥へと消えた3のA委員長を見送り、そこに突然現れた優夜に鶉が問う。
「あれぇ? 優兄、井戸から落ちて、声が聞こえなくなっちゃったんじゃぁ……」
「落ち着け。俺の係は客の誘導だ。そしてアイツの言うことは6割嘘で2割が作り話だ。あと2割は知らん」
「す、すごいですね……」
微妙に感心した鶉。
「って! つばめも来てたのかよ!」
「ほぅ……私が来ては職務の邪魔となるか……それとも貴様を本物のミイラにしてやろうか……」
「いやいやいや! 全然!」
「優兄、これからみーちゃんが文芸部のファッションショーに出るのですよ! ご一緒致しませんか?」
「おーいいねー。水姫、頑張れよ!」
「まーかせてください! 烏丸先輩! ……あ、鶉、私もう行くから」
「あ、はい! 皆で見に行きますからね!」
「うーわぁ、緊張してきたぁー。じゃぁ皆、また後でね!」
第2講堂へと走っていく水姫を見送り、
「鶉先輩、そろそろ僕たちも行きましょう!」
「そうですね」
5人が歩き出そうとすると、後ろにはメガネをかけた委員長。
「あーら烏丸君、仕事サボってどこへ行くつもりかしら?」
「…………」
結局、第2講堂へは、4人で向かった。
2年B組。
お好み焼き喫茶の奥の厨房でキャベツを刻みまくっている少年達は、
「ちくしょおぉぉぉ!! 女子達はホールだから楽だけどよぉ、俺たちはなんでこんな労働なんだぁぁぁ!!!」
「落ち着けよ……俺だって彼女の元へ行きたいってのに……」
「何! お前彼女居たのか」
「あぁ、この次元には居ないがな……ノートパソを開けばいつでも会えるぜ!」
「…………。あぁ……。そういやぁハル、お前また鳩川と喧嘩したのな」
奥で黙々とキャベツを刻んでいる少年に声をかける。
「……関係ねーだろ」
「夏野達が、鳩川の舞台見に行くって言ってたぜ」
「……関係ねーだろ」
「恋に年の差は?」
「関係ねーだろ」
「え、次元も?」
「知るか!」
「とっとと素直になれよなぁー。だから背がのびねーんだよ」
「っとに関係ねぇ!!」
によによしている少年達に囲まれながらも頬が少々朱い少年は、
「……うっせーよ……」
エプロンとネームプレートを取り外して少年達に託し、教室の外へ出て行った。
まじで青春したいっす。