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既知なるベットに夢を求めて

したたかに打ち付けられた頭に、今までのことがフラッシュバックしてくる。

あの時に感じたデジャヴュはそいうコトだったか、私の無謀かつ愚かな行いは、今回が初めてではなかったのだ、どうして人は過ちを繰り返すのか。まぁ今の今まで忘れていたんなら仕方がないだろう、次はもっとうまくやってやろう、私は誰とも知れない何かにちかったのだった。

目を覚ますと保健室のベットだった。

どうやらあの後気絶した私を後輩、もとい春澄がえっちらおっちら背負ってバスに乗り、そのまま登校し、ついでに保健室まで私を運んでくれたらしい。

私が春澄にしたことはろくでもないことだったのだが、春澄は私をそのまま放置するほど血も涙もないわけではなかったらしい、実際は血も涙も流れていないのだが。

過ちを繰り返す、愚かな先輩を見捨てない程度には人工知能も思いやりの心を学習しているのだろうか、私たちの生活を豊かに彩ってくれている機械連中には、いわゆる人格だとか気の利いたものは特になく、昨日も最低限のものしかついていないはずなのだが、やはり魂と肉体は不可分であり、人によく似た体に宿った魂は、人に近いものになるのだろう。

それにしてもやけに居心地がいい、保健室特有の何とも言えないぼんやりした感じと安心感、私の部屋の新品同然の悲しいベットとは違い、日々悩める生徒や何らかの形でうんうん唸る生徒を優しく受け入れてくれるベットはやはり、暖かいベットに変わるのだろう。まぁ単純に毎日日当たりのいいところで干されているからなのだろう、所詮は無機物だ、辺に期待しすぎるのもよくないだろう。

病は気からなんていうコトもあるし、臨床実験では偽薬を用いられることもある。

これだけ技術が進歩しても、人間の脳は科学を魔法と見分けることができないのと同じように、長生きしただけのカメに神聖なものを見出し、このベットから温かみを感じてしまうのだろう。

「あら、起きたのね。

朝から、階段から転げ落ちて気絶だなんて、あなたは余程寝坊助さんなのか。それともよふかしのし過ぎか、よっぽどせっかちなのね。先週も似たような理由で運ばれてなかったかしら。

頭痛がしたり、しびれがあったら言ってちょうだいね。まぁその様子だと大丈夫そうだけど、それにどこの学校の保健室も、設備が嫌というほど整っているからよっぽどのことじゃない限り、病院に行くことなんてないから、最近はめっきり生徒の恋愛相談とか、雑談の相手をするくらいしか仕事がないのよね。

あら、話過ぎちゃったわね。最近は人の話を聞くことばっかりだったからちょっつお愚痴っぽくなってしまったわ、ごめんなさいね。」

もともとはおしゃべりなのだろう養護教諭の桜木女史はスクールカウンセラーのような役割も担っているからか、そういう役回りをしているのだろう。

実際桜木女史は、聞き上手でもあり、何よりその竹を割ったような性格とモデルのように整った体形と、独特の包容力で、学内では屈指の人気者ではあった。

躰の傷は簡単に治すことはできるようにはなったが、心の傷は見ることも、ましてや治すこと気づいてやることに関してはまだ人工知能には難しいようで、桜木女史のような大人が必要とされている。

春澄のようないわゆるヒューマノイドがいまだに開発されていないのは、機械は老朽かこそすれど、樹木や人間のように年を重ねることで成長するような気の利いた構造ではないためであり、かといって桜木女史のような人間は限られた人間であり、いまだ社会が解決できていない問題であるため、人工知能は私のところに春澄を遣わしているのだろう。

私のような人間から何を学ぶのか、ここ最近の私の行いにより人類を憎むようなことがなければいいのだが。

それよりもまだ眠り足りない、そう思うとなんだか体もだるい気がするし、もう少し横になっていた方がいいかもしれない。春澄が言っていたように今日は少し冷え込んでいたので、空調の利いた部屋はとても居心地がよく、二度寝にはかなり適した場所ではある。

桜木女史にまだ、体調がすぐれないことを告げると桜木女史はこともなさげに、ベットに居座ることを許してくれた。

懐の深さに感謝しながら、そういえば弁当を忘れていたことを思い出したが、眠気には勝てずねむりについたのだった。


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