20XX年の大和特攻
大和特攻を題材とした架空戦記です。
西暦20XX年の今年、沖縄近海で起きた出来事は世界の誰もが知ることだ。
わざわざここに書いても誰も読まないかもしれない。
だが、あの出来事について自分の手で書いておきたい。
だから、ここに書いておくことにする。
今年の4月、かねてより関係が悪化していた我が国と大陸国家の間で、軍事衝突が発生した。
大陸国家が沖縄本島の占領を企んだのだ。
沖縄本島には過去は同盟国の軍事基地があったが撤退しており、同盟国の大統領は我が国に軍事支援をするのに及び腰であった。
我が国は「自分の国は自分で守る」という当たり前の認識を再確認することになった。
もちろん、我が国防軍は沖縄を守るために奮戦した。
空で海で大陸国家軍に大損害を与えた。
だが、強襲揚陸艦を主力とする上陸船団は討ち漏らしてしまい。
敵の上陸船団は沖縄本島の至近まで迫った。
その時「あの艦隊」があらわれた。
上陸船団から目視できる至近距離に一隻の戦艦を中心とする十隻の艦隊が突然出現したのだった。
その戦艦の姿を見た誰もが驚いた。
どう見ても大和型戦艦だったからだ。
映像を分析すると、太平洋戦争の末期、沖縄に特攻した戦艦「大和」だった。
他の九隻も、一隻がやはり沖縄特攻に参戦した軽巡洋艦「矢矧」であり、残り八隻も沖縄特攻に参戦した駆逐艦であった。
百年近く前に壊滅した艦隊が何故今にあらわれたのか?
誰もその疑問に答えられなかったが、戦艦「大和」の主砲が敵の上陸船団に向けて火を吹いた。
狙いは敵の強襲揚陸艦だった。
初弾命中とはいかなかったが数回の斉射で強襲揚陸艦は撃沈した。
軽巡洋艦「矢矧」は駆逐艦を率いて船団に突入した。
敵は我が国防海軍との戦いで対艦ミサイルを射耗しており、至近距離では太平洋戦争レベルの砲撃と雷撃で攻撃する艦隊の方が有利であった。
敵上陸船団は壊滅し、沖縄本島は守られた。
戦艦「大和」たち十隻の艦隊はいつの間にか消えていた。
あの艦隊は何だったのか?
亡霊だったのか?
その答えは海底に沈む戦艦「大和」を調査したことで明らかになった。
船体に大陸国家軍の軍艦の艦載砲の弾痕が見つかったのだ。
戦艦「大和」たちは太平洋戦争末期から今年にタイムスリップして来て、戦闘後に元の時代にまたタイムスリップして史実通りの運命の終わりを迎えたのだろう。
生還した人たちもいたはずだが荒唐無稽な出来事だったので報告されなかったのだろう。
戦艦「大和」たちは間違いなく沖縄を守ったのだ。
今、沖縄では実物大の戦艦「大和」そっくりの建物を建てる話が持ち上がっている。
建物の中には艦長室・長官公室などを再現し、海軍メニューを再現した食堂、今回の紛争と太平洋戦争の史料館も設けられる計画だ。
資金など困難は多いが、ぜひ実現して欲しいと思う。
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