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005 初戦闘

聖羅のキャラが定まり切らない・・・!

「よし、そうと決まれば!」

「ええ。ゴブリンは基本的に私が倒すわ。ユウェル様の加護と天使の種族特性のおかげで、いくらでも魔法が使える気がするの」

「わかった。無理はするなよ」

「もちろんよ」


 自然にお淑やかに、されどどこか威厳を感じさせる様子で聖羅が歩き出す。

 一瞬、誰もがその美しい姿に目を奪われた。戦場になる直前とは思えないほどに、静かな時間が流れる。

 戦う意思を示すなら今が好機だ。


「僕と彼女でゴブリンと戦う! その間に体制を整えて!」

「なっ、何を言っているんだ!君たちも早く避難を───」


 隊長の悲鳴にも似た叫びは、最後まで続かなかった。


 何故ならその視線の先に、白く透き通る髪と、純白に輝く光の羽を生やした天使が立っていたからだ。

 天使(せいら)は世界樹の杖を前に掲げ、魔力を練り上げる。



「最初が肝心よね、派手にいかなきゃ。…凍てつき、凍りなさい」


 練り上げられた魔力はやがて視認できるほどに圧を放ち始め、聖羅の周りに冷気が生じる。


「名付けるなら、そう。…“氷の世界(ニブルヘイム)”ッ!!」


 掲げた世界樹の杖が一際眩しい光を放つ。

 そこから魔力が一気に解き放たれ、冷気と氷となって扇状に広がっていく。

 その攻撃範囲は自重を知らず、かなり距離のあったゴブリンの軍を飲み込んだ。


「な……これは……」

「え、なんか凄すぎない? あれと同じことが出来ると思われると困るなあ」


 隊長が絶句するのも無理はないだろう。

 たった1人が、視認できるだけの数でも1万を超えていたゴブリンを凍りつかせたのだ。

 彼女が名付けた通り、一瞬で辺り数キロが氷の世界になった。


「・・・・・・」

「ん? 聖羅? どうした?」

「い、いえ」


 何やら少し焦った様子の聖羅。


「・・・その、魔法が思ったより強くて」

「なんだ、全然いい事じゃん!」

「そうなのだけれど・・・、考えてたより10倍は強いのよ。全く制御出来ないわ・・・」

「お、おう・・・」


 逆説的に、10分の1の威力を想定して使った魔力でこの結果を引き起こしたということ。

 やろうと思えば10倍の魔力を込めて今の10倍の魔法を使えてしまうということでは無いだろうか。


「・・・比喩でも誇張でもなんでもなく本当に氷の世界になっちゃうじゃん」

「? なにかいった?」

「ナンデモナイデス」


 恐ろしいなあ、聖羅を怒らせる事はしないようにしよう・・・。

 などと美少女天使に戦慄していると、聖羅が魔法を解除したのか氷が光の粒となって消えていった。

 その中から出てきたゴブリン達の死体も、黒い霧となって消えた。


「何体か仕留め損ねたわ」

「強い個体も居たんだろうな」


 何とか生き残ったであろうゴブリン達は、フラフラしながらも再びこちらに走り出した。

 さらにその後ろからも視界を埋めつくす勢いでゴブリンがやってくる。


「いやいやいや、流石に多すぎない? 隊長さん、これって普通のことなの?」

「・・・・・・」


 へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 よく見ると「ウゾダドンドコドーン…」あ、気の所為だった「ウソダソンナコト…」と、うわ言のように呟いてる。

 仕方ないのでもう一度大きな声で呼んだ。


「隊長さん!?」

「あ、あぁ、すまない。普段はこんなことにはならない。この規模となるとゴブリンキングが率いていると思われる」

「ゴブリンキング・・・」


 ゴブリンキングについて詳しく聞くと、次のようなことが分かった。

 100年に1度かそれ以下の頻度で発生する特殊なゴブリン。それがゴブリンキングだ。

 1番少なくて3万。記録上で最も多かった時は17万を僅かに上回る量だったという。


「さっきの聖羅の魔法でも9000体くらいしか倒せてないよな?」

「ええ、そうね。まだまだ魔法は使えるから、私だけでも・・・」

「いんや、段々相手の量と勢いが増えてる。このままじゃ押し切られる」


 恐らく先程倒したのは偵察部隊のようなものだったのだろう。

 先程とは比べ物にならない数のゴブリンが攻めてきている。

 聖羅の魔法も放つまでに時間が少し掛かるし、その間に詰められてしまう未来は容易に見える。


「聖羅が魔法を使う時間を稼げれば、後ろの街に被害を出さずに殲滅できるよな?」

「時間があればいくらでも倒すわ」

「分かった」


 そうと分かれば僕のやるべきことはひとつしかない。

 叢雲を《無限収納》から取り出し、腰に携える。


「聖羅が魔法を準備する間、僕が敵を全て引きつける。聖羅は準備が整い次第ばんばん魔法使っちゃって!僕は転移で避けるから!」

「なッ!? やめろ! たった1人が剣で相手をできる数じゃない!死ぬぞ!」

「・・・わかったわ」


 隊長が必死に止めてくれるが、恐らくその心配は要らない。

 叢雲があれば、そしてこの身体ならばいくらでも戦える。もちろん、油断はしていない。


 居合の構えを取り、戦意を高めていく。

 髪の毛が白くなるのを視界の隅に捉えつつ、背中に妙な感覚を得る。きっと光の羽が生えたのだろう。


「んじゃ、いってくる」

「気を付けてね」


 聖羅の声を背に、僕は一陣の風になった。

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