サラリーマンの公衆便所事情
私はごく普通のサラリーマンだ。
まだ二十代前半の、ピチピチの若者だ。
そんな私から特徴というものを搾り出そうとすれば、出てくるのは、ほんの少し、気にも止まらないぐらい少し額が後退していることだけだろう。本当だ。
そんな私も、つい先日ミスをしてしまった。
上司の指示に従わず、失敗してしまったのである。
当然上司は大激怒。
こうした方がいいと思ったが、それは間違いだったらしい。
そんなこんなで、私は決心をした。
しばらく全てにおいて人に従ってみよう、と。
それでも何か起きるなら、自分で考えて行動した方がマシだと。
その決心は、私の休日にも反映された。
…いや、されてしまった?
▼一週間前▼
久しぶりの休日。
私は日帰りの旅行に出かけることにした。
温泉につかり、宿に一泊できないのを恨めしく思いながら車に乗る。
車を走らせていると、サービスエリアが見えた。
尿意を感じ、身を震わせながらトイレに駆け込んだ。
トイレの進化というものはすさまじいものだ。
小便器の上に、小さいモニターのようなものがあった。
気にすることはない。
チャックを下ろそうと下を見ると、
「一歩前に進んでね!」という文字と共に、
二つの足の絵が見えた。
私は、自慢ではないが普通の人よりアソコが大きい。
汚い話だが、その絵どおりに足を合わせると、
小便器とアソコがかなり近づいた状態になってしまう。
しかし、それでもくっついてはいないのだ。
掃除をする人が苦労するよりは、私がほんの少し我慢すればいいだけだ。
仕事の辛さは、ミスをしたばかりの私がよく分かっている。
足の絵どおりに立ち、トイレをしようとした時。
さっきまで暗かったモニターがいきなり点灯した。
視界に入れなければよかった。
そのモニターには、ニッコリと笑った少年の丸い顔と共に、
「もう一歩進んでね!」と赤い文字で書かれていた。
なんだこいつは。
私のアソコと小便器をキスさせろというのか。
人間同士で言えば、もう互いの吐息がかかるレベルの距離なんだぞ。
それ以上進んだら、確実にキスしてしまう!
しかし、私には先日決めた決意がある!
風呂に入ったばかりの体だと言うのに!
しかし、一度決めたことは曲げないのが信条。
まだ、何か方法はあるかもしれない。
一歩前に進もうが、キスしない方法が。
考えている間にも、モニターの少年は前に進めと急かす。
私は覚悟を決め、咆哮をあげた。
「うおおおぉッ…!」
私は一歩、前に進んだ。
▼一週間後▼
ああ、結局どうなったのかって?
…冷たかった、とだけ言っておくよ。
実話九割、若干のフェイク一割の構成です。
改善点などあればご指摘いただけると嬉しいです。