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六十二日目 魔神

 娼婦になって精気を吸いまくってたら、いきなりヤクザに誘拐されそうになった。何がどうなって、いきなりそんな羽目になったのか、俺にはさっぱりだ。客の数だけはいっぱいこなしていたので、目を付けられたのかもしれない。


 だが街のヤクザなんてものは大したことない。こちとらオーガやオークを日々糧に生きている冒険者なのだ。相手は常人より何倍も力を持っている亜人で、俺はそれを縊り殺している。そんなデミヒューマンに比べればヤクザもんなんて、ちっとも怖くない。


 相手がスゴ腕の剣士や魔法使いの用心棒をいっぱい繰り出してきたのなら、俺も逃げるしかなかったが、チンピラが千人集まっても俺には無意味なのだ。暴力しか無いのならば、俺はそれ以上の暴力を振るえるからだ。


 俺を誘拐しようとしたボスもボコボコにした。シマを周囲の組に奪われて、今はかなり大変らしい。逆恨みして俺を狙ってきたら厄介だったので、念のために追加で二回ほど相手のシマに乗り込んで、チンピラ共をボコってやったら、組が維持できないくらい衰退してしまったそうだ。


 金を持っていそうだったので、刺客を送り込んでくるかと思ったが、金だけ持っていてもダメらしい。面子を潰されて影響力が低下したのが致命的らしい。


 跳ねる子猫亭を持っている組の組長が一度挨拶に来た。是非とも用心棒にと言われたが、娼婦を自由にやりたいと言ったところ、一発で了承されてしまった。この娼館のマネージャーにも気を使って貰っているようだ。一介の娼婦なのに、いいのだろうか。


 さて、男の精を吸い、剣を修行し、冒険も行うという日々充実している。そしてルーチンワークをこなしてくると、やはり余裕というものが産まれてくる。慣れというものだろう。ここ最近は剣術修行後に、兄弟子達と会話することが多くなってきた。


「魔法っていうのは、滅多に見られないんですね」

「そうそう魔術師も妖術師も居ないからな」


 兄弟子の一人である、フリッツと俺はその日話していた。フリッツは十五歳で、兄弟子達の中でも若い方だ。騎士の三男坊だそうで、金髪でハンサムな顔立ちの坊やだ。しかし家を継げないので、モテるということは無いらしい。


 それでいま、話題にしているのは魔法使いについてだった。魔法には大まかに分けると、秘術、神聖、精霊、呪術などに別れるらしい。それで、秘術を使えるのは魔術師と妖術師という二つの職業ということだそうだ。


「魔術師は学問みたいに学んで覚えるらしい。妖術師は感覚で魔法を使うそうだ」

「へえ! 効果が違ったりするんですか?」

「効果は一緒だな。ただ魔術師は使える秘術魔法の種類が多く、妖術師は回数が多いそうだ」

「なるほど」


 残念ながら俺にはこの世界の常識というものが欠けている。今まで出会った冒険者やギルド員などには怪しまれると思って、聞いたりすることが出来なかった。しかし若い妹弟子という立場のリリィで、兄弟子に聞くのは全く問題ないはず。そういうことで、今まで聞きたくても聞けなかった、この世界の一般常識を質問していた。


 少しずつ俺はこの異世界について学んでいった。その中でも一つ面白い話があった。


「そうそう凄い魔法や遺跡とかの変わったものは無いんですね」

「そうだな。西の果てにある魔導士の塔とかでないと、凄いものは見られないんじゃないかな」

「そうですか」

「だけど北のアラース王国では大変なことが起きてるって聞いたな」

「大変なことって何ですか」


 俺は僅かに興奮が押さえられない声で聞いた。異世界にきてまだ、俺は亜人ぐらいしかこの異世界のファンタジーらしい面を見てなかった。強いて言えば首都の外壁も感動したが、残念ながらあれは魔法を使いながらも、工事で出来たものらしい。異世界のファンタジーらしいものを俺は見たかった。


「アラースの王女はオークの進行に対抗するために、魔神と取引をしたらしい」

「魔神!?」

「異世界の生物だ」


 魔神……凄い台詞が飛び出してきた。この世界には魔神が居るらしい。ランプに封じられてたりするのだろうか。


 フリッツによれば、アラースの魔神は大群のオークを軽く追い返すぐらいの力はあるらしい。だがよく知られた有名な話ではあるものの、隣国のことであり、魔神の容姿や性格などはあまり知られていないようだ。


「しかし、魔神ってどんなものなんですかね。見てみたいです」

「よくそんなおっかないモノがみたいもんだな……」


 フリッツは呆れていたが、俺の心は危険によるリスクより好奇心が勝った。北のアラースへ向かうとしよう。


 アラース王国に行くには、ザクセンから繋がる西への街道を、途中で北に向かえばいいらしい。


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