五十七日目 跳ねる子猫亭
跳ねる子猫亭への就職は大当たりだった。
俺はこの町について詳しくなかったが、剣術道場の兄弟子達は地元の人間だ。悪所に詳しい人も居たので、色々と情報を集めたのだが、この跳ねる子猫亭は評判が良かった。そして兄弟子達の情報は確かだった……聞く際に変な顔をされたのは気になったが。
跳ねる子猫亭は清潔で、客層もそこまで酷くない。同僚も薬物に溺れているようなお姉さんは居ないし、従業員も丁寧だ。娼館の主も顔は怖いが、話してみるとそんなに悪い人じゃない。
客の入りも悪くなく、たらふく精気を吸うことができた。大体二割から三割の精気を吸っているが、今のところ苦情も来ていない。
とっかえひっかえ客が来るので、気分的には回転寿司を食べているようだ。いやはや素晴らしい……まあ男を抱いているという現実からは目を逸らして、食事していると俺自身は納得させたい。
他の同僚から客を奪っていると思われては困るので、差し入れには気をつけている。なるべく機嫌を取ろうと、評判の店からテイクアウトしたり、菓子なんかも買っている。娼館で働いている男の従業員にも同様に差し入れしている。困ったときには助けて貰わないといけないしな。まかない飯も出しているので、だぶついているオークの肉なんかも渡せて、一石二鳥だ。
この世界、思った以上に食事のレベルは高いようで、ケーキなんかも売っていたりする。残念なのは美味い食事が俺の腹を満たしてくれないところだ。食事をしても完全に嗜好品にしかならないというのは、残念すぎる。そんな身体なので、あまり人間の食事はしていない。
それはさておき、俺は上手く人間の精をたっぷりと収集できるようになったのだ。
俺は午前中は剣の修行を行い、午後は瞬間移動でフラオスに移って冒険者稼業、夕方から夜半はまたザクセンに戻って娼館で食事、そして明け方から朝まではフラオスで冒険者としてモンスター退治という充実したサイクルを回せた。
剣を振りまくって修行することで、俺の身体は着実に成長しているのが自分でも分った。これでまた一歩、俺ってTUEEEEEをすることに近づいただろう。




