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十七日目 フラオスの冒険者ギルド長からの依頼

【リン】


「こんにちはー」


 夜が明けると共に最近は冒険者ギルドにやってきている。やはり早朝にこそ、いいクエストがあると俺は聞いてるからだ。


 決して、ディーンさんと顔を合わせたくないということではない。何だか最近会うと、連れ込み宿ではなく、飯を食いに行くことが多いのだ。それはいいんだが、イケメンと付き合うとやはり疲れる。話は面白いし、とっても優しいのだが、俺は男だ。幾ら優しくされてもベッドでしか、恩を返せないのだ。


 まあ、嫌なことは置いておこう、それよりクエストだ。きちんと掲示板を読もう。


 しかしクエストって色々な要望が並んでいるが、面倒そうだといのが俺の感想だ。薬草の収拾は俺にそういう知識が無いし、人物の護衛なんかも俺には出来なさそうだ。トラブル解決とか対人関係の仕事は全く向いてない。


 そういうことなので、自然とクエストではなく、常に募集しているモンスターの討伐と素材提出を選んでしまう。


「すみません、リンさん。少々よろしいでしょうか?」

「はいはい」


 俺に話しかけてきたのは冒険者ギルドの受付嬢だ。普段はカイトスのおっさんとやり取りしてるんで、顔見知り程度の相手だ。高校生くらいの可愛いショートヘアの子で、やはりカイトスのおっさんより遙かに人気がある。


「ギルドマスターがリンさんをお呼びです。お手数ですが、上の階のマスターの部屋に来て貰っていいでしょうか?」

「えっ!? 俺……じゃなくて、私なにかまずいことしましたか?」

「いえ、リンさんは全く問題ないと思いますが」


 慌てる俺に対して、受付嬢は笑いとばす。


「ご案内します。こちらです」

「はい」


 受付嬢に案内されて、俺はギルドの奥へと足を踏み入れる。横を通ったカイトスのおっさんが、微妙な顔をしているのが異常に気になる。


「ギルドマスター、リンさんをお連れしました」

「入れ」


 ギルド二階にある一番奥の部屋に入ると、そこはいかにも偉い人のために作られた部屋だ。大きな執務テーブルに、来客用のソファとテーブル、書棚には本が並んでいる。そして執務テーブルには初老の頭頂部が禿げたおっさんが居た。顔はかなり険しくて、やり手のような雰囲気を醸し出している。


「このフラオスの街のギルドマスターをしている、クロウだ。よろしく」

「よ、よろしくお願いします!」


 相手は年がいったおっさんなので、俺にかかれば一捻りかもしれないのに、俺は妙に気圧されてしまう。カリスマとか、存在感の違いだろうか。


「リンくん……このギルドに来て、まだ一ヶ月も経ってないそうだね」

「はい、そうです」

「それなのに、日にオークを二十体以上狩ってるそうじゃないか。随分とやり手だね」

「い、いや、それほどでもないですよ」


 何か妙なプレッシャーを感じる。これはあれだ、会社のお偉いさんに話しかけられるのに似ている。


「謙遜することはない。ベテラン……いや、エリートの冒険者と言ってもいいくらいだ」

「そんな……駆け出しですよ」

「そこでだ、君に頼みたいことがある」


 来た! 間違い無くやっかいなことを頼まれる。


「この街の北に貴重な薬草があるのだが、そこが厄介な場所でね」

「と言うと?」

「オーガの生息地に近いのだ」

「オーガ……」


 オーガと言うと、ファンタジーで言うとゴブリン、オークに続くぐらいメジャーなモンスターの亜人だ。トロールと双璧と言っていいだろう。


 だが、イマイチ強さがピンと来ない。弱いゴブリンはともかく、人間より強いオークも俺ならば一捻りだ。オークが微妙な強さだったので、オーガがどれくらい強いか想像できない。


「別にオーガを退治しなくていい。薬草に詳しい者が居るので、同行者として連れて行って欲しい。それで、オーガが現れたら、守って欲しい」

「はぁ……護衛とか、経験無いですけど、いいですか?」

「ああ、出来るだけでいい。そいつもベテランの冒険者だからな、ある程度は自分でどうにかするさ」

「それは助かります。今日、早速行っていいんですか?」

「下の階に居るはずだ。話はつけてあるから、受付に言ってくれたまえ」


 話はそれで終わりのようだ。厄介な仕事を押しつけられたのかもしれないが、どうもピンと来ない。オーガの強さがわからないからだ。


 オーガが俺にも敵わないような相手だったら、仕方ないので同行者という人を抱えて逃げればいいと割り切ろう。こう見てもオオカミを余裕でぶっちぎる健脚だし、人を一人抱えても問題無いだろう。


 階下に降りて受付嬢に話すと、すぐに俺の同行者という人を紹介してくれる。


「こちら、ジーモスさんです」

「ジーモスだ、よろしく」

「リンです。よろしくです」


 ジーモスというおっさんは痩せて小柄なおっさんだったが、顔つきが険しく、雰囲気だけ見れば相当なベテランだった。フードを被った姿で、素人の俺から見ても隙が無い。


「それじゃ、よろしく頼むぜ。一応、そこそこは戦えるが、俺はシーフだから、戦いが本職ってわけじゃない」

「わかりました。素人のぺーぺーなんで、色々と教えてくれると助かります」


 多分色々とどやされることになるだろうなと思いつつ、俺は頭を下げた。


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