二百一日目 あの山を越えろ
女神であるメガン様の宣託に従って、西に旅をしたところ、黒竜と龍のハーフであるミシラという少女……いや、幼い竜に出会った。そして身柄を引き受ける話になった途端に、若い赤竜に襲われた。
竜と戦う覚悟はしていたが、何の前触れもなく赤竜と戦うことになるとは俺も思わなかった。襲ってきた竜を返り討ちにしたので、本来ならばドラゴンスレイヤーになったと小躍りするべきなのかもしれないが、そんな気持ちにはなれない。ドラゴンという生物は、俺が今まで戦ってきた相手より一桁上の存在に感じられたからだ。
「竜を倒したのよね……」
俺と同じ気持ちなのか、岩に潰されている赤竜の姿に、フーラが呟く。呆然という姿が似合い、それはヴォルフもカルムーラも同様だ。まあ、唖然とするのは無理もない。前の世界で言えば、暴れ牛を素手で倒したというような無茶なことなのだろう。
「この竜がまだ若いから良かったな。戦い方がまだまだ青かった」
ジ・ロース先輩だけが冷静だ。魔神なので、幾つもの竜をその目に見て来たのかもしれない。
「こんなに大きいのに!?」
「何を言っている。竜なんて、小山のようなサイズのやつはごろごろおるぞ。齢を重ねれば重ねるほど、大きく、そして強くなっていく」
先輩の愚痴に、フーラ達はますます驚いている。
空を飛んで魔法も使えて、なおかつ防御力がアホみたいにある鱗をつけたやつが山ほどいるのか。この世界が急に危なく見えて来た。おまけに人間と違い、修行なんかしなくても年齢によって強くなるという。本当に化け物だ。
「サキュバスとはいえ、赤竜を倒してしまうとは……驚きました」
「いや、フーラやジ・ロース先輩の手助けが無かったら、生きてはいなかったでしょう」
「人の女神が選んだ御使いというのが、はっきりとわかりました」
ナジカが頭を下げて来る。
「あらためて、娘を頼みます」
「わかったわ。とりあえず、東を目指しましょう」
メガン様のお墨付きがあるとはいえ、胡散臭いサキュバスに龍が頭を下げられるのは、なかなか出来ることではないだろうな。本人が強くないので、苦肉の策かもしれないが。
「たのみます」
「任せて頂戴」
ミシラも幼女らしい辿々しい言葉で言うと、ペコリと頭を下げてくる。なるほど、黒竜が彼女を置いていったのがわかった気がする。竜にしては、素直で善良すぎるのだろう。悪として育てるのは難しいのかもしれない。
「そうとなると早く逃げないと」
「竜は倒したのでは?」
「幾らでもやって来そうですしね」
怪訝そうに言うカルムーラに、俺は首を横に振ってみせる。
カルムーラはあっさり竜を倒したと思ってるかもしれないが、殴るたびに腕や足にダメージを受けていた俺は、二割くらいエネルギーが減っていたのだ。怪我がすぐ治る身体はありがたいが、エネルギー効率が悪すぎる。最初から岩で殴っておけばよかった。
「しかし、竜は飛んでくるので、逃げてもすぐ追いつかれるのでは……」
「足で移動したらね」
俺は岩と竜をアイテムボックスに放り込む。ミシラとナジカが竜の巨体が急に消えたのを見てびっくりしている間に、俺は全員を連れて瞬間転移した。
「こ、ここは!?」
「……グラパルスリニアか」
キョロキョロと周囲を見渡す仲間たちと対照的に、ジ・ロース先輩はすぐに反応する。長い塀が続く巨大な屋敷の門前に俺達は移動してきた。彼女が住んでる家の前だから、当たり前だろう。いつ見てもどでかい屋敷だ。
「アロース王国の首都か」
『そうです。こちらは我が家ですので、皆さんどうぞ』
マトーシュ王女が素早く龍の親子を招いてくれる。見知らぬ声に驚きながらも、二人は魔神を宿した王女についていく。瞬間移動で連れて来られたのは、即座に理解したらしい。
「何で我が家の前なんだ」
「東を目指すにも、まずは汚れを落としていった方がいいと思ったんですよ」
ジロリとこちらを見上げるジ・ロース先輩に、俺はウィンクしてみせる。うーむ、片目を瞑るだけなのに、やはり慣れないな。だが先輩は少し顔を赤く染めると、プイとそっぽを向いた。
先輩はあまりいい顔をしなかったが、館に入った俺達をメイドは甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。王女であるマトーシュが歓迎してくれているので、メイドとしてはそちらが優先らしい。
埃まみれのミシルだけでなく、フーラやヴォルフなどの仲間、さらには変化のおかげで汚れない俺まで風呂で洗ってくれた。メイド服の妊婦エルフ達にご奉仕して貰うというのは、貴重かつ何となく背徳的な体験だった。
「いやー、久しぶりのお風呂は最高ですね。おまけにメイドさんまで」
「私のメイドなのだが……」
風呂上がりにリビングルームに出てきた俺に対して、ジ・ロース先輩が目を細めて非難する。先輩は大勢のエルフでハーレムを作ってるわりには、俺が彼女たちにサービスを受けるのは気に食わないらしい。
『メイドの給金を払っているのは私ですが』
「うっ……私の嫁達だ」
『嫁に食わせて貰う人間のことを何と呼ぶのでしたっけ?』
「ヒモ?」
「ふざけるな、ヒモなどではない!」
寄生相手と俺に対してプンスカ怒るジ・ロース先輩は妙に可愛い。とても魔神とは思えないな。
「それで、どうするのだ? 東に向かうのだろう」
「そうですね。そのつもりですけど……」
『しばらくこちらに居ても構いませんが』
「いや、すぐに出発しようと思っています」
メイド長のロザリアがリビングのテーブルに紅茶を置いてくれる。至れり尽くせりのサービスに完全にリラックスしてしまう。しかし魔神どころかサキュバスが居ては、マトーシュ王女の評判に傷がつくだろう。
「竜の感知能力の広さがわからないから。距離を取ったけど、こちらに向かっているかもしれない」
「若い竜がほとんどだったが、確かに侮ってはいけないであろう」
俺の意見に先輩もコクリと頷いて同意する。今日戦って分かったが、竜というのは本当に強い種族だ。若い竜だけで、あれほどの強さを誇るとは思わなかった。
「グラパルスニアの都に竜を呼び込んではいけないでしょう。冒険者がいっぱい居るとはいえ、迷惑以外のなにものでもないでしょう。幸いにも世界の背骨までは転送できるから、私とミシラ、ナジカで東を目指してみます」
『追い出すようで心苦しいですが、よろしくお願いいたします』
「若い竜でも複数現れたら、我でも対抗できるか怪しいしのう。自力で超えて貰うしかなかろう」
俺は第六感が無いので、竜が追ってきているかはわからないが、大都市を犠牲には出来ないだろう。ナジカが人間の姿で逃げ回っているのを見ると、用心を重ねた方がいい。
ジ・ロース先輩が入室した自分の娘をくすぐるのを見ながら、ロザリアがいれてくれた紅茶を飲んで一息いれる。ここ最近ゾンビを潰して、旅を続けてばかりで、休む暇も無かった。ヴォルフ達と喋りながら話す旅路もいいが、休むのもいいものだ。そもそも俺は横になって寝ることはないし、ここ最近はエネルギーが低調だったので、夜は精気を求めてウロウロしてたしな。
お茶をたっぷり楽しんでいるあいだに、龍の二人と他の仲間達もリビングルームへとやってきた。
「あら、かわいいね」
「……そう?」
俺が微笑みかけると、ミシラは恥ずかしげに目を伏せる。
ナジカは清潔そうな服、ミシラはレースで縁取られた白いドレスに着替えていた。風呂にも入ってさっぱりとしており、二人とも相当な美形なのが見て取れる。美少女のミシラに母性を刺激されたのだろう、妊婦のエルフ達は彼女を着せ替え人形にして楽しんだようだ。
「さて、本当なら一週間くらい、この離宮で過ごしたいところですけど……」
「一週間も居候する気だったのか」
『あら、貴方はそれ以上に居候してますけど』
呆れる先輩にマトーシュ王女がツッコミを入れる。長年の宿主だからか、魔神に対しても王女は辛辣だ。
「どれだけの竜が追って来ているかわからない状態ですから、すぐにでも東を目指すべきでしょう。幸いにも世界の背骨の麓までは瞬間移動で行けます」
「山脈を越えるだけですか」
「私に任せてくれれば、龍に戻らなくても越えられると思うわ。距離も大分稼いだし、ドラゴンの形態にならなければ、追手も撒けると思うわ」
ナジカに向かって俺は頷く。安心させるように俺はミシラの頭を撫でてやると、嫌がらず受け入れてくれる。いきなり会った相手でも、生まれたばかりなので、好意を向けられると素直に受け入れるのかもしれない。
「問題はただ一つ、私とミシラが東に行っているあいだ、亡者の森に私が行くことができないのがね……」
「……わかりました。しばらくのあいだですが、私がメガン様の聖杯を守ってみせます」
「頼もしいわね。助かるわ」
おお、さすがはヴォルフ。はっきりと言い切るなんて、男前だ。俺なんかは、元日本人なんで、そんなこと頼まれたら、言葉を濁してしまいそうだ。
「フーラ、ジ・ロース先輩、それとカルムーラ。良ければ私が戻るまで、ヴォルフの手助けをして欲しいんだけど」
「亡者の森に行くのよね。報酬を出してくれるのなら、頑張るわよ」
「それは大丈夫。赤竜の身体が丸ごと手に入ったから」
「……よくまあ、丸ごと持っていられるわね」
不承不承というフーラを、何とか説得する。幻術が得意な彼女は、幻術が効かない相手が多いアンデッドと相性が悪いという話を聞いている。剣技で頑張って貰うしか無い。
『竜の遺骸を売る場合には、是非とも我が国でお願いします。ジ・ロースをヘルプに行かせますので』
「我は小間使いでは無いのではないのだが……」
マトーシュ王女は頼もしいな……。国を率いる王族っていうのは、タフじゃなきゃやってられないんだろうな。
ヴォルフ、ジ・ロース先輩(マトーシュ王女)、カルムーラ、それにフーラを瞬間転移を使って、俺はノーザテインに置いてきた。俺より強いヴォルフが任せろと言ったので信用していいと思うのだが、心配そうなカルムーラを見ると、どうしても不安になる。
山程冒険者と武装神官がいるとはいえ、戦えない普通の神官も多いのだ。十大神の神官を多数率いてきた身としては、責任を感じる。しかしここは女神の神託を信じるべきだろう。
「人間の身で見ると、巨大に見えますね」
世界の背骨の麓に移転すると、ナジカが目を細めて山を見上げる。確かに凄まじい山脈だ。以前の世界で言えばヒマラヤ山脈以上かもしれない。山の頂きはあっさりと雲を突き抜けている。
「まあ、なるべく安易なルートを通りましょう。別に天頂を目指すわけじゃなくて、向こうに抜けるのが目的ですから」
俺はミシラの身体をひょいとお姫様抱っこする。ミシラは嫌がらずに、素直に抱きついてくれる。良かった、これなら運びやすい。
「ミシラ、いくわよ」
「うん」
俺は岩を蹴り、ゴツゴツとした山を登り始めていく。サキュバスであるリョウの身体だと、やはりジャンプ力が桁外れだ。一回で7から8メートル近くも登れる。足場が崩れても手元のムチを飛ばして引っ掛けられるので、何の問題もない。いざとなれば、飛べはしないが翼で滑空もできる。
「大丈夫?」
「うん」
俺の問いかけに、ミシラは勢いよく頷く。ピョンピョンと飛び上がるのが楽しいらしく、小さく可愛らしい嬌声をあげている。
「ま、待って下さい!」
ナジカは飛行して追ってきているが、俺達に追いつけていない。竜の翼ではなく、秘術魔法の『飛行』で慣れない方法で飛んでいるかららしい。
俺はナジカに合わせて、時たま安定した岩場で立ち止まる。
「ミシラは生まれてどのくらいなの?」
「ん……一ヶ月」
「一ヶ月しか経ってないの!?」
驚く俺にミシラが頷く。
彼女が生まれてすぐに見たものは、兄達を連れて出ていこうとする母親と、それに詰め寄る父親だったという。そしていきなり母親と別れて、ナジカと共に逃避行が始まったという。
優しい父親が居るとはいえ、生まれていきなり旅に出るのは寂しかっただろう。竜の中には卵を産んでそのまま放っておく種も居るそうだが、龍は子供が大きくなるまで育てるのが多い。成長しないままの旅は辛いに違いない。
「眠いのに起きてなくちゃいけなかったり、お腹空いたりするのが辛かった……」
「そうよね」
岩の上に腰掛けながらミシラとお喋りする。何というか、こんなガールズトークは初めてだな。
「お肉食べる?」
「たべるたべる」
アイテムボックスからオークの腕肉を取り出すと、ミシラは喜んで食べ始める。亡者の森に遠征に行くということで、アイテムボックスには万が一のために、普通の食料もどっさり入れてある。俺が食料不要でも、随行の人間には必要だからだ。
タンドリーチキンのように焼いてあるオークの腕肉を、ミシラはモリモリと食べる。生まれて一ヶ月の幼女とは思えないな。5から6歳児に等しいだろう。山の丘陵沿いにゆっくりと飛んでいるナジカを見ながら、のんびりと過ごす。
「リョウ……でいいんだよね」
「この姿はリョウね。リン、リオーネ、リリィ、リランダ、リグランディア、リモーネ、リガクラウ……色々あるけどね」
「わぁ……」
コロコロと姿を変えると、ミシラは小さい口を開けて驚いている。
「リョウは何で私を助けてくれるの? 神様にお願いされたから?」
「メガン様にお願いされたのは、ナジカやミシラと会うことだから、助けてとまでは言われなかったわね」
「それならなんで?」
「私は……困っているって助けを求める人が居たら、なるべく応えるようにしたいと思っているからかな」
改めて何で助けたかと聞かれて、少し考えてしまった。ここの地下に住むオークを混乱させたのも、亡者の森にわざわざ行ってアンデッドに喧嘩を売ったのも、一歩間違えれば大惨事を引き起こすからだ。オークに関しては既に問題になっていた。人を守るために、ごく自然に俺は動いていた。
何で人を助けるかと聞かれたなら、俺は余裕があるからだろう。精気さえある程度あれば生きていけて、疲労を感じずに睡眠も要らない。信じられない怪力、鋭敏な感覚、強力な神聖魔法と、無敵とは言わないが尋常でない存在だ。そんな力を持っているから、偽善とか考えずに自然と動いていた。
この力を振るわなければ、この世界に呼ばれた意味はないだろう。
「私はサキュバスの身体に、人の心を持っている。だから、人のため、そして親しくなれる異種族達にも手を差し伸べたいと思っているのかもしれない」
「……リョウは凄いね」
「ちょっと、言い過ぎたかもしれない」
ミシラの尊敬するような瞳が眩しい。俺は彼女に笑いかけてごまかす。偉そうなことを言ったが、俺がしていることは、ほんの小さなことだろう。
「すみません、遅れてしまって」
生まれて一ヶ月の幼竜とお喋りを楽しんでいるうちに、ナジカが追いついてくる。とりあえず俺の視界から離れない程度に先行して、ときたま近くに来るまで待っている。
「羽とは勝手が違うから仕方ないでしょう。飛べるだけマシで、私なんて風乗りしかできないから」
俺は自分の羽を出して、ピコピコ動かしてみせる。どうもこの羽根は鳥みたいに羽ばたいて飛ぶのではなく、何らかの魔力を使って飛ぶようなのだが、俺にはどうやるか見当もつかない。
「とりあえず、また先に行って下さい。ゆっくりと昇っていきますので」
「了解です」
ミシラを抱っこすると、再び俺は岩山を猛烈な速さで跳び上がっていく。サキュバスの驚異的な身体能力があると、飛び石を踏んでいくような感覚とか変わらない。再び大幅にナジカと距離が離れていく。
しかし、世界の背骨は本当に標高が高い。低い山の山間を越えようと目指しているのに、なかなか目的地点に辿り着かない。
休憩とお喋りを何度も挟んで、漸く山脈を越える地点があと一息というぐらいに近づいてきた。以前の世界と同じで高度が高いと、空気が薄いのがわかる。だがサキュバスには影響が無いのか、俺は全く平気だ。
「リョウ……」
俺が適当な岩肌に飛び降りたときに、ミシラが俺が着ている服を引っ張る。まあ、服なんて着てないも同然なんだが……。
「どうした?」
「お腹すいた」
「オークの肉食べる?」
「ちがうの、そうじゃないの」
ミシラは俺を見上げながら、首をフルフルと横にふる。
「魔力がたりないの」
「魔力? 今までどうやって補充してたんだ?」
「お父さんから補充してもらってた」
「ナジカから? どうやって?」
「こうやって」
ミシラは自分の人差し指を咥えてみせる。なるほど、ナジカは魔力を指から出して、吸わせて貰っていたのか。
後から聞いた話だが、竜や龍というのは特殊な生き物で、食物が無くても実は生きていけるそうだ。魔力を周囲から集めることが出来るからだ。だがきちんと食物や魔力を取れば、成長するので摂取するのが望ましいらしい。
おまけに吸収する魔力が少ないと、ドラゴンは眠くなってしまう。財宝の上で竜が寝こけていることが多いのは、周囲から集める魔力が少ないからだそうだ。強力な老竜ほど寝ているのは必要な魔力が多くなるため、睡眠を強要される。強大な竜がこの世界で大暴れしていないのは、大半が寝ているためだというが、そんな理由で世界の平穏は保たれているとは。
「うーん、私は指から魔力は出せないかな……」
全身これ魔力の生命体の俺だが、純粋な魔力を出すという能力は使ったことがない。誰か別のサキュバスに聞かないと、出来ないだろう。
「リョウはおっぱい出る?」
「は?」
唐突な質問で俺の思考は完全に停止した。今まで生きて来た中で、一切聞かれたことがない質問だからだ。
「龍や竜もおっぱいから魔力をあげるのが多いって、お父さんが」
なんだそりゃ? 爬虫類っぽい外見なのに、母乳が出るなんて……カモノハシ的な生物なのだろうか。いや、トカゲとかとは全く生態が違うのだから、有り得ることなのだろう。
「なるほど、そうなんだ」
「リョウはおっぱいは出る?」
「う、あ、その……で、出るけど……」
神聖魔法の『豊穣』は母乳の出が悪い母親や、子供を育てる必要がある女性のために、母乳が出るような効能がある。なので、それを使えば俺も母乳を出すことができる。なので、答えはイエスなのだが……。
「おっぱい欲しい」
「な、な……あぁ……」
ミシラが困ったように、縋るように俺を見る。それに対して俺は……。
俺は困っているって助けを求める人が居たら、なるべく応えるようにしたいと思っている。