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52.騎士団長と副団長

 冒険者ギルドの訓練場で鬼気迫るオーラを纏うシャルに最敬礼をしてすごすごと帰っていくルカをはじめ、ユウ達を見送ったネロの元に音もなく降り立つ2つの影があった。


「気配消して何していたんだお前らは」

「お姉様を『お前』呼ばわりしないでと何度も言ったはずですわ、ネロオジサマ」

 影の1つは金髪ツインテールの少女である。その口調と視線にはネロに対する敵意が見える。そして少女が『お姉様』と呼ぶ影も銀髪サイドテールの少女だ。その2人は衣服の他防具となるものは身に着けておらず、腰に剣を携えただけの軽装だ。その少女の容姿とは裏腹に、銀髪サイドテールの少女は老人のような話し方をする。

「軽々しく出歩くなとうるさい部下がいるものでな、目立たんように眺めるくらいよいではないか」

「目立たなければ出歩いていいってもんでもないと思うけどな」

「神都内だけで我慢しておるのじゃ、これ以上を我に求められても困る」

「そうですわ、お姉様は本来自由人。じっとしていてはお姉様の魅力を世に伝えられませんわ。それはこの世界にとって大きな損失ですの。おわかりですか? ネロオジサマ」

「それで? 何でわざわざここに?」

 ネロは金髪ツインテールの発言を悉くスルーし、銀髪サイドテールと話を進める。

「武名を轟かせた黒魔剣士ネロが弟子を取ったと聞いての。どんなもんかと見に来たんじゃよ」

「弟子……か」

 そう思われるのも間違いない。いや、実際そうなのだろう。ネロは駆け出し冒険者であるユウ達を特に可愛がっている。ユウ達との繋がりのきっかけはユウ達が神の子であることだったが、今ではもう神の子だろうが何だろうが関係ないとネロ自身思っており、先輩冒険者として可愛い彼ら後輩を鍛えてやりたいと思っている。その関係を師弟関係と言われれば否定はできない。ネロ自身、否定するつもりもなかった。


「あの子達を見てみてどうだった? シルフィ、イリーナ」

 先ほどまで残酷な冷気に包まれていたシャルは普段の様子で2人の少女に声をかける。シルフィと呼ばれた銀髪の少女は神都の騎士団長シルフィードその人であり、脇に控える金髪の少女イリーナは団長シルフィードに心酔していると名高い副団長だ。

「どうかと言われてもな。戦っている姿を見たわけじゃなし、佇まいだけから判断すれば、純朴という言葉に尽きるかの。真っ直ぐそうな奴らじゃ。トリッキーな相手に苦労しそうじゃのぉ。ネロと戦っていた拳闘士(ストライカー)の竜族、あやつと戦わせるのは良い訓練になると思うぞ」

「イリーナはどう見る?」

「わたくしがお姉様以外を見ているとお思いですか? 誰のことを言っているのかわかりませんわ」

 立ち姿だけを見てユウ達の性質を見抜くシルフィ。副団長となる者の目は節穴のようだが騎士団長となる者の目は確かなもののようだった。

「その一案もらった。今度やらせてみる。流石だな、シルフィ」

「さぁほらもっとですわ、もっと神剣と呼ばれるお姉様を崇めるのです」

 恍惚な表情でシルフィの腕を取り、ネロとシャルに上から目線で物を言うイリーナ。

 ギフティアの騎士団長シルフィ。別名、神剣のシルフィ。その剣技は誰もを魅了する美しさを放ち、圧倒的な強さを誇る。加えてシルフィは人族の容姿であるにも関わらず、人族の寿命を遥かに超えた時を生きているらしい。昔から彼女を知っているネロとシャルも、その発言が真実であるとここ数年で実感しているところだ。10年来の付き合いである彼女の容姿が、10年前から全く変わっていないのだから。

 そんなシルフィの素性を知る者は誰もいない。彼女自身がそれを話そうとしないからだ。しかし騎士団長まで昇り詰め、神剣と称えられ、ギフティアに尽力する彼女の姿を見れば、誰も彼女の素性を解き明かそうともしなかった。その容姿も相まって彼女はギフティアの人々から愛されているのだ。

 そしてその傍らにはいつもイリーナがいた。彼女は普通の人族である。ただ、幼き頃にシルフィに出会い、その命を救われてからと言うものの彼女のためだけに生きていると言っても過言ではない程にイリーナはシルフィに心酔している。シルフィと共に生きるために人族であるイリーナは並々ならぬ努力をし、団長であるシルフィの隣を歩く副団長という資格すらも自らの手で勝ち取った最年少の副団長だ。そのイリーナの容姿がシルフィの容姿を年齢的に上回るのもそう遠くないと思われる。その時、イリーナは何を想うのだろうか。大切な人を時の狭間に残し自分だけが老いていくことを、イリーナはどう受け止めるのだろうか。


 遠くない未来を思い描こうとして、ネロはそこで考えるのをやめた。目の前でべったりとシルフィにくっついているイリーナの表情は幸せそのものである。その幸せに水を差す考えなど、自分がすべきことではない。それにイリーナのその表情を見れば憂えた未来は些細な問題であると思えた。彼女なら、イリーナなら、どんな未来が来ようともシルフィの味方であることだけは間違いないのだから。





ここまでお読みいただきありがとうございます。


副団長ギルを困らせている団長シルフィードと副団長イリーナの登場です。

副団長が2人まで出てきました。残りの副団長はいつ出てきますかね(笑


それにしても登場人物が多くなってくると、

一話の進みが遅くなる気がしますが、きっと気のせいですね(笑


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