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生きる喜びを教えてくれたのは異世界に転生した君でした  作者: 727
第二章 迫りくる闇の脅威と愛おしさ
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38.五大魔神

イーストエンドからギフティアに戻ってきた天翔ける竜スカイドラゴン


いつものように、冒険の報告を行うため、冒険者ギルド本部を訪れる。

「それにしてもお前らは旅に出るたびに想像以上の土産話を持って帰ってくるんだな」

 

 渋みを帯びた声でガハハと豪快に笑うネロは僕達の戦果を自分のことのように喜んでくれている。約1か月ぶりのギフティア、そしてネロとシャルだ。

 僕達は祝宴のあと、ウィルの案内のもと少しだけイーストエンドの街を堪能してからギフティアまで帰ってきた。


『結婚式には呼んでくださいね、お二人の仲人も喜んで承りますよ?』


 などといつもと変わらぬ笑顔を振りまいて見送ってくれた面倒見のいいウィル。

 振り返った時に見えた予想外の寂しげな顔に、少しだけ僕も寂しくなったのは秘密だ。

 そんな寂しさもギフティアに着く頃には心の奥底に隠され、今は恒例、ネロへの報告の真っ最中である。


「ネロさんのせいで親玉討伐やらされる羽目になったんですよ?リズも危なかったんですから」


 結果だけ見れば無事任務は完了であり喜ばしいことは間違いないのだが、実動部隊の苦難は実動部隊にしかわからない。リズは魔神の一振りで死にかけたのだ。

 少しくらいは心配して欲しかった。


「確かにそこだけは悪かったと思ってるよ。まさか魔神が親玉とは思ってなかった」


「でも、いい教訓になりました。私の頑強ストレングスも魔神には破られるんだってわかってよかったです」


「そりゃそうだが、魔神の一振りを生身に喰らって腕が飛ばなかったリズの頑強(ストレングス)の方に俺は恐れ入ったよ。お前らが魔神を討伐したという報告書を目にした時は何かの間違いじゃないかと思ったくらいだ」


「そうね、あの時のネロをあなた達にも見せてあげたかったわ」


 その瞬間を思い出しているのかシャルは喉を静かに鳴らして笑っている。

 よっぽどな反応だったのだろう。しかし、その反応は僕達が事件を解決したことへの驚きではなく、敵が魔神であったことが要因だ。


「僕らが倒したその魔神について、教えてもらってもいいですか?」


 ネロはその目を輝かせながら頷くと席を立ち、書棚から何やら分厚い本を持ってくる。

 机の上で開かれたそれにはびっしりと文字が敷き詰められており、どうやらそれは神話とされている歴史とネロの研究の成果をまとめたもののようだった。見ただけで僕はその本の中身をネロの口から聞くことを決意する。


 ネロの研究成果によれば、

 魔神は邪神の直系眷属であり、その他魔族を統括する立場にあるもの。

 言わずもがな魔族を統括する絶大な魔力を有し、邪神戦争の折に邪神とともにこの世界を混沌たらしめた存在。

 魔神はその他魔族と違い、言葉を有し二足歩行で人族に近い見た目。

 魔神と称されるのは5人(人と呼べるかはこの際置いておく)だけ。


 ということらしい。

 文字にすればただこれだけのことなのだが、ネロは推測される当時の世界背景から人族その他各種族の関係性、邪神のとった策略、魔神にも確認された超能(ギフト)の存在など、何から何まで話し始めていた。そんな発言を聞き流し、その中から僕の頭に今残しておくべきものだけを拾い上げた結果だ。


 しかし、聞き流そうとした中でも特に1つだけ気になった言葉があった。


超能(ギフト)……って?」


 そう問いかける僕にリズもうんうんと頭を揺らす。

 同様にその言葉が引っ掛かったようだ。


「ん? この流れで突っ込み所はそこかよ。まぁ、この話をしてからお前達にちゃんと言おうと思ってたからいいが、超能(ギフト)っていうのはお前らの能力(スキル)のことだ。通常の能力(スキル)ではなく、異常なほどに強力な能力(スキル)。それが超能(ギフト)


 か、かっこいいじゃないかっ!

 エリーの話す竜族の伝承にも出てこない言葉なのに、ネロはそんな記録にまで自らの研究で辿り着いていた。

 ネロの研究熱心な姿勢には頭が下がる。でも……


「そんな記録があったなら、最初に話した時に教えてくれればよかったのに」


「記録はないぞ? 俺がそう呼んでるだけだ」


「オリジナルかよっ!」


 執務室に、悲痛な叫びが響く。

 やっぱり世の中のありとあらゆる事象には期待してはいけない。

 期待してもこうして裏切られるのだから。


「でもまぁ……これからは超能(ギフト)って言うようにしよう。かっこいいし」


「ねっ」


 そんな僕らのやり取りを呆れた顔で見つめるネロとシャルとエリー。

 僕達のこの熱い想いは、転生者である僕達にしかわからないのかもしれない。


「お前らの拘りどころが相変わらずよくわからんが、その言葉がこの世界に浸透すれば、俺の名も一層知れ渡るし、是非広めてほしいもんだ。話を戻すが、今回お前らが倒したというのは邪淫の魔神(ルードネス)だったな?」


「はい、そうです。見た目はゴスロリ系少女でした」


「ゴスロリ……?」


「あ、いえ、見た目だけで言えば漆黒のドレスを着て蒼白と言えるほどの白い肌の可愛らしい少女でした」


「あぁ、確かに、魔神の1人だ。少女の姿ということは、魔力が十分でなかったんだろうな。記録には少女の姿と淑女の姿がある。少女の時は魔力が少ない時らしい。よかったな、少女で」


 確かに。2人がかり、しかもリズの突きで隙が出来たからトドメを刺せたけど、僕の光速の突きが見切られたことを考えれば、物理的にダメージを与えるのは困難だったと思われる。

 それが不完全の状態だと言うのだから、自分達はまだまだ未熟者であることは間違いなかった。


「魔神にも超能(ギフト)があるって言ってましたよね?」


「あぁ。邪淫の魔神(ルードネス)がイーストエンドの国民を魔族化したのは、超能(ギフト)の力だと思われる」


 魔力が不完全だったにも関わらず、超能(ギフト)で国民を魔族化させる。

 その行為に、一体魔神にとって何のメリットがあったのだろうか。

 魔力を完全に復活させてから行動に移した方が魔神としてのメリットは大きいはずだ。

 万全でなかったことがむしろ僕達の救いであったのは間違いないのだけど、気になる。

 しかし考えたところで答えは出ない。不完全な状態であっても誰にも負けるとは思っていなかった、そんな慢心があった、ということにしておこう。


「他の魔神っていうのは?」


「残りの魔神は『殺戮の魔神(ジェノサイド)』、『略奪の魔神(グラブ)』、『虚誕の魔神(フォルス)』、『暴飲の魔神(ドランカー)』と言われている」


「容姿は? 男性? 女性?」


殺戮の魔神(ジェノサイド)は成人男性姿、略奪の魔神(グラブ)は容姿を自由に変えられるらしい。魔法で姿を一時的に変える、ということではなく、身体を奪うことで自分の身体に出来る。それが略奪の名を冠する理由なのかもしれないな。虚誕の魔神(フォルス)暴飲の魔神(ドランカー)については、特段容姿がわかるようなものは今のところない」


 殺戮の魔神(ジェノサイド)は名前からしてヤバい。殺人鬼のイメージしか湧いてこない。絶対に出会いたくない。


「でも、邪神の直系眷属なんていう存在が何でまた今になって出てきたのかしら?」


 リズの言う通りだ。

 しかしこれはもう、答えはわかっているようなもの。


「お前ら神の子が打ち払う闇、恐らくそれが魔神なんじゃないか?」


 ネロも僕と同じ結論だった。

 それはつまり……


「これから更に、他の魔神が復活するかもしれないってことだ」






ここまでお読みいただきありがとうございます。

魔神。果たして本当にこれから復活するのでしょうか。

そんなにポンポン復活はしないんじゃないかなぁと私は思っています(ぇ


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