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生きる喜びを教えてくれたのは異世界に転生した君でした  作者: 727
第二章 迫りくる闇の脅威と愛おしさ
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34.女神と天使

邪淫の魔神(ルードネス)を撃破した天翔ける竜(スカイドラゴン)一行は、ウィルに招かれ、イーストエンド王都へと向かう。

勝利の祝宴が開催されると、そこには誰もが唸る美の女神と天使が舞い降りたのであった。


 金色に輝く大広間にいくつも垂れ下がる大きなシャンデリア。

 その広間のあちこちには大きな絵画や美しき花々を生ける豪奢な花瓶が並んでいる。

 会場の前方は舞踏会上になっているようで、スペースがやたら開いていた。会場後方には料理が並べられたテーブルがいくつも設置されており、給仕がそれらに不具合がないか見て回っている。

 会場の前方に向かって右手には大きなガラス扉が複数あり、その先のテラスからは夕暮れに染まる中庭が見えるようだった。

 こんなセレブな光景はテレビでも見たことがない。まさに本を読んで妄想した王族のパーティのあり様そのものである。

 その広間で、高貴な装いをした沢山の男女が和気あいあいと談笑していた。

 場違いな空気に息が苦しくなる。


 僕達は今、煌びやかなその空間、イーストエンド王都エスタスの王城にいる。

 今回の国民魔族化事件の解決に寄与したことに対して、イーストエンドが祝宴を開いてくれたのだ。


 時は王城に到着した頃に少し遡る。

 僕達が邪淫の魔神(ルードネス)を倒して以降、新たに国民が魔族に変貌するという報告はあがって来ず、事件は無事に解決したようだった。


「此度の諸君らの功績、大儀であった。余は顔を出せぬが、存分に祝宴を楽しんでほしい」


「身に余る光栄に存じます」


 王城に到着するや否や、即座に玉座の間に通され、僕達はイーストエンド国王に謁見する事態となった。あまりにも突然のことでパニックになった僕だが、リズは堂々としており、僕はリズの動きを真似て膝をつき国王への敬意を示す。


 その後リズとエリーと別々の控室へと案内され、祝宴に参加する準備として着替えることとなった。

 確かに鎧を着て国家の祝宴に参加するというのはドレスコードに反するというものだ。

 侍女の案内のまま控室に入ると燕尾服の調子を確かめる複数の執事とウィルがいた。


 当然のことながら、僕は燕尾服など着たことがない。ウィルがいてくれたよかった。

 まずは着方を教えてもらわないといけない。


「そんな不安そうな顔をせずとも大丈夫ですよ。ユウさんはその場に立っていれば、執事が着替えを行いますので」


「え?!」


 これだから王族貴族というのは恐ろしい。

 人に着替えさせてもらうなんて恥ずかしくて仕方ない。

 戸惑っていると更にウィルが言葉を紡ぐ。


「ユウさんがそうやって戸惑うと思ってここにいてよかったですよ。私がいれば、少しは気が紛れるというものでしょう?」


 本当に気が利くイケメン紳士である。

 ウィルの言う通り、ウィルがいなければ僕はどうしていいかわからなかっただろう。


 そして無事に着替えを終えた僕は、リズとエリーよりも一足先に大広間へと向かい、その煌びやかな空間に呆気を取られることになったのだ。


「ねぇ、ウィルさん……この場で、僕達何かしないといけないってことありませんよね?」


「リズさんから目立つことはしたくないと事前に言われておりますので、特には何もございません。本来であれば主賓となりますので一言ご挨拶をいただくところではございますが、今回はそれはナシにしております」


 ほっと胸を撫でおろす。

 こんな大きな広間で大勢の高貴な人達に向かってどんな挨拶をしろというのか。

 もう一つの起こり得たであろう未来を想像しただけでビビりな僕は足が震えてしまう。


「あ、ユウ、お待たせ」


 ウィルとそんな話をしていると、リズ達も着替えを終えたようだ。

 声のする方に向き直るとそこにはほんのりと淡い青みがかった白色のドレスを身に纏う絶世の美女と、紅いドレスにその身を包む可憐な少女がいた。

 リズ達の存在に気がついた会場の人々はその姿にどよめき、歓声を上げる。


「へ、変……かな?」


 美しいだけでなく、恥じらうその姿も堪らなく可愛い。


「ユ、ユウ?」


 あまりの衝撃に固まってしまった僕にリズは心配そうにその瞳を向ける。

 ウィルとエリーに小突かれ、ようやく僕は意識を取り戻した。


「あ、す、すごいよく似合ってる。綺麗だよ、リズ。見惚れちゃってすぐに言葉が出なくてごめん」


 やっと捻り出した言葉は何ともありきたりな言葉。

 自分の語彙力のなさに嫌になる。

 それでも、僕のこの形容しがたい想いがリズに届いたのは奇跡と言っても過言ではない。


「ふふっ、ありがとう。ユウもカッコいいよ」


 そう言って喜びを露わに眩しく笑うリズ。

 僕はこの場に立ち会えることにこの上ない幸せを感じた。


「本当によくお似合いです。美の女神が我がイーストエンドに降臨されたのかと思いましたよ」


 ウィルめ……そういう言葉を事前に僕に仕込んでいてほしい。

 でも確かに女神レベルである。

 太陽ように煌くリズの金髪を空のように淡く青いドレスが、リズのその美しさを一層引き立てている。見ていて心が洗われる美しさだ。

 ってなんで最初にこういう言い回しで言えなかったのだろうか。


「女神だなんて、女神様に怒られちゃますよ。でも、ありがとうございます」


 リズは社交辞令と受け止めているのか、特段照れた様子も見せずにそんなウィルの言葉にそつなく対応する。


「エリカ様も、天使のように愛らしいです」


 そしてエリーへの誉め言葉も忘れないウィル。

 その言葉に満足そうなエリーの表情を見て僕は自身の気の利かなさを反省する。

 ウィルマジイケメン。見習おう。


「さぁ、ではみなさんお揃いになりましたし、始めましょうか」


 そう言うとウィルは会場前方にいる恰幅のいい男性に向けて手を上げる。

 ウィルの主人である宰相、その人である。

 宰相はウィルの合図に気が付くと、盛大に声を上げ、祝宴の開始を告げるのであった。





ここまでお読みいただきありがとうございます。

ご意見・ご感想・評価・ブクマお待ちしております!


次話も、次々話も、この続きでございます。


【↓主に更新ツイートですが、Twitterもやってます↓】

@Posi_Nega_TT

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