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生きる喜びを教えてくれたのは異世界に転生した君でした  作者: 727
第二章 迫りくる闇の脅威と愛おしさ
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20.伝説の始まり

ネロ達との会食。この会食が、ネロ達との絆の始まりだった。


泥酔したリズ。その可愛さは、今に始まったことではなかった。


寝る間際に感じた地震。この地震が、ユウ達の伝説の始まりだった。



 シャワーの音が聞こえて目を覚ます。


 隣のベッドを見るとリズとエリーがいない。恒例の2人のシャワータイムだ。

 とりあえず僕はその身を起こすと、水差しから水を飲む。心なしか、身体が怠い。少し動くと頭も重く感じる。昨晩はそんなに飲んではいないとはいえ、やはり初めての酒は身体への負担が大きいようだ。

浄化プュリフィケイション

 試しに眼を閉じ、毒素が消えて軽くなる自身の身体を想像しながら言葉にすると、いとも簡単に身体が楽になった。

「おぉ、こんなこともできるんだ」

 自分でやっておきながら驚きである。立ち上がり身体を捻ったり屈伸したりしても、身体も頭も異常なし。そんなことをしているとリズ達が首にかけたタオルで髪を拭いながらシャワーから出てくる。

「おはよ、リズ、エリー」

「おはよう」

「おはよ、ユウ……」

 いつもと変わらぬエリーに比べて、だいぶしんどそうなリズ。間違いなく二日酔いというヤツだろう。

「辛そうだね」

「もう最悪な気分よ。お酒を飲むと、楽しくてつい飲み過ぎちゃうのよね……」

 これは明確にリズの助けになれるかもしれない。

「リズ、ちょっとこっち来て座って。治してあげるから」

「うそ?!実現リアライズで治せるの?」

 辛いながらもその表情は期待に満ちている。小走りに僕のベッドに駆け寄り飛び乗ってくる。石鹸の匂いがとても心地いい。

「さっき、自分自身で実践済みだから、大丈夫だと思うよ」

 目の前に座っているリズの華奢な両肩に手を置き、僕は今一度、実現リアライズを発現する。リズの身体を淡い光が包み込む。さっき自分は眼を閉じていてわからなかったけど、こんな風になっていたのか。

 光の収束と共に、リズの表情が明るくなる。

「本当だ……治ったよ、ユウ。ありがと!」

 笑顔全開のいつもの快活なリズだ。この笑顔を見るためなら、モノは何でも試してみるべきだと思った。

「もう少しそのままでいてね。エリーもちょっとこっち来て」

 不思議そうな顔で僕の前にいるその2人の肩にそれぞれ手を置く。

瞬間乾燥インスタントドライング

 いつも乾かすのに時間がかかっていたリズとエリーの髪の毛は瞬時にサラサラに乾く。

「え?!」

「わぁ」

 リズとエリーが感嘆の声を漏らす。

「うわ~すごい! っていうかユウ、いつも湯上りに髪の毛が濡れてないと思ったら、こういうことだったのね?! 何で今まで教えてくれなかったの?!」

「いや、だって、多分これ、身体に触れないと出来ないし。乾かしてあげるからリズの身体を触らせて、なんて言うの、気持ち悪くない?」

 そう言うと、リズは噴き出して笑う。

「その言い方は確かにやらしい感じだよ、ユウ君。何故だかわかるかい?」

 何故だろう。

 呆け顔をしていると、リズはチッチッチと指を立てて左右に振る。

「その言い方だとね、乾かすよりも、私の身体を触りたいって言うのがメインに聞こえるからだよ。さっき二日酔い治してくれたみたいにさらっと言って自然に触ってくればよかったのに」

「あ……」

 言われて恥ずかしさがこみ上げる。自分の欲望の一端が顔を出してしまった。

「気にしないでいいよ、ユウだってお年頃の男の子だもんね~?」

 そう言いながらリズは嫌悪感など微塵も感じている様子もなく、楽しげに笑っている。

 恥ずかしいけど、失望させた様子がなかっただけ安心である。

「もう! からかわないでよ。僕もシャワー浴びてくるから、そしたら早くご飯食べて依頼クエスト受けに行くからね!」

「ハイハ~イ、準備して待ってま~す!」

 二日酔いが治ったからか、やけに上機嫌なリズを背に、僕は風呂場へと入っていった。




 ◇◇◇




 朝食を終えて銀月を出る。ギルドに近づくにつれ、様子が何やら昨日までとは違うことを感じる。やけに騒がしい。

 ギルドに着くと、いつもなら壁面に貼ってある依頼クエストを物色している他の冒険者達がみんなホールに集まっていた。そしてそのホールで冒険者達の注目を浴びているのは、ギルド本部副代表のネロだ。

 何があったのだろうか。


「あー、冒険者諸君、静かに」

 ネロが話し出す。その様子は昨日の親しみやすいネロではなく、副代表としてのそれだ。

「昨晩、ここから北東に早馬で3日の距離に位置する街であるマウントニアの支部から、近くの村のそばに正体不明の大穴が開いたという連絡が入った。大穴の開いた衝撃で村は家屋が壊れ壊滅的な状態であり、応援の要請が来ている。現時点、マウントニアより物資の支援を出しているが、マウントニアにも少なからず被害が出ており、圧倒的に人手が足りていない。向かえる者は、マウントニアまで向かってほしい」

「報酬は?!」

 冒険者の中から誰かが叫んだ。

「報酬は出ない。これは有志の諸君へのお願いである。敢えて報酬を出すとすれば、帰って来た時に一晩の酒代を出してやれる程度だ」


 その言葉を聞くと、あからさまにやる気をなくしたであろう冒険者達がゾロゾロと依頼クエスト掲示板の前に移動する。ほとんどの者がマウントニアに向かう様子がないようだ。

 昨日の地響きの正体は、大穴の出現だったのか。確認するまでもなかったが、リズを見るとリズも僕を見て頷く。僕達は冒険者の反応がイマイチだったことに肩を落としているネロに歩み寄る。


「おはようございます、ネロさん」

「おぉ。昨日はお疲れさん」

「「ごちそうさまでした」」

 見る限りネロは特に二日酔いとかではなさそうだが、冒険者が無関心のこの現状に頭を痛めているようだ。

「僕達、向かいますよ、マウントニアへ」

 その言葉にネロの顔が明るくなる。

「ありがとう、助かる。マウントニアの冒険者ギルドの支部長宛には俺から連絡を入れておく。力になってやってくれ」

 もっと色々会話があるかと思ったが、さすがに副代表は忙しいのか、それだけ言うとネロは上階へと戻って行った。


「少し長旅になるから、買い物してから出ようか」

「そうね、ただし買い過ぎ厳禁。荷物増えすぎても馬が遅くなっちゃうから最小限のものね」

「大丈夫、わかってるよ」

 買い物をしながら、僕達はただ瓦礫撤去の手伝いとかをして、落ち着いたら帰ってくるだけ、というイメージでいた。

 しかし、このマウントニアへの旅が、僕達の冒険を大きく変えるきっかけとなったのだった。







ここまでお読みいただきありがとうございます。

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