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1分の腕時計

作者: F´

高校の入学祝いに父から腕時計を貰った。

時間を守る大人になれ、と言われて貰ったが、1日に1分正確に遅れる。

朝起きて1分針を進めることが、すっかり日課になっていた。


ある日のラジオで、時間と浮く概念は人間が生み出したものだと聴いた。

朝、太陽が出て次の太陽が出るまでが1日として、それを24等分して1時間とし、その60分の1が1分。さらに60分の1が1秒と定義した。

そうなると、この時計は残りの1分を刻むことなく、次の1日を刻み始める。毎日1分ずつ未来へ進んでいるのだ。

そう考えると、この時計は今・・・・・・3日と半日の未来を刻んでいる。

3日前、このバーで彼女に別れ話を切り出された。

半日前の朝、彼女のいつもと違う様子に気づいていれば、今ここで一人ではいなかったかもしれないのに。

もしも叶うのならば、この時計が3日半前に戻って、この歴史を変えてくれたらと願ってしまう。

ケータイは、ちょうど21時に切り替わった。腕時計を見ると35秒ほど遅れている。ウィスキーを飲みが、何度も、時が戻れたらと、何度も願ってしまう。

長い年月を眠ったまま過ごしてきたウィスキーには決してわからないであろう、この感情。

コップの中で、氷がカランと音を立て、口の中に感じる苦みと甘みが、少しだけ辛さを鈍くしてくれる。


時は前にしか進まない。

分かっていながらも、1日を遅く刻む時計を羨ましく思える。

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