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2045年4月16日午後5時00分
日本軍東京作戦会議室に約20人が集められた。
集められた軍の最高幹部や12系統長の中には細谷の顔も見て取れる。
「皆さんも知ってのとおり、今日の午後3時25分に、島根県の隠岐島、及び国境線防衛基地が北朝鮮軍に占領されました。」
この会議の進行役は国軍庁長官である、天埜蒼熾だ。
集められた人々は難しい顔ばかりしている。1人を除いて。
「中にはロシア軍と見られる輩もいるということです。」
「ロシア軍!? 何故ロシアが?」
動揺した声を出した眼鏡をかけた青年は、加速系能力の最高家である隼巳隼斗だ。
「それについては、先程正式にロシアを盟主とした共産主義・社会主義陣営から我々、自由主義、資本主義陣営に向けた宣戦布告が出されました。」
そう答えたのは天埜の秘書であり、妻である理子だ。
「そうか、戦か!! テンション上がるぜ!!」
そう叫んだのはこの、集まったメンバーの中で1人だけ戦争を楽しもうとしているら火術系能力の最高家である比槌火月だ。
火月や隼斗の各系統長は全員神融合異能士ではないが、それに匹敵する能力を持っている。例えば火月は火術系能力の長であるから、神融合異能士にも負けないぐらいの、火術系能力を撃つことが出来る。
「東西冷戦は終わったのではなかったのか…」
「第3次世界大戦の始まりだ…」
「日本はどうなるんだ…」
会議室には不安や恐怖といった、負の感情が渦巻いていた。
「おい、何怖がってんだよおっさん達!! 」
しかし、この比槌火月の言葉で払拭された。
「俺達は異能士として、戦う力を蓄えてきたじゃないか。自分たちの力を信じ、戦い抜けば勝てるし、平和な日常が取り戻せる筈さ!!」
「この若造が何言ってやがる?」とか言う雰囲気にはならず、「こいつが言っているのなら間違いない。」という空気になるのは、火月の凄さを皆が知っているからだろう。
「そうだよな、何とかなりそうだよな。」
「おし、いっちょやってみるか!!」
「そうだ。日本の技術力に勝る国など無い!! 我が国の異能士は世界最高峰クラスだ!!」
そんな中、曽々木光騎という眼鏡の、陰湿そうな感じの国軍庁副長官は思い出したというような顔をして提案する。
「長官、試作品を使ってみては如何です?」
「試作品とは?」
細谷は「聞いてないぞ」と言わんばかりに細谷が曽々木に食らいつく。
すると、これまたわざとらしく思い出したというように、手をポンと叩いて説明する。
「そういえば、細谷参謀長には話してませんでしたね。試作品とは全国の世界最高峰クラスの異能士や特別な異能士を集めた特殊作戦群なのですよ。」
「うむ、それはいいな、実力も見れるし。では試作品を出陣させる。異論のある者は?」
天埜は頷いて、軽くあたりを見回すが、当然の如く手を上げる者は居なかった。
「では、郡長の大和日陽里には明日の朝10時の出陣の命令を出せ。」
「や、大和、日陽里?」
細谷の呟きに応えるものは居なかった。
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2045年4月17日午前9時30分
ここ、日本の航空母艦『勇』の作戦会議室に、日本軍異能士特別作戦郡の軍服を着たメンバーが集められていた。
今年日本異能士育成駒沢高校に入学したばかりの大和日陽里を郡長とし、30名の特異異能士が集められた。特別作戦郡は日本政府Sランク機密情報として保護されている。この郡は極秘任務や諜報活動などに使えると期待されている。他国に情報が漏れたりしたらまずいので、国民にも知らされていないし、参謀長である細谷にも知らせないという、徹底して情報漏洩対策をしている。だが、まだ試作品なので、うまく機能するかは未知数である。なので、この出撃はこの郡のテストも兼ねている。
「作戦会議を始めます。」
郡長である日陽里が、会議室に入っている30名に話しかける。
「月夜郡長補佐、状況を。」
「はい。今、隠岐島は金鎧石率いる約500の北朝鮮軍により占領されています。隠岐島北部の港には敵航空母艦3隻も侵入しており、島民は国境線防衛軍が逃がしたそうですが、防衛軍は半分が戦死、半分は防衛基地での籠城戦を強いられ、厳しい戦いになっています。」
「ご苦労様。説明してもらった通りに隠岐島、及び防衛軍は危機的状況にあります。我々の目標は防衛軍と協力して隠岐島の奪還。それに、生き残ることです。思う存分暴れてください。期待しています。」
「「「おおーッッ!!」」」
作戦会議室のボルテージが最高潮に達した。
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2045年4月17日午前10時00分
戦闘が今まさに始まろうとしている。俺は郡長補佐という役割を担っているが、俺と同じ黒いフード付きのローブみたいな軍服を着た弟の海琉と一緒に先陣に立っている。
「月夜、能力は隠したほうがいいか?」
「この人数差だから、開放していいよ。それに相手は知の神融合異能士である金鎧石だ。もう俺達のことも知れ渡っているはずだ。」
「分かった。派手に行かしてもらうぜ!!」
まず海琉が動いた。
海琉が地面を1回コツンと叩き、その振動を振動系能力で増幅させて円心状に広げ、敵の位置を把握する。敵が隠れている穴だらけの住宅街の角に、海琉が得意とする水術系能力である、『水の槍』を放つ。敵の生体反応を壁諸共粉砕した。まず3人屠った。
角の奥に隠れていた敵2人も、異能士ではなく、銃を持っている。仲間が無残に殺されたことに怒りを感じ、2人に向かって銃を乱射してくる。
しかし、当たらない。
2人に到達する事すら許されない。
2人は空間系能力を使い、空間をねじ曲げ、亜空間へと弾を吸い込ませているのだ。
これを見た敵兵士は戦意を失う。しかし2人はフードを被りながら、容赦無く近づき、敵の頭を指で弾く。
グシャッッ!!
果物が潰れるような音と共に2人の頭が弾け飛ぶ。
2人の黒い軍服に返り血が飛び散る。
その飛び散る鮮血を合図に、特別作戦郡の隊員も動き始める。
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その後はまるで地獄だった。
特別作戦郡の隊員が動けば、必ず敵兵の断末魔が轟き、鮮血が噴き上げる。
その光景が幾度と無く繰り返される。なす術もなく全滅させられるかと思われたが、北朝鮮軍が動いた。
「グハッ!!」
前線で戦っていた特別作戦郡の隊員の方から悲鳴が聞こえた。
特別作戦郡の軍服である、黒いフード付きのローブの破片と共に血肉が宙に舞う。
死体が地面に音を立てて落ちたとき、声が聞こえた。
「この程度か日本人共。」
敵将軍、金鎧石の声だった。
これからどんどん投稿遅くなります。
時間軸のズレ、内容がおかしい、誤字脱字等ありましたら、御指導お願いします。