現実が夢で夢が現実
そこは見たこともない場所だった
そしてあり得ないことが起きていた
雪が降っているのに桜の花びらが宙を飛んでいた
雪はしっとりと穏やかに降り積もり、大地は銀色に輝いていた
そこ淡いピンク色の桜の花びらがぱらぱらと散っていて
幻想的な美しい風景だった
これはきっと夢だと思ったけれど、この風景をもっと見ていたかった
ふと気付くと木の根元に誰かが立っていた
僕は木に近づくことにした
近づくとその人は女性であることがわかった
彼女は長い髪でほっそりとしたシルエットだった
長い髪に雪と花びらがついていてなんとも不思議なものであった
彼女はこちらを向いて口を開いた
「……」
何を言っているか聞き取れない
もう一度聞こうとしたその時
僕の場所の地面だけ崩れ落ちていき真っ逆さまに落下していった
僕は暗闇に引きづりこまれていき、彼女の温もりを知ることができなかった
最後に無機質な機械音が聞こえた気がした
しばらく無が続いた
何年も経った時柔らかな美しい声が聞こえた
「ごめんね」
そう言われた気がした
その声の主が彼女であるとすぐに僕は悟った
僕はどうして謝っているのかわからなかった
「どうして謝る?」
すると彼女が言った
「私とあなたは近くて遠い」
僕は首をかしげた
「あなたは現実、私は夢。でも近づきすぎて逆になってしまった」
え……
「私たちはけして交わってはいけないついになる存在だから」
また近づくことができれば戻る……?
「そういうこと」
この暗闇はあの夢とは程遠い
だから無理かもしれない
でも彼女の夢がこんな暗闇では悲しいではないか
「いつでもいい。待つよ。それまでに明るい夢に頑張ってするね」
僕はそれしか言えなかった
幸せな僕のついになる彼女はこんなにも不幸なのだから
彼女は言った
「……」
僕は涙が溢れた
はやく知っておきたかった
僕はまたいつもの風景に戻っていた
彼女の声ももう聞こえない
彼女はまた消えてしまったのだろうか
彼女のいるあの場所はまた美しい場所にしておきたい
そう願い僕はこれを記している
彼女が最後に言った言葉
それは……
「もう目の前にいるんだよ。ばいばい。」
僕は彼女の夢を明るくできなかった