笑いと涙
「え?」
「お前は逃げるのかと聞いてるんだ。」
怜央は驚いて、堂林の方に振り向く。すると、手をあげていた、堂林が見えた。
怜央はまたもや驚き、そして、急いで歯を食いしばり、目を閉じた。
しかし、いつまでたっても、体に衝撃を食らう事はなかった。
これは、目を開けたら、殴られるパターンかなと思った、怜央は、ばれないように薄く目を開けた。
すると、目の前に、笑いながら、タバコをふかしている、堂林がいた。
怜央は今度は驚いたという言葉では済まされない程驚いた。(済まされないのではないのか?)
「お前、俺がここで殴って熱く人生論を語るとでも思ったのか?
俺は「きんぱち」でも「きんぱつ」でもない「丸刈り」だ。
ここは「スクールウォーズ」でも「ごくせん」でもない「せんごく」だよ。」
あまりのつまらなさに開いた口がふさがらないとはこういうことを言うのだろう。
「あ、はい」できるだけニヤけた顔で言った。
「冗談だ。愛想笑いもしなくてもいいから。お前が緊張しているんだろうと思ってな。」
愛想笑いの部分だけやけにトーンが違うように聞こえた。
「あ、ありがとうございます」ここは俺もボケるべきか突っ込むべきか迷った末、こう言った。
すると、何かで叩かれた。
驚きもしなかったが、またボケかよと思い、事務的に後ろを向いた。
手に持っていたの辞表だった。字がとてもきれいだった。
「え」怜央は驚いたという言葉では済ましてはいけない程驚いた。
怜央は何かを言おうとして、口を開けようとした時、堂林の目に涙がたまっているのが見えた。
そして、堂林は黙って首を振った。
そして笑った。堂林は笑ったら笑窪ができることに気付いた。涙が笑窪の横を流れ落ちた。
「今度あった時は金髪にしてると思うぜ。お前は丸刈りだろうけど。」
怜央もいつの間にか泣いていた。でも笑ってもいた。