歴史と未来
「我ら天野派の負けですね。」泉の処分が厳重注意に決定した夜、いつもの中隊室で堂林が言った。
「いや、平和な解決だよ。最もね。」
「なぜですか?」
「君はこの軍が2派に分かれているのはもちろん知っているね?」
「詳しい経緯などは知りませんが、ある程度は」
「なら、説明しようか。君もそろそろもう1個上の地位に上がってきそうだしな。
話は初代総大将の鷹匠貴に遡る。彼には2人の愛弟子がいた。
前々総大将の天野良孝、前総大将の泉雅久。
しかし、2人は事あるごとに意見が、衝突していた。
例えば、天野は和平派であり、泉は強硬派である。
そして、その2人はそれぞれ自分の部下たちに部隊の隊長やらせた。
そして、我が28部隊は現在もそうだが、天野の1番弟子であった、東郷隊長が就任した。
ついでに、初代28部隊隊長は天野である。
つまり、我が28部隊は天野の直系であり、天野派の中心なのだよ。
ここまでで、質問はないか?」
「ないです。」
「だろうな、顔を見る限りもう知っているようだしな。
ではこの続きを話そうか。では、なぜ泉の孫が我が部隊に入ってきたのか?
それは、まぁ体のいい人質なのだよ。
4年前の事件によって、隊に政府から調査が入った時、隊内の蔓延る、対立が調べられて、
その対立をよく思わなかった、政府が和解をしろと、迫ってきてね。
そして、その時、天野の孫も泉の孫も、軍学校にいてね。
まぁ学年は1つ違うんだけど。
そして、その2人が人質という事で、公としてはドラフトで純粋に指名したことになっているんだが、
政府も納得したわけだ。」
「じゃあ何故泉は僕の班何ですか?」
「それは、東郷隊長の1番弟子が俺で、俺の1番弟子がお前だからだ。
つまり、お前は天野派4代目として、相手にも、俺たちにも思われているということだ」
話し終え、一条が堂林を見ると、話す前より、なんか凛々しくなったような気がした。
そのことが一条はうれしかった。何故なのかは自分でも分からなかった。
でも分からないままの方がよいと、何となく思った。