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新入りとノーリーズン

ユーラシア大陸の東端に浮かぶ、小さな島国日本は、隣国のように分断されていた。

日本共和国が沖縄、九州、四国、中国、近畿(三重を含む)の各地方で、

日本民主共和国がその他の都道県である。

そして、両国は軍を強化し、国際的に認められていないが、核も持っている。

ここは日本地方であり日本ではない。

だが日本人は願っていた。

日本が日本になるという当たり前のことを。


「そろそろじゃないですか。この28部隊も用意するべきですよ」と、一ノ瀬怜央が上司である、

堂林風雅少佐に言う。

「まだだよ。例え、戦争が始まったとしても、28部隊は拠点が高松だから、すぐに出陣とはいかない」

と、堂林が突っ込み様のないTHE正論を言う。

「こんなことを言う様じゃ、出世は俺のほうが先かな」榎田亮大尉がニヤつきながら言う。

「先輩は43位。僕は5位。出世は僕のほうが早いに決まっていますよ。」

怜央が自信に満ちた顔で言う。

「おい、新しく入隊してきた子達だぞ。」堂林が2人の終わりなき話を制すように言う。

「これより、新入隊生の紹介を始めます。一同敬礼。」

「まずはハンモックナンバー15番。泉中尉からです。所属は一条中隊の堂林小隊です。」

怜央が声を小さくあげた。

「泉義久、出身は大阪、祖父は前日本共和国軍総大将泉雅久、父は第13部隊隊長泉長久大将です。」

怜央は声を大きくあげた。が、それは怜央だけではなかったようだ。その証拠に部屋中からささやき声が聞こえてきた。

そして、なぜか堂林の顔が曇った様に怜央は見えた。


この夜、堂林小隊の班長10人が堂林と共に中隊長室に来ていた。

「というわけだ。それを考慮して、泉を引き受けてくれるものは居ないか?」一条が問う。

10人の顔が険しくなっていた。獲物を狙う獣の目の様だった。

「なら、年が1番近く、副班長が異動になった、一ノ瀬班でいいな。」

突然の指名に一ノ瀬は飛び上がった。

「いや、僕はまだ経験が浅いですし・・・・」

「さすが一昨年のドラ1物分かりがGOODだよ。だからお前の班にしたんだ。」

「なら他の班に聞く必要がないのでは・・・・・」

「YES。ノーリーズンだよ。では解散。」

半ば呆れ、半ば怒っている怜央を取り残し、他の皆は部屋を出ていった。

カラスが鳴いたと怜央は思った。



次の日、さっそく訓練で、問題は起きた。

この日怜央率いる7班は、榎田率いる8班との合同訓練だった。

午前は特に何にもなく、午後も何もなく残り1時間の4時を迎え、

最後のランニングの時事件は起こった。

いつものように、最後方からペースの落ちてくる輩を叱咤激励していると、先頭を走っていた、

泉に、すぐ後ろにいた、榎田班の領元副班長が蹴りを入れたのだ。

すると、華麗なというとおかしい表現だが、その言葉がぴったりとくる回し蹴りで領元をノックダウンさせ、信じられないことにそのまま平然と走りだしたのだった。

さすがにこの行動には統率がとれていると評判の堂林小隊の隊員もキレ、何人かが泉を取り押さえた

それでも泉は顔色一つ変えなかった。怜央はこの時、生まれて初めて虫唾が走ったと感じた。

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