Magic Story
ある国に、それは美しい少年が居た。
ピアノを愛し繊細かつ大胆な演奏は、
聴く者を酔わせていった。
けれどそんな彼は生活には困って居ないが其ほど裕福でもない、そんな家から出たことがなく。
籠の中の鳥の様な生活に何も見出だせなくなっていたのだ。
そんな下らない毎日の中、その日は雨。
彼は自分の好きな天気の日に失踪した。
家に戻るつもりもなく、行く宛てもなく。
ただ死んでやろうと。
林の中を走り抜いた彼は崖に辿り着いた。
見下ろせば荒れた海が見えるから、
このまま死ねるのではないか。
暫く濡れた服を重く感じながらそんな事を考えていた。