”運命”って信じる?
またまた実験的に書いてみた作品です。内容はすごーく薄いです。(そんなものを投稿するな、って感じですが)
”二人称”という、特殊な視点を用いてみたのですが…… これって本当に二人称かな……?
「ねぇ、“運命”って信じる?」
女の子が、隣を歩くキミにそう尋ねた。
ちなみに“僕”は信じていないけれど?
「“運命”かぁ……」
問われたキミは、う〜んと唸って考え込む。腕を組んで頭を捻るその仕草は、どこか子供っぽくて可愛らしい。
そう言うと、キミは怒るんだけどね。軽くコンプレックスでも持っているのかな?
「私はね、信じてるんだ」
キミの答えを待ちきれなかったのか、彼女が先に答えを言った。
仰ぐように空を見て、温かくなり始めた春風に髪を靡かせる。
「だって、ロマンチックだと思わない? 自分にとって、世界で唯一人決められた人がいて、どんな偶然か、その人と巡り合える…… そんな奇跡が起る、って考えると……」
言いながら、彼女はちらりと横目でキミを見た。
そういえば言い忘れていたけれど、実は彼女はキミのことが好きなんだ。今までずっと隠してきたけどね。
周りの友達は、どんどん恋人を作って、幸せそうに語る。
それを羨ましいと思いつつも、それでも告白して、断られて、それで距離が開いてしまうくらいなら、ずっと“友達”のままでいい。そう考えてきた。
けれど、そんな“見つめるだけ”の恋に、彼女はとうとう満足できなくなってしまったのさ。
だから、勇気を出して告白しよう。そう考え、どう切り出すかを決めたのは、昨夜のこと。
「“運命かぁ”……」
キミはさっきと同じように呟いて、
「俺は信じないかな」
と続けた。
「えっ!?」
彼女は少し驚いて、そして少し悲しくなった。
本当ならこの流れのまま、「私の運命の人が、君であって欲しいな」と続けていくつもりだったのに、その機先を制されてしまったからだ。
キミは、そんな彼女を横目でちらりと見る。
そういえば忘れかけていたけれど、実はキミは彼女のことが好きなんだったね。今までずっと隠していたみたいだけど。
入学したばかりの頃、他人に声をかけることもできなかったキミに声をかけた最初の人、それが彼女だった。
その後、すぐの席替えで、隣の席になった。思わず“運命”を感じてしまう一瞬だ。
それからは青春の日々さ。教科書を忘れた時は、ドキドキしながら机をくっつけて、震える手で必死にノートを取っていたって聞いたよ。
それだけで幸せだったはずなのに、そんな“見つめるだけ”の恋に、キミはとうとう満足できなくなってしまったんだね。
だから、勇気を出して告白しよう。そう考え、どう切り出すかを決めたのは、ついさっき。
「だって――」
わずかに俯いた彼女を励ますかのように、キミは言葉を次ぐ。
「“運命”ってさ、“物理学”から生まれた言葉だっていうんだぜ?」
「それって、どういうこと?」
キミの口から出た思わぬ言葉に、彼女がきょとんとなった。
その顔を見て、キミは思わず胸が高鳴る。
興味なさげに欠伸を一つ。本当は、緊張していた所為なのと、深呼吸の意味を兼ねてのことだったんだろう? 憎たらしいね、この。
空を見たのも、努めて平静を装ってのこと、違うか?
「物理には色んな公式があるだろ? それこそ、ありとあらゆる“自然現象”を説明できるくらいにさ」
あ〜、無視すんナヨ〜……って、そりゃ無理か。
「うん。覚えるの大変だった」
彼女が楽しそうに笑う。
キミも楽しそうに笑う。
「だよな。その公式の中にはさ、色んな……パラメータ?ってあるじゃん。速度とか質量とか時間とか」
「うん。F = ma とかね。でも、それがどうして?」
「時間を考慮できるってことは、過去や未来のことも考えられるってことだろ?」
「?」
彼女はまた、きょとんとなる。理解が難しいらしい。
それを感じ取って、キミは説明をする。ちなみにこの観察眼は、彼女に少しでも気に入られるようにと、この一年で身に付けた努力の成果。さらに余談だけど、ファッションの勉強もしていた。こっちの成果は今一つみたいだけどね。
「今、俺達は時速五km で歩いてるとすると、十分後には?」
「ええっと…… ろ、六分の五km……」
「あはは。そうだね、六分の五で…… まぁ一kmくらい。つまり十分後には、駅前あたりにいるってことだ。ほら、未来の俺達がどこにいるか、わかっちゃったろ? 計算できるってことはすなわち、俺らの未来は、あらかじめ決められているってことになるんだよ」
「そんなの、わからないよ。もしかしたらどこかに寄り道するかもしれないし、駅の方に向かわないかもしれない」
彼女が当然の反論を返す。
しかしキミも、当然のように返す。
「うん、そうだね」
でも、それは別の話。その可能性だって、別の計算式を用いれば、計算が可能なんだ。それが物理学における“運命”という理論。
だから――
「だから運命なんて信じない」
あらら、先に言われちゃった。
「だれかが決めたレールの上を歩いてる、なんて、全然ロマンチックじゃないだろ? それだったら、俺は『運命とは自分の手で切り拓くもんだ』って言う方が、ずっとロマンチックだと思うんだ」
言うとキミは、彼女に向き直った。そして、自分を、彼女を安心させるように、一つ微笑む。
彼女もまたその笑顔を受けて、少しだけ頬を赤らめる。そして決意したように、一つ微笑む。
――『自分の運命は自分の手で切り拓く』
「「あの……!」」
それから、二人がどうなったか知りたいかい? これがね、傑作だったんだ!
実はね…… やめた。
これを読んだ“あなた”がもし、運命を信じる人ならば、彼らの行く末を占ってみてよ。
これを読んだ“あなた”がもし、そうじゃない人ならば、その時は“僕”に聞きに来て。
お茶でも飲みながら、彼らの“未来”について、ゆっくり語ってみようじゃないか……。
いかがでしたでしょうか?
書いた本人、よくわかりません。ごめんなさい。
読み返してみて、なんだか変な心地になっているんですが……
不快に思われた方がいらっしゃいましたら、深くお詫びいたします。本当に申し訳ありません。