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ゾンビもの!  作者: どぶねずみ
八岐市の怪物退治編
74/91

聖のラブキス大作戦♪ 前編  エクストラストーリー5

時間軸が少しずれます。


梨子視点です。

 9月になったにも関わらず暑さはまるで衰えず、むしろ夏はこれからだと言わんばかりに太陽は輝いている。


 私、遠野梨子はバスから降りた途端に噴き出してきた汗を拭いながら、にっくき太陽を睨みつけた。

「梨子さん。私は本陣に行きますが、あなたはどうしますか?」

 そう言ったのは、一緒にバスから降りたにも関わらず汗ひとつ掻かない進藤紅ちゃんだ。

「私は橋のほうに行ってみる。たぶん直以お兄ちゃんはそっちにいるから」

 私がそう言うと、紅ちゃんはその整った顔をわずかに歪めた。

「失礼ですが、そういうところ、梨子さんは直以先輩にそっくりです。悪いところを真似すべきではないと思いますが」

「あはは、自分でも自覚ある」


 なぜ私と紅ちゃんが直以お兄ちゃんと別々に周防橋に来たかというと、直以お兄ちゃんが私たちを置いて、さっさと隆介くんだけを連れて行ってしまったからだ。

 ただ行ったのではない。

 須藤清良先輩にするはずの谷川村での報告を私に丸投げした上で、だ。


「梨子、頼むわ。俺はほら、早く周防橋に行って部隊を掌握しないといけないから」


 直以お兄ちゃんは私の目を見ずに早口でそう言うと、逃げるように涼宮高校から出て行ってしまった。

 私と紅ちゃんは涼宮高校で直以お兄ちゃんに押し付けられた諸雑事(おみやげを忘れたことをさっちゃんにおもいっきりなじられたのも含む)をこなして、半日遅れで周防橋に到着したというわけだ。


 そして今、私はここの大将である木村大地先輩への報告を紅ちゃんに丸投げして、ひとり直以お兄ちゃんのところに向かっているのだ。


「お、梨子。戻ってきたか」

「うん、これからよろしくね♪」

「これはいよいよ攻勢が近いな!」

「そうだよ! 直以お兄ちゃんも来てるんだから」

 すれ違うみんなに笑顔で答えながら私は軽い足取りで歩んでいく。

 みんなが私なんかに声をかけてくれるのは直以お兄ちゃんの側にいるからだろう。直以お兄ちゃん様さまだ。

 そんなことを考えていると、私の想い人であるところの直以お兄ちゃんを見つけた。

 だが、直以お兄ちゃんは私に気付きもせず、さっさと歩いていってしまう。

 私は、直以お兄ちゃんに声をかけるのを躊躇った。

 直以お兄ちゃんの歩き方が、やけに荒々しかったからだ。

 あれは……怒っている?


 と、そのときだった。

「梨子~!」

 私を呼ぶ声に振り返ると、そこには私の、もうひとりのお兄ちゃんが駆け寄ってきていてた。

「あ、雄太お兄ちゃん!」

 私は雄太お兄ちゃんに思いっきり抱きついた。雄太お兄ちゃんは私を抱き上げ、1回転半ほど回って降ろしてくれた。

「雄太お兄ちゃん、元気だった?」

「ああ、こっちはぼちぼちだったな。おまえも元気そうで安心したよ」

 雄太お兄ちゃんは、悪戯っ子のような笑みを浮かべて私の頬を突付いた。

「こんなに丸まると太って♪」

「むう~! そういうことは女の子には言わないの!」

「痛、いて、わかった、悪かったって♪」

 私の駄々っ子パンチ(別名、ぐるぐるぱんち)で背中を叩かれた雄太お兄ちゃんは笑いながら早々に降参した。

 しかし、久しぶりに会うとはいえ一発でそんなことを言われるとは、私、そんなに太ったかな? 確かに谷川村ではおいしいものをいっぱい食べていたけど……。

「でも、酷い事とかはされなかったみたいだな。本当に安心したよ」

「うん、ありがとう。直以お兄ちゃんが側にいてくれたからね♪」

 雄太お兄ちゃんは再び悪戯っ子な顔を作ると、そっと私の耳元で呟いた。

「それで、直以との仲は進んだ?」

 言われた意味に頬が赤くなるが、ここで誤魔化すのは負けな気がした私は、思い切って言ってやった。

「……おでこにちゅ~してもらった」

 それを聞いた雄太お兄ちゃんは、人目もはばからずに大爆笑を始めた。

「もーお~! そんなに笑うことないでしょ!」

「はは、いや、悪かった悪かった」

 雄太お兄ちゃんは笑いすぎて出た涙を拭いながら謝ってきた。

 私は頬を膨らませて言った。

「でも、若いダンジョが一緒にいたのにそれしか進展しないなんてどっかおかしいよね! 直以お兄ちゃん、ヘタレすぎだよね!?」

「いや、たいした進歩だよ。直以がへたれなのは同意だけどね」

「え~、おでこにちゅ~がシンポなのぉ!?」

「そうだぞ。そんな簡単に事が進むんなら、とっくに直以のやつは聖とくっついてるよ」

 私は口角を下げた。言われてみればその通りなんだろうけど、なんか納得できない。

「……ねえ雄太お兄ちゃん。その、直以お兄ちゃんと聖お姉ちゃんは、その、どれくらいススンデルの?」

「……あ~、ノーコメントじゃあ、駄目?」

「だめ!」

 雄太お兄ちゃんは、しばらく逡巡した後、さらさらの髪を掻き上げた。

「まあ、いいか。別に付き合っているわけでもないし大したことをしているわけじゃないしな」

「じゃあなんにもないの? 私のほうが一歩リード?」

「なんの競争かは知らないけど、多分梨子は負けてる。あいつら、キスはしているから」

「……クワシク」

 私は一歩雄太お兄ちゃんに詰め寄った。



 雄太お兄ちゃんは、苦笑を浮かべて話し始めてくれた。

とりあえず陳謝を。

しばらく空けていたせいか、どうしても本編を書く筆が乗らず(贅沢な悩みだなあ)、外伝に逃げてしまいました。


次回は雄太視点で昔の話。


本編は、予定通り(?)11月中旬になりそうです。

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