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―第2話 銀の少年―

洞窟から抜け出し、ようやくまともな道に出たアルヴィナ。

途中、異常現象により、凶暴になってしまった魔物が襲ってきたが、そのたびに短剣を振るった。


「たく、異常現象も厄介ね~。」


自分が今倒した魔物の残骸をみて、顔を歪める。


「…ごめんね…」


ボソッとつぶやき、アルマに向かう。


アルマについたのは、ほとんど日が暮れた時間帯だった。

だが、日が暮れてもこの街は賑やかだった。


「相変わらず、賑やかね、ここは。」


キョロキョロと辺りを見渡しながら街の中を進む。

アルヴィナは中央部の広場に来た。

この時間帯になると屋台が出回るのだ。

アルヴィナの大好物である肉料理を激安で提供してくれる店だってある。

アルヴィナはその店に入る。


「おいちゃん、またマケてね♪」

「お!久しぶりだな、姉ちゃん。

またステーキかぁ?」

「アタリ。」


ニコニコと効果音が付きそうなほどの笑みを浮かべ、店主に近い席に座る。


「ま、仕事をよくしてくれるんだしな、今日もサービスするぜ。」


ニカッと笑ってステーキセットをアルヴィナの前に置く。

ここの店主とは昔っからの付き合いで、アルヴィナが手伝いをしてはサービスしてもらっているのだ。


アルヴィナはステーキセットを幸せそうに食べ、食べ終わると、気になることを店主に尋ねる。


「そういえば、最近魔物たちがやけに凶暴だよね…」

「だな…

ここの国は魔物たちと共存していたってのに、いきなりこうなられたらたまんねーよなぁ。」


店主も困り果てているようだ。


「噂じゃ、世界戦争を再び起こさせる為の下準備とからしい。全く、せっかくの平和なのにな…」

「はっ!?せ、世界戦争Σ!?何それッ!?」


ガタンとアルヴィナは勢い良く立ち上がる。


「っ、なんで!?」

「落ち着け、姉ちゃん。」


店主がなだめてようやく落ち着き、アルヴィナは再び座る。


「…~~でも!それはレギュレイシャンとマァネジャの冷戦のせいでしょ?

わざわざロギアラまで…」


ロギアラは平穏で緑豊かな場所。戦争などあってはいけないとアルヴィナは思った。

故郷愛好家なアルヴィナには腹立たしく思うのだ。


「まぁ、単なる噂かもしれねぇ。あとは軍人や騎士がなんとかするだろうよ。」


安心しな姉ちゃん、と店主はニカッと笑った。

アルヴィナもだいぶ落ち着いたのか苦笑した。

しばらく店主と愚痴の語り合いをして、アルヴィナは外に出た。


「さぁて!いつもの宿で寝るか!」


上機嫌にいつもの宿へ向かっていた時だった。


「キャアァァッ!ひったくりよっ!」


女の悲鳴が聞こえた。

何事かと振り向けば、女のカバンをひったくった男が逃げていた。

ある意味平和主義なアルヴィナは急いで男を追った。


「待ちなさいっ!それを返して!!」

「ハッ!返すわけねぇだろ!」


鼻で笑い、挑発的に男は言う。

男が走って行く先に人影が見えた。

光があまり当たっていない場所なので暗くてよく見えないが。

ただ上を向いていてこちらに気付いていないようだ。


「チッ!おい!痛い目にあいたくないならそこをどけぇっ!」


人影に向かって男は叫び、ナイフを取り出した。


「あっ、危ない!どいて!!」


アルヴィナが人影に叫んだ瞬間、何かが起きた。

ほんの一瞬で、状況がわからないほどだ。

男が人影によって地面に足で踏まれていた。


「―…全く、弱い奴ほどよく吠える…」

低く、透き通った声だった。

男の手首は普通とは反対に曲げられ、男は叫び声を上げていた。


アルヴィナは唖然としていたが、ハッとし、人影に声をかけた。


「あ、えっと…つ、捕まえてくれたの…?」


人影がこちらを見た。


「……違う。武器を出してきたから平伏せさせただけだよ。」

「平伏せさせたって……」


ほんの一瞬だけで、少なくとも普通より大柄な大柄を、倒すなんて実際に見ても目を疑う。

人影は何かに気づき、男の手からカバンを取る。


「あんたがこいつを追いかけたの…これの為でしょ?」


そう言って、カバンを投げてきた。


「えっ…あ、わっ!とと…」

「さっさといきなよ。こいつの仲間が来るだろうしね。」

「あ、わ、わかった…。」


カバンをしっかり持って来た道を走る。

途中、振り向くと、人影が月明かりに当たっていて、後ろ姿だけ見えた。


銀髪の長い綺麗な髪をしたて、黒服に身を包む少年だった。


カバンを持ち主である女に返した。

女は何度も礼を述べて、去って行った。


「……にしても…アイツ、誰だったんだろ……」


宿に入ってからあの少年のことを考えていた。

このあたりじゃ見たことがない。

旅人なのかもしれないが、身のこなし様が普通ではなかった。


「(…もしかして、アイツが戦争を起こそうとしている奴…?)」


そう考えたが、首を振る。


「…なわけないよね。あれも噂なんだから」


ふぅ、と息をつき考えるのを止めた。

考えたって自分に何かができるわけじゃない。

噂だったらなおさらだ。

ベッドに身を投げて、背伸びをする。


「ふあぁ…寝よう…」


明日は買い物しよう…と考えながら重い瞼を閉じた。



―今ひとつの歯車が主格となる歯車にかみ合った。全ての歯車がかみ合うまで、あと少し…―

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