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宵の太陽 朱い月

イベント事に乗ってみようパート2です。

今回は若干詩っぽいところもあります。実はこういう文章の方が、作者の元の文体だったり。

では、独特の世界観をどうぞ。

とても月の明るい夜 あたしはいつも散歩してた

あたしの真っ黒の毛が月の光に反射してとても綺麗に輝くのを あたしは知っているから

何かあたし自身が輝いている気がして

まるでどっかのショーのモデルみたいに 自慢気に歩いてた

あたしはそれを 心から愉しんでいた



僕はいつも一人だった ヒトリだった 独りだった

家でも 学校でも ましてや世間(そと)なら なおさら

僕は誰にも構ってもらえなかった

親にも 友達にも 先生にも 周りの大人たちにも 僕の姿は見えていないようだった

やたぁ! 僕はとうとう透明人間になったんだ! もう学校にも家にも居なくて済む!

僕は夢中で翔け出した。どこまでも、どこまでも走った。

しばらく走った後、少し疲れたから道端に座り込んでいたら、

「おや? 見ない顔だね。どこから来たの?」

知らないおばあさんに声を掛けられた。

なんだぁ……僕は透明人間になった訳じゃないのかぁ……。

とぼとぼと家へ向かった。着いた時、辺りは真っ暗だった。

「……ただいま」

薄暗いリビングに僕のか細い声だけが虚しく響く。

電気をつけると、机の上にラップを掛けられた皿が乗っていた。

やっぱり 僕は一応存在しているらしい                   ちぇっ。



それからしばらくして、僕は“制服”というものを着て学校に行き始めた。

周りはやっぱり相変わらずだったが、ある時を境に、少しずつ話してくれる人が増えた。

  僕の両親が殺されたからだ

ナイフでめった刺しにされて その醜さとは対照的な 美しい紅い色で部屋中を染めて

 まぁ、()ったのは僕だけど。

ケーサツはミジンも僕の事を疑わず、今でも犯人捜しを続けているらしい。税金無駄遣いして……ご苦労なこった。ドウジョウとは素晴らしいモノで、今までその眼に映すことすらしなかった奴等が、カイガイしく僕の世話を焼いた。

 白黒(モノクロ)の僕の世界に一筋の(イロ)が加わった瞬間(トキ)だった



しばらくして、俺は制服を学ランからブレザーにチェンジした。

勉強は嫌いじゃなかったのが幸いして、そこそこレベルの高い学校に入る事が出来た。

俺は中学時代に身に付けた社交性(スキル)を生かして、知り合いを増やしていった。

それこそ、100人越えだ。

でも……何かが足りない。

色も虹が描けるぐらいには増えたはずなのに……

 その答えを教えてくれたのは、一人(彼女)と一匹(猫)だった



俺は家に帰ると、それこそ独りだった。だからよく、散歩した。

最近は夜中に出歩く事が多くなった。

 だって 深夜には散歩友達(あいつ)がいたから

そいつは鴉の濡れ羽色した毛に褐色の瞳をもつ、美しい猫だった。

背筋をピンと伸ばして、優雅に歩く姿が愛らしくて、俺はよくそれを眺めていた。


ある日の事。俺はいつものように散歩に出かけた。その日は、風がやけに冷たかった。

あいつはいつもの塀の上には居なくて、その代わり、俺の膝にすり寄ってきた。

その姿がやけに可愛くて、無性に愛おしくなって、その日、俺はそいつを連れて帰った。

 俗に言う、“お持ち帰り”である。



「来るか?」

名前も知らない男だったけど その日 寒かったから

あたしを抱き寄せた手が温かくって 何となくついてった

その日から あたしは彼の飼い猫になった



「あのさ……、もしかして、猫飼ってる?」

 あいつを飼い始めてから数日。突然そこまで仲良くもない女子に話しかけられた。

 驚いた俺は思わず、何故か俺の十八番(おはこ)“嘘”もつかずに、素直に答える。

「へ?あ、うん。飼ってるけど。何で?」

「私、猫大好きなの。今度見に行っても良い?」

「あ、あぁ」


 あの時は、冗談だと思ってた。けど実際、彼女は家に来た。いや、断る事も勿論出来たんだけど、何となく断り切れずに招待してしまった。

「わー、可愛いー♡」

彼女があいつにじゃれている姿が何とも愛おしくて、その時から俺は、彼女に惹かれた。

どうしようもなく、ずっと一緒に居たいと思った。

でも、それは無理な事だという事も俺は知っていた。

 俺は 人殺しだから

彼女が俺から離れていったら、俺は彼女を殺してしまうかもしれない。いや、殺すだろう。

――嗚呼、俺は人を してもいけないのか?

あれ? ……今、何て言おうとしたんだ? ……解らない。そうか、コレが俺に足りないものなのか。でも、何なんだろう……。



「なぁ、俺はどうしたら良いと思う?」

珍しい。顔が真剣。そんなに、あの娘の事が好きになっちゃったのかしら?

そうねぇ……あたしとしては、君を独り占め出来なくなっちゃうから、それは寂しいわ。

でもあの子……彼とは違う温かさだった。あたしには火傷しそうな位、温かかった。

あの子なら……君を変えてくれると思う。そう想って、あたしは

「さぁ?」

と言って、彼に飛びついた。



「にゃぁ」

あいつはそう言って、俺に甘えてきた。このぉ、可愛い奴めっ。

「よし、俺は俺の好きなようにやるか」


 そうこうしているうちに、雪の降る季節になっていた。何故だか今日は皆浮足立っている気がした。俺が緊張しているから、そう見えるだけかもしれないけど。

 今日こそは彼女に告白をしようと決めていたのだ。だって、今日は……

「おはよー☆」

 !? 吃驚した。彼女だった。

「お、はよ」

 吃驚し過ぎてどもる。

「はい、コレ」

 差し出されたのは何やら包み紙に入った物体。

「あ、ありがとう」

 再びどもる。

「じゃ」

 僕も手を振り返しそうになったが、いかんいかん、と勇気を振り絞って彼女を呼び止める。

「ちょ、ちょっと待って!」

「な、何かな?」

 彼女は頬を赤らめながら振り向いた。やば、超絶可愛い。その場で悶えそうになりながらも、精一杯平静を取り繕って、俺は言った。

「あ、あの……俺……貴女の事がす、好きです」

 噛んだー!! 彼女の方を見る。何か笑っている。あーぁ。やっちゃった。

 落ち込む俺をよそに、彼女は笑う。耳まで真っ赤に染まりながら、にこっと笑う。

「変なのー。今日は男の子が女の子に告白する日なのにー。……でも、嬉しいっ♪ 最っ高の誕生日プレゼントだわっ」

 そう言って、彼女は微笑んだ。俺も、頬が緩んだ。




俺に足りない物とは “温かさ”だった

俺は太陽と月に会う事で それに気が付いた

もしかしたら 二人とも地上に降り立った星なのかもしれないけれど

温かい事に 変わりはない

もしかしたら いつか 俺が朱く染めてしまうかもしれないけれど

優しい事に 変わりはない

そして今日も 俺は柔らかな明かりの元で歩く 歩き続ける

絶え間なく降り注ぐ 二つの美しい光に見守られて



 叶うことなら、この穏やかな日々がいつまでも続きますように。


何故、今日という日に投稿したのか、最後までお読みになっていただければお分かりになるはず、です。作者がいかにひねくれているかも。

甘い話を書くのは苦手なのですが、たまに書くとこうなります。やっぱり難しいです。

でも、たまにはあからさまなハッピーエンドを書くのも、悪くはないですね。

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