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電波座布団

今回は割と普通に青春ものです。テーマ「夏休み」

「俺に出来る事は全てやった」

 漫画、テレビ、映画、音楽、DS、PSP、プレステ、wii、ネット、メール、ナンプレ、パクロス、クロスワードパズル……etc。

 “一般的な時間のつぶし方”は、一通りやった。それでも……、“3日間“は、“72時間”は、今の僕には多すぎる。

「あ゛ぁ、ひまだあぁぁぁぁ!!!」

 そう、俺は今、暇を持て余している。


 俺は佐倉翼。サッカー部に所属する、現在中学2年生。よって、普段は休みなど無い。はずなのだが…。

「夏休み最後の3日間ぐらい、しっかり休め!」

 顧問のいらぬはからいにより、俺は予期せぬ時間を手に入れた。だが、生憎(あいにく)家族は旅行中で、家には俺と、ハムスターの光忠しかいない。しかも、“ピカを頼んだよっ!”と弟妹に言われているので、うかつに家を空けることもできない。うーむむむ。さて、どうしよう。

 ……そういえば、今日はまだエサをあげていなかった。俺は妹から渡された取扱説明書(マニュアル)を読みながら、光忠の小屋の掃除と、エサやりをした。

 こいつ、俺より良い物食ってんのな……。

「おーい、ピカ。これで良いのか?」

 答えるはずもないのだが、一応不安だったので聞いてみた。すると、こくっ、と心なしかうなずいた気がした。

「しっかし、暇だなぁ」


 気が付いたら、午後4時を過ぎていた。どうやら寝てしまったらしい。

「買い物でも行くか」

 最寄りのスーパーまでは徒歩で約10分。光忠に行ってきますをして、俺は家を出た。

 散歩も兼ねているので、少しゆっくりと歩く。しばらく歩いていると、何やら黄色い物が目に入った。空に向かって一生懸命まっすぐに伸びている、太陽にも負けないぐらい黄色い、ひまわりだった。

 こんな所に咲いてたっけ? とよくよく見ていたら、今度は赤い物が僕の目の前を横切っていく。赤とんぼだった。そういえば、いつもはこの辺、走り抜けて行ってたもんな……。

 そんな事を考えていたら、目的地に着いた。

 おそうざいコーナーを物色。シャケ弁とサラダを買った。ついでに、明日の朝食の食パンも購入。夕方のスーパーは意外と混んでいて、店を出る頃には、もう日が傾いていた。


「光忠、今帰ったぞー」

 “おかえり”と言ってくれなかったのは寂しかったが、それでも光忠はカラカラと回し車を回して、俺に答えてくれた。

 夕飯は男二人で食べた。ケージの近くに移動して、もしゃもしゃと食べる。気が向いたので、光忠にサラダのキャベツを少し、おすそ分けした。

 風呂に入って一息つくと、月が明るく輝いているのが見えた。今夜は、半月らしい。ちょっと外に出てみた。まだ夏の暑さは残っているものの、風は冷たく、心地良い。

 空を見上げると、意外にも星がたくさん見えて驚いた。

 “最近の空は汚い”と評論家や科学者達は言っているが、俺はそうだとは思えなかった。そりゃ、昔に比べれば多少見えにくくなってはいるんだろうけど、きれいな物はきれい。 それで良いと思った。

 流石に肌寒くなってきたので、中に入る。でも俺の目には、さっき見た星空が焼き付いて離れなかった。

「そういえば俺、最近何かしたいと思った事って無かったな……」

 今日は“日常”に気付かされる事が多い。いつも見ているはずなのに、“忙しさ”を理由に、まともに向き合っていなかった気がする。光忠の事だってそう。今まで、光忠が俺に答えてくれた事なんてなかった。というより、俺がそう思った事が無かった。

 俺は一つ、光忠に質問してみた。今なら“答えてくれる”。そう思ったから。

「……なぁ、ピカ。“時間”って何の為にあるんだと思う?」

 すると、今まで動きまわっていた光忠の動きが突然、止まった。何やら考えているように見えた。

 数秒の静止の後、まず彼はひまわりの種をほおばった。次に回し車を回し、最後にマイブームのゲージ登りをして、俺の目を見る。その眼はキラキラと輝いていた。

「なるほどな。お前にとって時間は、“楽しむ為”にあるのか。……わかった。

俺も今日からちゃんと、“俺”として生きるよ。……俺にも、出来るよな?」

「きゅー」

 “翼兄なら出来るよ”、そう言ってくれたように聞こえた。


 それからの2日間、俺は前々から好きだった作家の本を読み、自分でもこんな文章が書けないものかと、小説を書いてみたりした。他にも、今までの授業の復習をしてみたり、自分の部屋の模様替えをしてみたり、自分でご飯を作ってみたりもした。

 なかなかに有意義な時間だった。暇な時間がある事は、本当に贅沢な事だと、今は思う。もっともっと時間があればいいのに……。まぁ、そう思えるようになっただけでも、今回は良しとしよう。


 夏休み最終日の夕方。

ガチャ。

『つばさ兄、ピカ、ただいまー!』

 帰ってくるなり、ふたりは抱きついてきた。

「つばさ兄、はい、これ「おみやげだよ」

「スイカだぞー」

「あ、父さん、母さん。おかえり。母さん、おばさんから荷物届いてたよ」

「あら、何かしら……。まぁ、綺麗な器。じゃあ早速、スイカを切ってこれに盛りましょう」

『わーい!スイカ、スイカ♪』

「スイカかぁ。久しぶりだな」

 おばさんが送ってくれた器はガラスでできていて、とてもきれいだった。だが、それよりも俺の心を引いたのは、そのガラスを包んでいた、梱包材の方。

 俺とした事が……一番ポピュラーな暇つぶしを忘れていたなんて。

プチっ。

 思わず、それをつぶしてしまった。

 言い忘れていたが、望未と疾風はまだ小学2年生であり、また、双子である。ついでに、子供は恐ろしいほどに、無邪気だ。

『あれ? つばさ兄、プチプチ好きだったの?』

ガラガラガラガラ。

 俺の兄としてのプライドは音を立てて崩れ落ちた。



――結局、人間は時間を持て余し、暇をつぶすのが好きな生き物なのである。

                               by一介のはむしたぁ


えーと、様々な事情がありまして、一旦削除して、もう一度投稿させていただきました。活動報告の欄で、詳しい理由を説明させていただきます。

ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。

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